ザックジャパンでは左SBで試されているDF槙野智章だが、所属する浦和では3バックのストッパーであり、各年代別代表では4バックのセンターで多くの経験を積んできた。DF内田篤人とDF吉田麻也が負傷で戦線離脱中という現在の状況を見れば、最終ラインのユーティリティーとして槙野にチャンスが広がっているのは事実だ。

　けれども、槙野は言う。「サイドのときと真ん中のときでは役割も違う。ユーティリティーであることは自分の強みでもあるけど、一つのポジションでの強さも出していかないといけないと思う」

　ゲーム形式での練習では左SBの位置でプレーした。積極的に上がる場面が目を引いたが、これはザッケローニ監督の指示だった。

「自分の良さも引き出していくためには、できるだけ高い位置を取れという話をされた。できるだけ攻撃的に行きたいという話もしていたので、僕の良さを知ってくれてのアドバイスだと思う」と意気に感じている。

　久々の代表候補合宿で、今回はクロスでもアピールしていきたいという。きっかけは昨年7月の東アジア杯。3試合中2試合に左SBとして先発した槙野は、第1戦の中国戦でFW柿谷曜一朗の代表初ゴールをアシストした。左サイドでボールを受けてからドリブルで前に持ち出し、GKとDFの間のスペースへ低めで速いクロスを上げたシーンだ。

　槙野はそれ以降、クロスへの意識を高めたと言い、浦和に帰ってからもクロスの練習を積極的に行った。今では「自信を深めているところではあります」と胸を張る新しいアピールポイントだ。

「自分が光るためには周りの選手との連係を深めていかないといけない。チームで自分が輝くためにはチームの良さを理解しなくてはならない」と言う槙野。代表に滑り込むために、すべてを出し尽くす。

(取材・文　矢内由美子)