[3.8 J1第2節 大宮1-2名古屋 NACK]

　疲れ切った表情の中に充実感がにじみ出た。「こんなに苦しいとは思わなかった」。特別指定選手としては史上初となる開幕スタメンを勝ち取ってから1週間。苦しみながらも奪い取った勝ち点3は、DF大武峻(おおぶ・しゅん)にとっては忘れられないものになった。

　大武は本来は福岡大に在学する3年生。名古屋グランパスには特別指定選手として参加している。水面下でJ複数クラブの争奪戦を繰り広げる逸材は練習生として参加したタイ・チェンマイでのキャンプで信頼を勝ち取ると、指揮官は早くもレギュラーに抜擢。J史上初となる特別指定選手で開幕スタメンという快挙を成し遂げた。

　恵まれたフィジカルを生かしたプレーを得意とする大武だが、メンタルの強さも一級品だ。CBコンビを組むのは言わずと知れた日本を代表するCBの田中マルクス闘莉王。普通の大学生であれば、臆してしまうところだが、21歳は「最初から自信に関してはある」と豪語する。「まだまだ頼っているところも多いが、どんどん指示を出していけるようにしたい」と力強い。

　初得点にも色気を見せる。キャンプ終盤の2月15日にタイで行われたトヨタプレミアカップのブリーラム・ユナイテッド戦。「あれはたまたま」と謙遜した大武だが、見事なボレーシュートを突き刺したことでレギュラーの座を確固たるものにした。J初ゴールに関しても「早めに欲しい」と意欲的。名古屋躍進のカギを握る大学生から目が離せない。

(取材・文　児玉幸洋)

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