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レンジャー資格者擁する陸自習志野、初の決勝T進出:全国自衛隊サッカー大会

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 全国の自衛隊基地・駐屯地で活動するサッカーチームの日本一決定戦「第48回全国自衛隊サッカー大会」は、23日に駒沢オリンピック公園で男子の部予選ラウンド第3日を行い、第1空挺団が拠点を置く陸上自衛隊習志野駐屯地(陸自習志野)が3-0で航空自衛隊小松基地(空自小松)を破って2連勝し、初の決勝トーナメント進出を決めた。

 陸自習志野は、4年ぶりの全国大会出場で、初の予選ラウンド突破を果たした。メンバーの多くは、落下傘降下部隊である第1空挺団の所属。有事に最前線で活躍する精鋭部隊となるレンジャーの有資格者も多い。資格を取得するための訓練は、壮絶を極める。時折、テレビ番組などで紹介されるが、不眠不休、食事もままならない中で重荷を運ぶ行軍などし烈を極める。有資格者の池田浩監督は「空挺団では、陸曹以上はレンジャーが必須。飲まず食わずで5日間山に籠ったり、重い物を運んだり。私がやったときも3~4日で体重が十数キロ減った」と振り返る。

 厳しい訓練を耐え抜いた隊員たちだけに頼もしいが、サッカーチームとしては訓練の多忙さから練習不足に陥りがちだ。池田監督によれば、週2日の練習では10人集まれば良い方で、多くの場合は5~6人で行っており、チーム練習はほとんどできていないという。それでも、チームをけん引する主将の今岡和夫(3曹・大社高出身)は「練習では、基本とシュート。パスをつなぐ練習は、人が集まるようになってからやることだから。それでも、土・日は、フットサルや7人制などの大会に出て連係を高めてきた。(サッカー選手としては)忙しいことを理由にしたくない。練習をほとんどせずに全国大会に出場するのは本来、相手に対して失礼。しかし、それも踏まえた上で(自衛隊大会では)この状況でやるのが当たり前だし、あるべき姿。どこまで行けるか分からないけど、前回優勝の空自3補を食うつもりでやっている」と強気の姿勢を崩さなかった。

 チームの中心となるのは、プロ志望が強く一時はブラジルへ渡ったこともある敦谷高大(1士・帯広北高、札幌大出身)。若きゲームメーカーだ。「習志野の空挺隊には訓練隊というものがあって、銃剣道やラグビーなどを行っている隊員がいる。私たちは訓練隊ではないけど、良い結果を残して駐屯地の評判を挙げて帰りたい」と意気込みを語った。

 また、最多16度の優勝を誇る海上自衛隊厚木基地マーカス、前回準優勝の海自厚木自衛隊A.N.F.C.(通称:厚木なかよし)、海自徳島も予選ラウンド突破を決めた。あす24日には同会場で予選ラウンド最終日が行われ、決勝トーナメントに進出する8チームが出そろう。

 中でも注目されるのが、前回3位の海自下総・館山と、陸自北熊本の一戦だ。陸自北熊本は、久しぶりの全国大会出場だが、第29回大会優勝のほか準優勝8回など輝かしい成績を誇る名門。この日は、空自芦屋との初戦を1-0で物にした。北村雅美監督は「部員は40名ほどいるが、仕事で集まれないことが多い。地域リーグは、昨年は2度の不戦敗が出てしまった。今回も最近まで鳥インフルエンザの対応に追われていたし、試験などもあって18人しか大会に参加していない。でも、近年は世代交代に失敗して成績が出ていなかったが、昨年あたりから若い選手も入ってきたので、もう一度組み立てようとしている」と苦しい台所事情を明かしつつ、名門復活にかける思いを話した。

 大会前には、ルーテル学院高や熊本国府高など熊本県下の強豪校と練習試合を行って、調整を行った。右MFの村上達耶(士長・大津高出身)は「地域リーグでは参加できていなくても、この大会には参加できているという選手もいるので、この大会で勝ちたいとうモチベーションは高い。少ない練習もこの大会が目標でやってきた」と充実感をのぞかせる。得失点差では、海自下総・館山が上回っており、陸自北熊本が予選を突破するには直接対決で勝利するしかないが、主将の西村拓矢(3曹・熊本国府高出身)は「予選突破が第1目標。(下総が相手でも)自分たちのサッカーができれば勝てると思っている」と気勢をあげた。名門対決を制して8強入りを果たすのはどちらか、要注目だ。



■第3日(4月23日)・結果
<予選ラウンドG組>
空自美保 1-0 空自那覇
<予選ラウンドD組>
海自厚木マーカス 4-1 海自岩国
<予選ラウンドH組>
空自芦屋 0-1 陸自北熊本
<予選ラウンドE組>
空自千歳 1-1 海自鹿屋
<予選ラウンドA組>
空自小松 0-3 陸自習志野
<予選ラウンドF組>
空自岐阜 1-0 海自舞鶴
<予選ラウンドC組>
空自熊谷 1-1 海自徳島
<予選ラウンドB組>
海自厚木A.N.F.C. 3-0 空自築城


■第4日(4月24日)・予定
<予選ラウンドD組>
海自八戸 vs 海自岩国(10:00、駒沢第2)
<予選ラウンドG組>
海自大村 vs 空自那覇(10:00、駒沢補助)
<予選ラウンドE組>
空自3補 vs 海自鹿屋(12:00、駒沢第2)
<予選ラウンドH組>
海自下総 vs 陸自北熊本(12:00、駒沢補助)


■予選ラウンド成績(第3日終了時)

空自小松 0勝0分2敗(得失点差-5)
陸自滝ヶ原 1勝0分1敗(得失点差0)
陸自習志野 2勝0分0敗(得失点差5) ※予選突破

海自厚木A.N.F.C. 2勝0分0敗(得失点差8) ※予選突破
陸自札幌 0勝0分2敗(得失点差-5)
空自築城 1勝0分1敗(得失点差-2)

空自熊谷 1勝1分0敗(得失点差2)
陸自神町 0勝0分2敗(得失点差-7)
海自徳島 1勝1分0敗(得失点差5) ※予選突破

海自八戸 0勝0分1敗(得失点差-6)
海自厚木マーカス 2勝0分0敗(得失点差9) ※予選突破
海自岩国 0勝0分1敗(得失点差-3)

空自3補 1勝0分0敗(得失点差5)
空自千歳 0勝1分1敗(得失点差-5)
海自鹿屋 0勝1分0敗(得失点差0)

空自岐阜 1勝0分1敗(得失点差-2)
防衛大学校 2勝0分0敗(得失点差12) ※予選突破
海自舞鶴 0勝0分2敗(得失点差-10)

海自大村 1勝0分0敗(得失点差5)
空自美保 1勝0分1敗(得失点差-4)
空自那覇 0勝0分1敗(得失点差-1)

海自下総・館山 1勝0分0敗(得失点差6)
空自芦屋 0勝0分2敗(得失点差-6)
陸自北熊本 1勝0分0敗(得失点差1)

[写真]陸自習志野は、小沼拓矢(士長・桃山学院大出身)の2得点などで空自小松を破り、初の決勝トーナメント進出を決めた。

(取材・文 平野貴也=フリーライター)

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