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C大阪ポポヴィッチ監督インタビュー「私たち自身が誰よりもタイトルを望んでいる」

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 セレッソ大阪は、19日にアウェーでFC東京と対戦する。今シーズンからC大阪の指揮を執るランコ・ポポヴィッチ監督にとっては、昨季までの2シーズンに渡って率いたチームとの再会となる。JリーグとAFCチャンピオンズリーグを並行して戦っているC大阪は、現在公式戦5試合未勝利(3分2敗)と結果が出ていないが、指揮官はチームが試合ごとに良くなっていることを強調し、「古巣との対戦を楽しみたい」と話した。

―次節はFC東京との試合です。古巣との試合を前にどんな心境ですか?
ポポヴィッチ「東京では素晴らしい時間を過ごせました。2年間、選手とともに良い仕事ができたと思いますし、彼らの成長する姿を見ることができました。最初に私が来たときと、2年後ではチームが見違えるようになっていたと思います。ピッチの中ではライバルになりますが、ピッチ外では、私が素晴らしい時間を過ごせた良い場所なので、感慨深い試合になりますね。結果にはこだわって戦いたいですし、勝ち点3を取って大阪に帰って来たいと思います。もう一つは、私が東京にいたときに達成できなかった味の素スタジアムを満員にするということ。敵チームの監督として行きますが、ぜひ満員になってほしいなと思います」

―監督はFC東京の選手たちのことをよく知っていますが、それはメリットになるのでしょうか?
ポポヴィッチ「それは全然関係ありません。古巣との対戦を楽しみたいと思いますし、東京にいる選手とまた同じピッチで、同じ舞台で戦えることはうれしいですし、彼らにも私が教えたことで残っていることはあるでしょう。もちろん、新しい監督が来て、そのやり方に慣れるまでに時間がかかるのは、当たり前のことです。ただ、サッカーの世界で一番難しいことに私たちは挑戦していました。それは『負けないために戦う』のではなく、『勝つために戦う』ということです。そして、『攻撃を構築する』というところです。それが私のスタイルですし、相手に合わせて戦うのではなく、自分たちがしっかりと主導権を握って、相手が自分たちに合せるようにするという考え方でチームづくりをしてきました。私にやりづらさは、ありません。楽しみたいと思いますね。雰囲気も良いでしょうし、C大阪のサポーターの期待も大きいので、結果をしっかり出したいと思っています」

―C大阪でも『攻撃的に勝ちに行く』という監督のスタイルは変わっていませんね。G大阪とのダービーでも、あれだけ長い時間ボールを握るということは、あまりなかったように感じます。
ポポヴィッチ「選手の特長は違いますが、うちの選手も私が求めていることに意欲的に取り組んでくれています。短時間でも吸収しようという姿勢がすごく強いので、それは私にとってもうれしいことです。ピッチ内のことは、もっともっと良くなっていくはずです。ただ、気になるのは、ピッチ外のサポーターの期待は非常に大きいのですが、それが果たして現実的なものなのかということです。現状でのチームに対する期待が大きすぎると、それは危険ですから、そこは理解してほしいですね」

―先日のダービーでは、試合内容は良かったと思います。それでもホームでのダービーに引き分けたことで、サポーターからはブーイングもありました。
ポポヴィッチ「もちろん、私も勝てなかったことには満足していません。ただ、G大阪に対しても、しっかりボールを持てていたということが記事になったり、そういう見方をしてくれる人がいたら、また変わってくるでしょう。柿谷、フォルランというクオリティの選手がいるのだから、必ず勝てると思ってしまう人もいます。でも、そうではありません。また、期待が大きすぎると2-0で勝ったとしても、3-0、4-0で勝たないと満足しないという発想にもなってきますから。これは非常に危険なことですし、サポーターの考え方としては違うのかなと思います。うちの選手が不甲斐ない試合をしたり、戦う姿勢を見せなかったりしたら、ブーイングは分かりますし、してほしいと思います。そういう姿を選手たちが見せたら、私が最初に選手たちを批判します。ただし、先日のダービーに関しては、私たちの選手はブーイングに値しなかった。拍手で迎えられるべきだったと思います。ああいう試合展開でも、最後まであきらめずに、同点にしに行く姿勢、逆転する意欲を見せていました。昨日の試合でピッチに立った遠藤(保仁)、二川(孝広)、さらに(ベンチにいた)明神(智和)。彼らは経験があります。フォルランを除いた私たちの選手10人の出場試合数が、この3人だけで補えるような、それだけ経験のある選手たちです。さらに今野、加地といるわけですから。そういった意味で言えば、私たちに足りないものは経験です。継続して、良い結果を出していく。継続して良いパフォーマンスを出していくことが、私たちはまだまだできていません」

―それでも、試合ごとに手応えもあるのではないでしょうか?
ポポヴィッチ「試合ごとにパフォーマンスは良くなり、攻撃的なサッカーもできてきています。これからだと思っています。ここ数試合、個人的なミスは出ていますが、それもこのハードな日程、長距離の移動による疲労がもちろんあると思います。山下(達也)、(南野)拓実、アーリー(長谷川アーリアジャスール)に関しては、代表合宿もありました。そこをしっかりと受け止めて、楽しんでやることが大切です。ただ、そういう状況も理解はしてほしいですね。あとは、私たち自身が誰よりもタイトルを望んでいます。チェルシー、マンチェスター・シティも最高の選手たちを集めても、タイトルを獲るまで何年もかかりましたからね。私たちも、より早くタイトルを獲りたいと思っていますが、誰かが来たからすぐに結果が出るはずだという考え方は正しくありません」

―以前、監督は『日本人選手はシュートを打てる場面でも打たない』と話していました。C大阪の選手は大阪ダービーでも、かなり積極的にシュートを打っていたと思います。それはフォルラン選手の影響もあるのではないでしょうか?
ポポヴィッチ「彼が来た影響は、それだけではないと思いますよ。フォルランが来たとき、周囲に合うかどうかというのは、予想がつかない部分がありました。ただ、スムーズにチームに溶け込み、私たちの選手も彼を受け入れてプレーできています。今は気を使いすぎているくらいです。それくらいチームに溶け込んでいますし、いろんな良い部分を見せてくれている、チームに影響を与えてくれていると思います」

―柿谷選手は、かなり気を使ったプレーをしていますね。
ポポヴィッチ「曜一朗は昨シーズン、彼自身が非常に良いシーズンを過ごし、今季はその再現をする。もしくは、それを上回るシーズンにしようと思っていたはずです。しかし、ディエゴが来て、彼自身が思い描いていたシーズンとは違ったスタートになったかもしれません。それでもゲームをこなすごとに、互いの関係は良くなっていますし、互いにわかり合って、共通理解は深まっています。彼らが2人とも自分たちの力をもっと見せてくれるようになると思っています。曜一朗も『ディエゴを生かそう』という気持ちが強過ぎるのかもしれません。そこでうまくバランスをとれるようになれば、これからもっと良くなるでしょう」

―2人の連係面ですが、順番に縦関係になるなど、かなり開幕当初よりは良くなっていますよね。
ポポヴィッチ「本当にその通りです。共通理解は深まっていますし、ディエゴもまだ来て2か月ですからね。まだトップコンディションではありません。ただ、時間がかかるのは当たり前のことで、成長する過程で、結果を出す上で、通って行かなければいけない道です」

―W杯もありますし、そこに向けてコンディションも上がってくるでしょうね。
ポポヴィッチ「当落線上の選手にとっては、プレッシャーにもなるでしょう。これからのプレーで、W杯に行けるか、行けないかが決まるプレーになるわけですから。そういうことが頭によぎっている選手もいるかもしれません。そうすると、ミスを怖がって、チャレンジを怖がるかもしれません。たとえば、明日メンバー発表が終わってしまえば、そこですべてのプレッシャーから解放されたように良いプレーができると思います。ダービーでの(キム・)ジンヒョンは、そうでしたよね。あの試合には韓国代表のGKコーチも来ていました。その中で当落線上にいるジンヒョンには、頭をよぎっていたのかもしれません。良い選手でも、良い人間でも、その部分はどうしても頭に入ってきます。そういうことで集中できなかった要因になっていたかもしれません。メンタルの問題は、日本でも非常に大きいと思います。実際にナビスコ杯を取ったチームが次の年にJ2に降格することもあります。満足したり、気を抜いたりしてしまえば、どんなに力があっても、そういうことが起こり得るのだという教訓になると思います。私たちは、クラブも、チームも非常に伸びしろがあります。課題や修正点もありますが、能力はありますし、タイトルを獲るだけの力はあると思っています。そのために継続して良い仕事をしないといけませんし、クラブとしても常に新しいモノ、良いモノを考えていかなければいけません」

―C大阪について経験不足と話していましたが、ピッチ内で気になることはありますか?
ポポヴィッチ「若いゆえに、ピッチ内で遊びすぎるような場面がありますね。普通にパスを出せるところでも、ヒールで出そうとしたりするところとか。そういうところは、もっと効率的に、正確なプレーをしてほしいですし、結果につなげていけるプレーをもっともっとやっていかないといけないと思っています」

―今シーズン、若い山口蛍選手をキャプテンにした理由は?
ポポヴィッチ「シーズンの開幕前に、彼と話し合ってキャプテンにしました。若い選手ですがクオリティがありますし、そういう選手がキャプテンをやるのは、年齢に関係なく、当たり前のことだと思います。蛍はすべてを兼ね備えた選手です。真面目で責任感もあるため、最初はキャプテンの重責を任されて、キャプテンマークが重かったかもしれません。でも、彼にキャプテンを任せることが、人間的な成長を促すと思いますし、選手としても成熟した選手になることにつながると思っています」

(取材・文 河合拓)

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