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ミランでも貫く本田の流儀 「大博打を打っている」

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[3.5 キリンチャレンジ杯 日本4-2ニュージーランド 国立]

 どこか楽し気だった。トップ下でフル出場し、2アシストを記録したMF本田圭佑(ミラン)。試合後、ミックスゾーンに最後に姿を見せると、ペン記者の前でもテレビカメラの前でも、日本代表について、そしてミランについて、自らの思いをとうとうと語り続けた。

 試合については「良いことを話す必要はないと思っている」と前置きし、「失点しているということは何らかの問題があるからだし、4点目以降が入っていないのは何らかの問題があって続けられなかったから。そういう精度を高めていかないといけない」と、4-0としてから攻撃が停滞したこと、さらには2失点したことを問題視した。とはいえ、この試合で浮き彫りになった課題以上に、「僕はまったく別次元の問題を今、抱えているので」と自ら話すミランでの現状が、まずは乗り越えなければならない壁として本田の前には立ちはだかっている。

 1月のミラン加入後、リーグ戦ではまだゴールがなく、地元メディアからは厳しい批判にもさらされている。ポジションも「僕はトップ下のDNAを持っているので。トップ下は自分の家みたいなもの」という本職ではなく、サイドやボランチでも起用されるなど、なかなか定位置をつかみ切れずにいる。

 しかし、決してネガティブな感情はない。「その壁としっかり向き合いながら、僕はまた新境地にたどり着きたいなと思う」と話す表情はむしろ晴れ晴れとしている。ここを乗り越えれば、さらに自分が成長できる。その確信と自信があるからこそ、「自分は意外と楽しんでいるし、やり続ければ必ず結果が出てくるということが見えている。なかなかうまくいかないなというのはあるけど、時間の問題かなと」という言葉も自然と口をつくのだろう。

 この日は同世代のDF長友佑都(インテル)がキャプテンマークを巻いた。本田自身、長友がピッチ内外でリーダーシップを発揮しようとしていることは感じていた。「彼自身、そういうものを巻くことによって、何か違う立場、責任を得ることによって、違う景色を見たいんじゃないかな。もっと伸びようとしているんじゃないですかね」と、その心境を推察する。

 セリエAの“先輩”でもある長友は、インテルでも今シーズン、キャプテンマークを巻いている。「インテルでもう4年目くらいですか? いろいろあって、信頼されて、勝ち取って何回か付けたキャプテンマーク。今後、ずっとキャプテンを任されるようになれば、それはすごいことですよ」と素直に賛辞を送る。そんな長友のイタリアでの順応ぶりは、本田にとっても参考になるものなのか。報道陣の質問に対する本田の答えは、どこまでも本田らしかった。

「佑都は良くも悪くも懐に入っていくのがうまいから。すごく最初からベテラン勢にかわいがられたんじゃないかな。俺は基本的にベテラン勢からも最初は煙たがられる態度で入っていくタイプですから。それを変えたら俺じゃなくなるし、佑都は佑都で自分のやり方で馴染んだわけでしょ。俺はこのスタイルで馴染むのを楽しんでいるんです」

 あくまで孤高を貫き、最後は実力で認めさせるというのが本田の流儀のようだ。「みなさんも知ってのとおり、代表でもいろいろ時間がかかったことはご存じでしょうから。そういうのを蹴散らしていって、やはり結果を出さないことには、この世界では生き残れないので、大博打を打っているつもりです」。VVVフェンロで、CSKAモスクワで、そして日本代表で成し遂げてきたように、本田圭佑がミランの中心に君臨する日が来ることを、だれよりも本田自身が信じている。

(取材・文 西山紘平)

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