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[関東1部]「全員が成長することがテーマ」“少数精鋭”の好調・順天堂大が早稲田大とドロー

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[4.16 関東大学リーグ1部第3節 順天堂大 0-0 早稲田大 江戸川陸]

 JR東日本カップ2014第88回関東大学サッカーリーグ戦1部第3節が16日に行われ、ともに開幕2連勝と好スタートを切っている早稲田大順天堂大との一戦は0-0で引き分けた。

 最多25回の優勝を誇り、18年ぶりの頂点を目指す早稲田大と関東1部・2部リーグ通じて最少の部員42名(開幕時)ながらも1部リーグに生き残り、戦い続ける順天堂大。「自分たちは力はないということを認識してからこのチームはスタートしている。試合に勝った負けたで一喜一憂せずに次の試合に向けていけていることがこのチームの強さだと思います」とCB谷奥健四郎主将(4年=四日市中央工高)が説明する順大が、2-0で制した筑波大戦、3-1で逆転勝ちした流通経済大戦に続いて上位チームから勝ち点をもぎ取った。

 自分を知り、どうすればチームの勝利に貢献できるか、個々が考え、仲間に教え合う順大。吉村雅文監督は「全員が上手くなるためにやっている。それを一人でも忘れたらダメ」と説明するが、少数精鋭のチームは昨年も前期だけで29人の選手が出場するなど、11人だけではなく、部員全員がチームのために成長し、それによってチーム力を高めて1部の強豪相手に食い下がってきた。

 この日対戦した早大は主将のMF近藤洋史(4年=名古屋U18)や開幕戦2ゴールのMF近藤貴司(4年=三菱養和SCユース)、全日本大学選抜DF奥山政幸(3年=名古屋U18)らが先発。前線へ素早く入れて、そのキープしたボールやこぼれ球から2次、3次攻撃を仕掛けてくる。近藤貴やMF堀田稜(3年=浦和ユース)のスピードに乗ったドリブルやFW上形洋介(4年=早稲田実高)のドリブルシュート、前半だけで5本を数えたCKなどから順大ゴールを狙っていった。

 だが、順大は着実に成長を見せている13年U-20日本代表CB新井一耀(3年=清水商高)と谷奥のコンビがシンプルにボールを弾き返すと、セカンドボールの攻防戦で運動量に絶対の自信を持つMF内山秀輝(4年=昌平高)とMF長谷川涼太(4年=八千代高)のダブルボランチが健闘。ボールを収めた順大は敵陣深くボールを蹴りこんでFW山嵜駿(4年=柏U-18)が競り合うと、そこからアイディアあるドリブルで突破を図るMF新里涼(横浜FMユース)と確実にボールを収めるMF室伏航(市立船橋高)、高いキープ力を見せるMF原田鉄平(静岡学園高)の1年生トリオたちが攻略を図った。

 読みと反応の鋭い奥山と大型CB田中進之介(4年=湘南ユース)を中心とした早大の守備も堅く、前半はシュートゼロ。ただ後半2分、新里が個人技で右サイドを破ると、ラストパスに山嵜が飛び込み、11分にも山嵜がPAでの鋭いターンから決定的な右足シュートを放った。これは早大DF奥山のブロックにあって決めきることはできなかったが、順大は守備のリスクをしっかりと消しながら、一刺しする可能性も示していく。そして23分に手術による長期離脱明けということが考慮されてこの日はベンチスタートだったエースMF長谷川竜也(3年=静岡学園高)とFW佐野翼(2年=清水商高)を同時投入。カウンターから長谷川竜がドリブルで一気にボールを運ぶシーンが目立ち始める。

 ただ、早大も28分にスピードに乗ってボールを受けた上形がクロスバーを叩く一撃。31分にも右サイドの上形の折り返しにFW山内寛史(2年=國學院久我山高)が飛び込むなど会場を沸かせるシーンをつくる。そして終盤は試合を決めるために近藤洋が高い位置で攻撃をコントロールして攻め続けた。90分間、自分たちらしく全員攻撃・全員守備を貫いた早大と、こちらもFWがPAまで戻って守り、DFでもチャンスがあれば中央からPAへ仕掛けていくなど全員攻撃・全員守備で対抗する順大。ただし、互いの集中した守備によって最後まで決定打は生まれず、スコアレスドローで試合終了を迎えた。

 別会場では4連覇を狙う専修大が桐蔭横浜大に5-2で勝ち、3連勝。早大が目標を達成するためには、圧倒的な攻撃力によって得失点差を広げていく専大と優勝を争っていかなければならない。それだけに近藤洋は「順大も今季2勝してきて、積極的なプレーが多く出ている、波に乗ってきているチームという認識だった。守備ブロックもしっかりしていた。ただ自分たちがその守備ブロックを崩さなければいけない。攻撃の面でカウンターであったり、自分たちが速く攻めれる場面であったり、相手守備ブロックが整った中でもゴールに向かって崩していく姿勢だったりが足りなかった。専修はずっと勝ち続けるので、追う上だったり、首位に立つという上では落としたくない試合でした」と無念の表情を浮かべた。

 一方の順大・谷奥は強豪相手に2勝1分のスタートにも冷静。「関東リーグで一番部員が少なくて、11人だけが上手くて勝てるチームじゃないし、全員が成長することがこのチームのテーマ。インカレに出場したいという思いはありますけれど、このチームの本質は全員が成長することなので結果だけにこだわらずにやっていきたいと思います」と力を込めた。

[写真]後半11分、順天堂大FW山嵜のシュートを早稲田大DF奥山がブロック

(取材・文 吉田太郎)
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