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攻撃的ポジション“コンプリート”の大久保「もう不安はない」

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 12年2月24日のアイスランド戦(3-1)での左サイドハーフ、鹿児島・指宿合宿から今合宿まで練習で入っているトップ下、5月27日のキプロス戦(1-0)での1トップに続き、2日のコスタリカ戦(3-1)では右サイドハーフで先発し、前半45分間プレー。攻撃の4ポジションを“コンプリート”したFW大久保嘉人(川崎F)は、コスタリカ戦から一夜明けた3日、「右はやっていなかったからね。昨日はもっとやりたかったけど、45分で確認が終わったんでしょう」と軽やかに言った。「起きたのは9時。久々によく寝た」と笑顔だ。

 コスタリカ戦では試合前のミーティングでアルベルト・ザッケ―ローニ監督から「できるか?」と聞かれ、「やってみます」と答えた。そのときの心境は「『無理っす』とは言えなかった。不安しかなかったけどね」。

 試合が始まると、サイドに開くことで孤立しがちな状況が生まれてしまうことに気づいた。ザックジャパン戦術でサイドハーフのファーストポジションに要求されるのは、ワイドに開くこと。この4年間で多くの代表候補たちを戸惑わせてきたコンセプトだ。指揮官が授ける戦術の細かさゆえに、“戦術の虜”に陥ってしまい、自分の良さを出せずに次のチャンスを失っていった選手も少なくない。

 器用さではだれもが一目置くベテランの大久保でさえも、最初はうまくこなせなかった。「試合が始まってすぐは、サイドに張らないといけないという頭があって、『ここにボールが入ったらここまで開かないといけないのか』と思いながらやっていた」。

 けれどもコスタリカ戦の途中で気づいたのは「これでは孤立する」ということ。思い切って自身の判断で中に入る動きを増やしていくと、徐々に攻撃陣の連動性が出てきた。

 右サイドハーフという4つ目のポジションをこなしたことで、入門編は終了し、次は自分らしさをさらに出していくという段階に入った。「今度はどこで出るか分からないけど、昨日、右をやったことでもう不安はない。どこで出ても、あとは自分らしさを出していきたい」と意欲を見せる。

 コスタリカ戦では選手のポジショニングで気づいたことがあった。それぞれの距離が遠いことだ。

「ボールを奪われたとき、みんなの距離が遠いからカウンターを食らっている。それで余計に体力を使う。逆に近いところにいればみんなで囲い込めるし、ショートカウンターに行けるはず。みんながポジションを広く取ろうとしていることで、ここで取れたらチャンスなのに惜しいという場面が多かった。距離感についてはもう少し言っていきたいと思う」

 大久保には「最終的には自分の良さを出さないと日本の強みは出ない」という思いがある。「そうじゃないと、もったいないですから。もちろん、監督がやろうとしていることはやりますけど、悔いのないようにやりたい。集大成ですから」

 大久保がチームに与えている新たなスパイスには、攻撃陣のギアを上げるのにふさわしい刺激がある。ザックジャパンが新たな境地に足を踏み入れるであろう期待が高まる。

(取材・文 矢内由美子)

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