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[AFCフットサル選手権2014]先制点のFP仁部屋「自分がこのチームを勝たせる」

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[5.1 AFCフットサル選手権2014 GL第1戦 フットサル日本代表12-0フットサル韓国代表 ホーチミン]

 能ある鷹は爪を隠す。12-0に終わった韓国戦のFP仁部屋和弘(バサジィ大分)のプレーは、そんな諺を思い起こさせた。ブラジル代表と対戦した際には、セレソンの選手たちもが『あいつは何なんだ』と色めき立つドリブラーは、この日、ほとんどドリブルを仕掛けなかった。1回だけ才能の片りんを見せたのは、0-0の開始直後。前半4分に自らセットプレーからのゴールを決めると、その後は淡々と他の選手たちのストロングポイントを引き出す役割を全うした。

 そのプレーに惚れ込むミゲル・ロドリゴ監督も、変化を感じ取っている。2012年のW杯の直前に「プレーは、このチームでもトップレベル」としながらも精神面での弱さを理由にメンバーから外したが、その弱点を克服しつつあることを示唆した。「リーダーシップや軸になることを期待していますし、そういう意識が彼のなかに出てきているし、リーダーシップが芽生えてきている部分もあるので、すごく落ち着いてプレーしてくれましたね」と、韓国戦後に評価した。

 仁部屋自身も、充実感を隠しきれない様子だ。普段なら「全然です」「コンディションが…」と、ネガティブな言葉が口を突くが、この日は「ボチボチです」と言い、ネガティブな言葉が出てこなかった。CKからのゴールについて「いつも練習しているセットプレーなので。それで最初の点が取れたので良かったと思いますが、今からだと思うので」と、振り返る。相手との力関係を敏感に感じ取る仁部屋は、速い時間帯から『この試合は勝てる』と確信していたようだ。

 だからこそ、ドリブルも意図的に封印していた。「まだ初戦出し、まだまだ試合があるので。ここで使うことはしたくなかったので、これからですね」と言い、「体力を使わないように、っていうのもありました」と認めた。

 頭の中には、連覇以外ない。そのために韓国戦では、経験の浅い選手たちに、初戦で自信を付けてもらうことを優先した。そして、今後の難敵との試合で隠してきた爪を見せるはずだ。「自分がこのチームを勝たせるっていう強い気持ちを持っているので。そういう意味では、毎試合ドリブルからシュートっていうことは考えています」。

 真顔でそう話した後、仁部屋は柔和な表情に戻り、ふんわりと「ベトナムがね…暑いですね。そんな感じなので、『ボチボチ』と書いておいてください」と言い残し、声援を送ってくれたファンの下へと向かって行った。

(取材・文 河合拓)

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