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[プリンスリーグ関西]「亡き恩師に優勝旗を」誓う関西大一、比叡山に6発快勝

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[5.3 高円宮杯プリンスリーグ関西第5節 関西大一高 6-0 比叡山高 関西大一高高槻キャンパスサッカーG]

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2014プリンスリーグ関西は3日、第5節を行い、09年度全国高校選手権4強の関西大一高(大阪)と昇格組の比叡山高(滋賀)との一戦は6-0で関大一が快勝した。

 6ゴールをたたき出して快勝した関大一だったが、立ち上がりの内容は決して良くなかった。昨年からメンバーが入れ替わり、小柄な選手の多い比叡山が特長を活かしてグラウンダーのパスをつないでPAまでボールを運んでくる。23分には相手DFのギャップを突いたMF薩摩亮太が独走。GKを引きつけて出したラストパスを左サイドからMF梅村竜生が左足で狙ったが、これは外側のサイドネット。大ピンチを逃れた関大一は直後の24分、右中間からボールを運んだ180cmFW和田健吾が逆サイドへ展開すると、左MF田中啓太がカットインから強烈な右足シュートを放つ。強い向かい風を貫く一撃がゴール右隅へ突き刺さり、関大一が先制した。

 関大一はSB古田賢司が離脱中。攻撃のキーマン・MF中堀増朗も怪我明けでこの日が初のベンチ入りというように、けが人が多く今年は3年生の先発が少ないが、全国選手権でも話題となった「月まで走れ!」の横断幕が掲げられる中、先制した後は持ち味の走力を発揮する。球際でも強く、セカンドボールを引き寄せた関大一は32分にもFW岡崎淳也が中央から右サイドへ流れながら右足シュートを決めると、40分には右CKのクリアボールから田中の右クロスをDF藤井勝大が頭で合わせて3-0と突き放す。さらに44分にはDF山田紘士の左アーリークロスをファーサイドの岡崎が右足ダイレクトでゴールへ叩き込み、4点差で前半を折り返した。

 後半から一挙に3人を入れ替えた比叡山はキレのある動きでマークを外すFW山岡航介や薩摩、MF城内勇人を軸に反撃。開幕4連敗で最下位に沈んでいるものの、プリンスリーグで毎試合得点を挙げているチームは城内のミドルシュートなどでまず1点を返そうとする。だが関大一は後半7分に中央を抜け出したMF才木勇斗が決定的な右足シュート。さらに14分には敵陣左サイドでMF小坂田知弥が相手ボールにプレッシャーをかけると、GKのクリアを才木がチャージする。こぼれ球を拾った才木がそのまま右足でゴールを破って5-0とした。ただ、この後は交代出場の中増が個人技で打開するシーンもあったが攻撃が雑になったこともあり、沈黙。44分に山田からのパスを受けたMF足立穂高が左サイドの角度のない位置から左足シュートを決めて6点目を奪ったものの、試合後の選手の喜びは控えめだった。

 亡き恩師の墓前に優勝旗を届けることが選手、チーム関係者たちの目標だ。関大一を全国選手権4強や全国高校総体へ導いた佐野友章前監督が昨年11月に亡くなった。12年夏ごろから体調を崩していたという佐野前監督は昨年も選手のトレーニングを見守るなどしてきたが、昨秋容体が悪化。高校選手権予選では「最後の選手権へ連れていかないかん」と病床の恩師に全国切符を届けることを目標に選手たちは戦ったが、決勝トーナメント1回戦で優勝した履正社高に0-1で敗れて目標を果たすことができなかった。ただ、代は代わっても亡き恩師への感謝、選手権切符を、という思いは全く変わらない。芝中信雄監督が「先生をもう1回選手権へ連れて行って報告に行きたい。(墓前に)優勝旗を持っていきたい。スタッフも先生の教え子ばかり、みんなそれを思っている」と誓い、和田は「(佐野前監督は)座っているだけでもバンバンに緊張感が張り詰めて。ちょっとのミスでも・・・笑顔を見たことないですね。存在感が凄かった。ボクたち3年生、2年生も佐野先生に教えてもらっていた。ボクら教えてもらっていた代で、あと2年以内に全国へいきたい。それが佐野先生への報いになる」と前を向いた。

 選手層は他のライバルたちに比べると決して厚くない。「自分たちが一番弱い」という意識を持っている選手たち。その中でも強豪たちと戦うチームになるため、激しいメンバー争いが行われている。1年時から出場を重ねる和田でさえも「固定(メンバー)なんて一個もない。自分も危ないと思っている」という厳しさがある。練習試合や紅白戦でいいプレーをすれば、Bチームからいきなりメンバー入りを勝ち取ることができる可能性も。それだけにプリンスリーグ直後の練習試合も真剣そのもので、控え選手たちは高い意欲で臨んでいた。また、公式戦に先発した選手も上手くいかなければコーチングスタッフが何も言わなくても自主的に100mダッシュを60本行うほど。それぞれが情熱的に成長することを目指している。「あとは自分たちがどうすれば勝てるのか自分たちで気づいたら。動いたら何とかなったと掴んだら。今はまだまだだけどキチッとできるようになったら勝負できる」と指揮官は期待。和田は「技術も劣っているし、運動量とかで勝っていく。そこは自信がある。ただ、まだもっとできると思います。大阪一になるために、自分たちの武器、運動量とか声出すこととか、もっと磨いていって、それが大阪一になれば十分に戦えていけると思う」と力を込めた。

[写真]前半40分、関西大一はDF藤井が3点目のゴール

(取材・文 吉田太郎)

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