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[特別インタビュー]C大阪MF山口蛍(前編)「W杯ではベストな相手を倒して上に行く」

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 これまで日本代表のボランチは、MF遠藤保仁、MF長谷部誠の指定席だった。しかし、昨年の欧州遠征で、存在を大きくアピールした男がいる。今シーズン、所属するセレッソ大阪でキャプテンも務めるMF山口蛍だ。豊富な運動量、優れたバランス感覚、そして、どんな相手にも臆することのない闘争心を武器に、ボランチのポジション取りに名乗りを挙げた。周囲からはW杯のメンバー入りも確実視される状況だが、山口自身は「危機感の方が強い」と明かす。ゲキサカは、その真意とともに、W杯への意気込みを聞いた。

――まずは日本代表について、話を聞かせてください。ここ最近で一気に代表に定着した印象ですが、ご自身はどのように捉えていますか?
山口「定着したっていう感じはないんですよね。逆に、この間の合宿にも呼ばれていないので、自分の中では危機感の方が強いですね」

――招集メンバーを見ると、メンバー入りが確実視される選手は呼ばれていない印象でしたが。
山口「それは関係ないと思います。セレッソから3人も選ばれているのに選ばれていないってなると、ヤバイなって感じますね。やっぱり代表は活動期間も短いですし、活動があるときは行きたいです。合宿に呼ばれた選手がいて、僕はそのメンバーから落ちているので、やっぱりショックでもありましたね」

――合宿に行く前に、チームメイトであるMF長谷川アーリアジャスール選手らに、アドバイスを送ったそうですね?
山口「はい。聞かれたから答えました。アーリアくんがボランチなので、そこでの役割とか、どういうことを求められるかっていう話をしましたね」

――逆に彼らが帰ってきてからは、何か聞きましたか?
山口「いや、もう初日から連絡をとって『今日どうやった?』って聞いていました。『どんな練習をしたの?』とか、すごく気になっていたので」

――ブラジルW杯出場への強い意欲にも感じられますが、今回のW杯は自分のキャリアで絶対に出るんだと目標にしていた大会だったのですか?
山口「いいえ、ブラジル大会の次の大会を自分は狙っていたので。すごく自分の思い描いていたより、早い段階に来ている感じですね」

――いつ当初の理想を現実が追い抜いたのでしょうか?
山口「ここ2、3年くらいですよ。ロンドン五輪までは順調というか、思い描いていたようにゆっくり少しずつステップアップしていると思いましたが、あのタイミングで東アジア選手権に選ばれて、一気に加速した感じですね。あのときは、まだ代表に選ばれるとは思っていなかったので。それがこう一気にガッと詰まって来ましたね」

――ロンドン五輪でも世界の名手と対戦しましたが、A代表とは違いますか?
山口「五輪で相手にしていた選手も、A代表で主力を張っていた選手ばかりなので、そこまでは感じないですね。でも、経験とか、試合の進め方とか、試合慣れ。そういうところは感じますね。僕は全然、試合慣れしていません。そこまで経験を積んでいないので。でも、僕個人としては海外の選手とやる方が、合っているのかなという気がするんです。海外の選手とやっているときの方が、いきいきできているかなと思うんですよね」

――遠慮なく当たれる、ということですか?
山口「それもありますし、技術的に日本は高いと思うんです。僕は、相手の動きを読んでボールを取りに行くことがあるのですが、日本人はそこで判断をすぐ変えることができます。でも、海外の場合はトップクラスになるとそうやって判断を変えられることもあるのですが、そうじゃないとわりかし一発で来ることがあるので、読みやすいなというのがあるんです。だから、自分には合っている気がします」

――実際に昨年の欧州遠征では、とても印象的な活躍をしていました。ベルギー代表、オランダ代表と戦って、かなりの手応えを得られたのでは?
山口「僕の中では、そういう手応えはあまりないですね。それまで、出ても残り10分とか、すごく短い時間だったので、もっと長く出たいと思っていました。その中で、あの遠征では45分と90分出場しましたけど、それだけ長く出られたっていうことが、すごく良かったと思います。僕の中では、それだけが収穫かなって」

――チームとしても結果が出たと思うのですが?
山口「まぁ、そうですね。結果は出ましたけど、自分が何をしたかというと、そこまで何かをしたわけではないかなと思うので」

――逆に課題を見出したのでしょうか?
山口「そうですね。攻撃というか、セレッソ大阪でやっているような攻撃的な部分が、まだ全然代表では見せられていないですし、守備的なところで言うと、やっぱり少しは出せていたところがあるかなと思うのですが、やっぱり自分も攻撃が好きですし、もっとプレイメーカーのような役割を果たすというか、前に行きたい気持ちはありますね」

――もちろん日本も主導権を握るサッカーを目指しているとは思うのですが、あのレベルの相手になると、守る時間も増えてしまうのでは?
山口「耐える時間は長くなりますね。でも、その中でも自分たちの時間をつくらないといえけないですし、相手のプレッシャーがあるときでも落ち着いて(ボールを)回せるようにならないといけません」

――これまで代表で対戦して、うまいなと思った選手はいましたか?
山口「僕もそこまで対戦した経験がないんですけど、その遠征で対戦したベルギー代表のムサ・デンベレですね。僕以外も、誰もボールを奪えなかった。先ほど話したように、海外の選手は大体、どこにボールが出てくるのか分かるのですが、それをさらに深い切り替えしでかわされて、常にボールを遠い位置に置いている感じでしたね。何回かチャレンジはしましたが、取れませんでした。体の使い方がうまかったですね」

――山口選手は欧州サッカーをよく見るそうですが、対戦後はデンベレ選手を注目したりしましたか?
山口「もちろん見ていましたが、出ていない試合が結構あったので、何で出ていないのかなというのはありますよね」

――そんな心境で聞くのも申し訳ないのですが、すでにW杯の対戦国が決まっています。対戦が楽しみな選手はいますか?
山口「コートジボワールのヤヤ・トゥレ選手ですね。シティでも、今年18得点くらいとっていて、チーム内得点王ですからね。あのデカさで、あの推進力というか、ドリブルであれだけ運べるのもすごいですし、対戦してみたいです」

――他にW杯で対戦してみたい選手というのは?
山口「やっぱり(リオネル・)メッシクリロナ(クリスティアーノ・ロナウド)は対峙してみたいですね。あと、(ルイス・)スアレスですね」

――ウルグアイ代表と対戦したら、スアレス選手とフォルラン選手を敵に回すことになりますね。
山口「そうですね(笑)。あとはジェラードとか、それとビダルともやりたいですね。肌で感じるのが一番やと思いますし。同じポジションの選手が気になりますね」

――山口選手が一番憧れている選手は、ビダル選手だそうですね。
山口「はい。セリエAが好きでよく見ていたのですが、3年前くらいにユベントスに来てから、注目していますね。戦えるっていう部分がすごく好きで。コンテ監督が『戦争に連れて行くなら、ビダルを連れて行く』って言っていましたが、それくらい信頼されているということですし、チームにとっても不可欠な選手だと思うので。ボランチで、あれだけ点を取っているのもすごいですよね。純粋に自分に足りない部分だと思いますし、目標にしたいです」

――第3戦で対戦するコロンビアは、ファルカオ選手が大会に間に合うかどうかという状態です。心理的には、少しでも上に行くために手負いの相手と戦いたい。それともベストの相手と戦いたい。どちらでしょうか?
山口「ベストの状態で出て来てほしいですね。こういう経験をすることは、そう何回もあるわけではありませんし、ベストな相手を倒して上に行くのがいいと思うので、相手にも最高の状態で出て来てほしいです。もっともコロンビアには、ジャクソン・マルチネスとか、控えにもすごい選手がいますし、どの選手が出て来ても本当に強いと思うので。僕たちも良い準備をして臨みたいですし、そのためにもセレッソで全力を尽くしたいと思います」

(取材・文 河合拓)

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