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岡崎慎司独占インタビューVol.3:「自信のなさ」が出た4年前…ブラジルへの決意

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 シーズンも終盤に差し掛かり、日本代表FW岡崎慎司(マインツ)が好調だ。ブンデスリーガ第31節終了時点ですでに13ゴールを挙げ、MF香川真司(マンチェスター・U)がドルトムント時代の11-12シーズンに記録した欧州主要1部リーグでの日本人最多得点記録に並んだ。今季から加入したマインツでレギュラーとして28試合に先発し、“生き生き”という表現がピッタリな躍動感溢れるプレーを見せ続けている。6月に迫ったブラジルW杯に向け、絶好調のストライカーは今、何を思うのか。ゲキサカ独占インタビュー第3弾――。

Vol.1:ゴール量産をもたらした発想の転換
Vol.2:欧州で磨かれた点取り屋の本能

―ドイツのシーズンが終われば、いよいよブラジルW杯です。
「今シーズン、自分がやってきたことを最後までやり通すというのが一番大事かなと思っています。やり通した先にW杯があると思いますし、W杯でもこの4年間やってきたことを出せばいいだけだと思うので、そこまで気負いはないです。もちろん責任や期待は感じていますが、プレーするときの重荷になることはないです」

―本大会直前にレギュラーから外れた南アフリカW杯の悔しさを晴らしたい思いもあるのではないですか?
「そうですね。でも、毎日そのことを悔しいと思ってやってきたわけではないです。ただ、あのとき、世界で対等にやるためにはヨーロッパに行くしかないと思ったのは事実ですね」

―南アフリカW杯が移籍のきっかけになった?
「もともと海外志向は強かったんです。でも、いきなり海外でやることに自信がありませんでした。そういう自信のなさが出てしまったのがあの大会だったと思います。そうならないためには、海外に慣れるしかないというか、自分はやれるんだと思えるところまで自分で持っていくしかないと思いました」

―“世界”に対して恐怖心みたいなものがあったということですか?
「周りから自分がどう見られているかを気にするタイプでもあるんです。だから、南アフリカW杯のときは『世界相手にあいつでは無理だな』と思われているんじゃないかとか、そういうふうに考えてしまっていました」

―南アフリカW杯の前でさえ、そう思っていたのは意外です。
「自分にプレッシャーもかけていました。ベスト4という岡田武史監督の公言している目標があって、そこから逆算したら『自分は3ゴールは取らないといけない』と思い込んでいたんです。いろんな取材で『目標は?』と聞かれて『3ゴール』と口に出していく中で、暗示がかかって、自分ではなくなっていったような感じでした。とにかく自分のリズムではなかったですね」

―今回は自然体で迎えたいですね。
「1日1日、1試合1試合という感じですね。南アフリカW杯のときは、直前のスイスキャンプも楽しめませんでした。みんなが山の頂上に行ったときも、余裕があれば自分も一緒に行っていたと思うんですが、ずっと部屋にいましたからね。どこか逃げているような感じがありました。楽しめてはいなかったですね」

―ブラジルW杯での目標をお聞きしたいです。
「チームとしても、個人としても、前回大会を上回る内容と結果を目標にしたいです」

―個人として前回大会を上回るという意味は?
「試合に出るということもそうですし、自分がどこまで通用するかということも含めてです。もし先発で出られたら、自分にとっては初めてになります。どれだけ試合に出て、自分のプレーができて、点を決められるか。まだまだチャレンジャーのスタイルを持つべきだと思いますし、それが自分だと思う。そのほうが気が楽というか、思い切りやれるのかなと思っています」

―チームとしては昨年苦しい時期も経験し、克服した上で迎える大会です。
「生半可な気持ちでは勝てないと思います。自分たちのスタイルはありますが、それでも引かなきゃいけないときもあれば、みんなで点を取りに行かないといけないときもあると思います。そこを統一してやっていきたいですね。その上で個人を出していきたいです。失うものはないので、思い切りやるだけです」

―ところで、24日に初の著書『鈍足バンザイ!』が発売になりました。本のセールスポイントを教えてください。
「自分は特別なことをしてきたつもりはなくて、一つひとつの出来事に対して、悩みながら答えを出してきました。そういうみんなが通るような当たり前の悩みから逃げたり、受け入れたりしながら、どうやって克服してきたかを書きました。皆さんに共感してもらえると思います。例えば、スポーツをやっていたらだれもが絶対に思う『ミスが怖い』ということについてとか、プライベートだったら、服を買ったけどセンスがないとか(笑)。でも、そんなコンプレックスも受け入れて、オープンにしたことで、いろいろな人からアドバイスをもらったこともありました。『こんなにコンプレックスがあるのに、なんでこんな笑顔で表紙に写っているんだろう』と、笑って読んでもらえればと思います」

―思い入れのあるパートはありますか?
「自分が一番好きなのは『カラダのリミットを振りきる』という節です。自分の伝えたいことが詰まっています。全力を出すからこそ、失敗もあるわけですよね。例えば、自分はよく転ぶと言われますが、自分としては、ただ転んでいるのではなく、たとえ届かなくても体を投げ出そうとするから転ぶという明確な理由があるんです。倒れても体を入れるとか、100%の力を出してみることが大事だと思っています。どうしても周りからの見られ方を気にして、格好をつけがちな中高生にこそ、読んでほしいですね。『泥臭くても格好良くなれる』『全力を出すことは恥ずかしくないよ』ということを伝えたいんです」

―岡崎選手が『恥ずかしい』と思ったこともあるんですか?
「ありますよ。『ここでガムシャラになったら恥ずかしい』とか。でも、本当に大好きなサッカーでそう思ったことはないです。むしろ恥ずかしいことを得に思ったほうがいいくらいですね。自分にしか体験できないことなんだと考えてほしいです。そうやって僕は、シャルケ戦で自分のミスが失点につながったことや、バイエルン戦でボールをかっさらわれたことを消化しています。チャレンジしたからこそ起きるミスもあります。『全力でやって転んでも、また立ち上がればいいんだよ』ということをこの本に詰め込んだつもりです」

★岡崎慎司選手初の著書『鈍足バンザイ!』が24日より発売開始!!詳細はこちらから

(取材・文 了戒美子)

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