beacon

クラブが一つになり目指す「これが秋田のサッカーだ」

このエントリーをはてなブックマークに追加
[5.4 J3第10節 町田4-1秋田 町田]

 足下から足下へとパスがつながる。ブラウブリッツ秋田は90分間、自らのサッカーを貫き通した――。無暗にロングボールを蹴ることはない。最終ラインからショートパスをつなぎ、町田ゴールをこじ開けようと試みる。しかし、前半4分に最終ラインでのパスミスを奪われて、町田に先制点を献上してしまう。さらに大黒柱のMF熊林親吾とMF川田和宏を出場停止で欠いている影響もあり、なかなか決定機を作り出せないまま1-4の敗戦を喫した。だが秋田は、最後までクラブが目指すパスサッカーを披露し続けた。

 この試合、チーム唯一の得点を決めたMF前山恭平は「ここ数試合はミスから失点して負ける悪い流れになっています。今日もミスから先制点を奪われたので、パスをつなぐのは怖い部分もあります」と話した。しかし、リズム良くパスをつないで決定機を作った場面もあったように手応えも感じている。「難しいサッカーをやっていると感じますが、難しいなりに自分たちのやりがいを見出せています。(与那城)ジョージさんが目指すサッカーを追求して、そのサッカーをできるようになれば上のレベルに行けると感じています」と自分たちのサッカーの可能性を話した。

 与那城ジョージ監督はパスサッカーを目指す理由を「自分がそういうサッカーをやれたらと思っていますし、クラブから時間をいただけたので、何があってもこのサッカーを続けていきたい」と力強く話している。しかし、目指すべきサッカーは明確だが、まだまだ課題を感じているようだ。「クサビのボールを前線に入れて、落としを受けたときに攻撃のスイッチが入り、そこからサイド攻撃を仕掛ける形がうまくいっていないし、足下へとつなぎ過ぎている部分もあるので、シンプルにプレーするところはシンプルにプレーさせたい。目指すべきものはまだまだ先ですね」と話した。

 指揮官のこの姿勢は、クラブ側も理解している。岩瀬浩介代表取締役社長は「今は秋田のベースを作る時期」と語っている。「この先、何年かかるかは分かりませんが、上のカテゴリーに行ったときに『これが秋田のサッカーだ』というのを見せるには、良いもの、壊れないものを作るためには時間が必要で、今は一つひとつ着実にやっていく必要があります」。目先の結果はもちろん大事だが、J3初年度の今年はそれ以上に大事なものがある。

 確かにこの試合ではミスが目立ち、ピッチ上で見せるサッカーが目指すべきものには到達していなかったかもしれない。だが、一度見ただけで「秋田のサッカー」と印象付けるには十分なインパクトを残した。結果がついてくるには多少の時間を要するかもしれないが、選手、監督、そしてクラブが一つとなり、秋田は自分たちの色のサッカーを作り出そうとしている。

(取材・文 折戸岳彦)

▼関連リンク
[J3]第10節 スコア速報

TOP