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[総体]ハイレベルなパスゲーム、4連覇を狙う大津が東海大熊本星翔との好勝負制す:熊本

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[6.2 全国高校総体熊本県予選準決勝 大津高 1-0 東海大熊本星翔高 水前寺]

 平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技(山梨)への出場権を懸けた熊本県予選は2日、準決勝を行った。4連覇を狙う大津高東海大熊本星翔高(旧・東海大二高)との一戦は、MF坂元大希(3年)の決勝ゴールによって大津が1-0で勝った。大津は3日、全国大会出場を懸けた決勝でルーテル学院高と対戦する。

 ドリブル、相手の逆を取る動きなどで違いを示したMF葛谷将平主将(3年)と坂元に加え、非常に気の利く動きとシンプルなパスで大津伝統のパスサッカーを支えたMF平岡拓己(3年)とMF田原悟(2年)のダブルボランチ。特に前半、大津は好守から流れるようなパスワーク、局面での個の打開などハイレベルなパフォーマンスで好チーム・東海大熊本星翔を攻め倒していた。平岡拓己の父でもある平岡和徳監督が「昨年よりも個人戦術の高い子が揃っている。組み合わせとゴールへ向かうエネルギーとかを学んでいければ」と期待する世代。昨年、大津は現川崎FのMF谷口彰悟ら大学サッカーを経由して6人をJリーグへ送り出しているが、指揮官が「(“変態的な”ボールタッチをする選手が)今年もいますよ」と微笑むタレントたちが前半に躍動した。
 
 前半1分、左サイドを打開した坂元の折り返しから期待の181cmストライカー、FW一美和成(2年)が決定的なシュートを放つと、直後にも坂元が左サイドを切り崩し、3分には混戦からPAを縦に突いたMF古庄壱成(3年)が右足シュート。立ち上がりの猛攻を凌いだ東海大熊本星翔も相手の中盤のラインをブレイクして反撃する。5分に左サイドでのワンツーからMF榎島聖稀(3年)がクロス。後半は特にMF矢野達基(2年)とMF小野湧哉(1年)のダブルボランチが印象的なプレーをしていたが、前半も中盤を打開してからサイド攻撃へ持ち込んでいた。

 こちらも徹底してグラウンダーで勝負していた東海大熊本星翔。ただ前線からのプレッシングが利いていた大津がボールを引っ掛け、また相手に“蹴らせて”マイボールに変え、そこから精度・スピードのあるパスを軸に切り崩しにかかる。大津の選手たちが持っている理想のイメージは昨年のプレミアリーグ優勝校、流通経済大柏高のサッカーだ。葛谷は「昨年(全国総体で)、流経(流通経済大柏)と対戦して、ブロックをつくっても上手くいかなかった。そして(試合終了まで続くハイプレスの)守備。次元が違うと感じた。自分たちは流経を目指してやろうと考えた」と説明したが、ボールを取られてもすぐにハイプレスで取り返し、より多くの攻撃機会をつくる。より自分たちのパススタイルを際立たせるサッカーへの取り組みが前半は攻守ともに形となっていた。

 大津は17分にも左中間でのワンツーから右サイドへ流れた坂元が強烈な右足シュート。22分には左アーリークロスに右SB大塚椋介(2年)が飛び込む。そして24分にも坂元の左クロスに一美が決定的な形で飛び込んだ。ただ、東海大熊本星翔は国体選抜のGK藤田悠太郎(2年)がゴールマウスへ飛んでくるシュートを身体いっぱいに伸ばした手足で次々とセーブしていく。そして東海大熊本星翔は34分、矢野の展開から右MF渡邉駿(2年)がラストパス。ニアサイドのMF藤田健吾(3年)がゴールへ流し込んだが、この一撃は惜しくもオフサイドの判定でノーゴールになった。

 ここからの切り替えが速かったのが大津だ。それまでやや少なかった縦へのスピードのある攻撃。葛谷がディフェンスラインの背後へ落としたボールに走りこんだ坂元がDFを背中でブロックしながら右足シュートをゴールへねじ込んで先制点を奪った。

 再三あった決定機をようやくものにした大津は後半立ち上がりも流れのいいサッカーを展開していた。開始30秒に一美が決定機を迎え、6分には右サイドから仕掛けた坂元がワンツーから右足シュートを放ち、9分にもPAでこぼれ球を拾った一美がゴール至近距離から右足を振りぬく。だが“神がかっていた”GK藤田がすべてセーブ。すると試合の流れは徐々に東海大熊本星翔に傾いていった。

 東海大熊本星翔は攻守でアグレッシブにチャレンジする矢野とシンプルにボールを捌く小野のコンビが中盤で主導権を握る。相手のディフェンスラインが深かった分、プレッシャーをかけた前線と中盤、ディフェンスラインとが間延びしてしまった大津は、スペースを与えてしまい、そこを相手に突かれてピンチに陥った。東海大熊本星翔は後半15分、10番を背負う左SB小田健伸主将(3年)のクロスに藤田が決定的な形で飛び込む。これはCB倉本龍吾(3年)にクリアされたが、その後も右の東将輝(2年)と左の小田が再三攻撃参加してクロスまで持ち込んでいく。18分には東のクロスからファーサイドの榎島が決定的なヘディングシュート。25分にはCB浦野将(3年)の身体を張った守りから攻撃につなげ、最後は榎島がシュートへ持ち込んだ。そしてアディショナルタイム突入後の36分には右クロスから藤田が右足ボレー。雨中の試合終盤、波状攻撃を繰り出した東海大熊本星翔だったが、空中戦で強さを十分に発揮していたCB野田裕貴(2年)と倉本中心に守る大津が踏ん張り、決勝へ駒を進めた。

 互いに“地上戦”で持ち味を出し合った両校。勝った大津だが、前半に得点し、後半失速する試合が続いていることを反省した。葛谷は「全国制覇できるチームだと思っている。でもこのままじゃできない」。坂元は「5-0とかで勝ってもみんな満足していない。冬の韓国遠征で韓国1位のチームに完全にやられたりしている。きょうの前半くらいの試合をいつもやらなければいけない」とチーム力向上へ力を込める。より攻守の質を磨いて目標を達成するか。まずは3日の決勝。葛谷は「昨年、一昨年と全国で結果残していない。まず今大会で優勝して、九州も獲って、全国出て優勝したい」。内容、結果にこだわって、どこよりも巧く、どこよりも強くなる。

[写真]前半終了間際、坂元の先制ゴールを喜ぶ大津イレブン

(取材・文 吉田太郎)

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