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守備陣に求める「個」の強さ、U-21手倉森監督「鍛え直す」

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 U-21日本代表候補は25日、都内で合宿2日目の練習を行った。前日夜には映像を使ったミーティングでチームの戦術、コンセプトを選手に落とし込んだ手倉森誠監督は「映像を見たほうが、みんなが同じものを“絵”として描ける」と説明。「プレッシングの守備と、ブロックをつくって守っている守備。守から攻への速い切り替えの攻撃、相手がブロックをつくっているときの攻撃。攻守で2つずつの映像を使った」と、その内容の一端を明かした。

 映像に出てくるチームはレアル・マドリーやバルセロナ、アーセナル、ドルトムントなど世界のビッグクラブばかり。「代表がどこと戦うのかと言えば、海外のチーム。世界を意識した映像が大事だし、世界の速さを理想のプレーとして見せて、それに近づく意識になれば」。そう意図を明かした指揮官は「選手には『同じ人間だぞ』と言っておきました」と笑った。

 今回のメンバー25人には、初陣となった1月のAFC U-22選手権に招集できなかった選手もいることから、あらためて全体ミーティングで自身の哲学を植え付けた。合宿最終日となる明日26日にはU-19日本代表候補との練習試合(30分3本)が控えていることもあり、「ミーティングで戦術を理解させることを選んだ」と、逆にこの日のトレーニングでは個々の見極めに時間を割いた。

 特に重視したのが「個」の強さだ。午前練のフィジカルトレーニングでは、膝立ちや両手を後ろで組んだ状態でのヘディングなど、体幹を意識させたメニューを組んだ。「まだヘディングのバランスが悪い。体幹やフィジカルに伸びしろがある中で、単純なヘディングでも動作の悪さがある。そういうことも並行してやっていかないといけない」と、肉体改造の必要性を説いた。

 攻撃陣と守備陣に分かれての練習では、付きっ切りで守備陣を指導した。メニューは単純ながらフィジカル的にきついもので、ゴール前に連続して入ってくるクロスボールを一人で繰り返しクリアするというもの。下がりながらのヘディングなど、連続した動きの中で、立て続けに放り込まれるクロスボールを確実にPA外までクリアすることを求めた。

「一回観察して、鍛え直したいなと思った。ボックス内はよりアラートな仕事場として意識を高めてもらいたい。何が何でもやらせない。いくら戦術を教えても、個でやられたら意味がない。『ヘディングは不得意です』では困る。最終ラインは全員そう」

 どれだけ組織を磨いても、最後のゴール前で跳ね返せるかどうかは個の力に懸かってくる。「自分のチームでポゼッションやコンビネーション、守り方は整理できても、自分の体の持って行き方やステップワークは身に付いてない。組織的なことをやっていると、悪く言うと戦術に逃げる傾向もある。個人の強さを求めた中で組織をつくれば、より強いチームになる。この代表ではそういうやり方でやっていきたい」と力説した。

 日本の育成年代に共通して言うこともできる課題の克服に乗り出す手倉森監督。「例えば、このチームをJリーグの試合に送り出すとしたら、不安でしょうがない。あれぐらいのヘディングでもクリアできないようではね」。あえて厳しい言葉で選手の意識改革を促した。

(取材・文 西山紘平)

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