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[総体]準決勝で“衝撃”の選手権日本一・富山一撃破!高岡一が決勝も制して41年ぶりの全国へ!!

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[6.8 全国高校総体富山県予選決勝 高岡一高 2-1 水橋高 高岡スポーツコア]

 平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技(山梨)富山県予選は8日、決勝を行い、前日7日の準決勝で13年度全国高校選手権優勝の富山一高を破った高岡一高水橋高が激突。後半24分に左SB二口大司(3年)が決めた決勝ゴールによって2-1で勝った高岡一が、41年ぶり2回目の全国大会出場を決めた。

 全国的にも衝撃を残した高岡一の富山一撃破。「日本一のチームを倒すことを抽選で組み合わせが決まった時から狙っていた」とCB池田伊吹主将(3年)が振り返る富山一との戦いは、二口が「全員見たことないくらい気合が入っていて、ウォーミングアップの時から『勝てる』『勝てる』とみんな言っていた」というほどの魂を込めた70分間のプレーで冬の全国王者を予選敗退へと追い込んだ。

 そしてこの日の対戦相手は、富山一とともに近年の富山の高校サッカー界を引っ張ってきた水橋。序盤は緊張もあってミスが目立ち、持ち味である前線からの守備も前線の選手が全く動けていない状況だった。それでも「富一に勝って自信がついていた」(二口)という高岡一は先制点で勢いに乗ると、一度追いつかれながらも再び勝ち越して頂点に立った。

 序盤、水橋は意図のあるパスをつないでサイドからPA付近までボールを運ぶと、3分には右SB上嶋壮太(3年)のクロスからFW吉松和貴(3年)が左足シュート。さらに14分には左SB水野大地(3年)の左ロングスローにMF下鳥佑稀(3年)が飛び込む。前線で吉松が存在感を示し、MF佐藤圭介(3年)のスピードが相手を苦しめた水橋に対し、一方の高岡一は全くシュートエリアまでボールを運ぶことができない。

 水橋が主導権を握ったまま前半の半ばを過ぎたが、それまで沈黙していた高岡一が突如牙を剥く。23分、高岡一はGK天野裕二(3年)がPAへ放り込まれたボールをキャッチすると、すぐさま右足で左サイドを走るFW原田正暁(2年)へ放り込む。これは水橋DFがカットしたが、コントロールが大きくなったところを狙っていた原田が強奪。抜群のスピードでDFを置き去りにすると、一気にPAへ侵入し、「GKが寝っ転がっていた。冷静に打てた」と右足シュートをゴールへ流し込んだ。

 この1点で明らかに変わった高岡一は、MF尾田和也(3年)、MF山田啓太(2年)、MF金澤瑠佳(2年)の3人が攻守両面で目立ち出す。前に出てきて前線とDFラインとの間がやや開いてきた水橋に対し、グラウンダーのパス中心に攻撃。また原田が再びインターセプトから抜け出しかけるなど前線からの守備も効果を発揮して水橋に流れを渡さない。そして後半10分には左サイドを突いた尾田の折り返しがFW小谷奈央人(3年)へ通り、12分には右サイドの小谷からのパスを受けた金澤が右足ダイレクトで放ったシュートがゴール左ポストをかすめるなど追加点のチャンスをつくった。

 ただ水橋は前半終了間際にMF堀田要(3年)のの左クロスを吉松が頭で合わせ、後半8分にはMF吉川育良(3年)の右CKにCB高森康平(3年)が飛び込むなど、クロスボールをシュートへつなげていく。そして迎えた14分、水橋は吉川の左FKからニアサイドへ飛び込んだ下鳥がGKの目の前で頭で合わせて同点ゴールを挙げる。

 沸き立つ水橋スタンド。一気に勝ち越しを狙う水橋は17分、左クロスにFW北野剣士浪が飛び込み、19分にはPAやや外側で獲得したFKを水野が左足で狙った。ただ2点目を奪うことができなかった水橋に高岡一が再び強烈なパンチを見舞う。24分、高岡一は山田が右サイド後方から入れたFKが中央の選手たち、GKの頭上を越えてファーサイドへ届く。これに大外から飛び込んだ二口が頭で合わせて勝ち越し弾をゴールへ突き刺した。

 あまり練習していなかったというセットプレーからのゴールで2-1。水橋はここから怒涛の攻撃を見せるが、28分に吉松が放った左足シュートはGK天野がファインセーブではじき出す。さらに32分にはゴール前でこぼれ球を拾った北野が右サイドでフリーの高森へパス。高森がすかさずシュートへ持ち込んだが、高岡一はCB中谷将鷹(2年)が身体を投げ出して頭でシュートのコースを変える“魂のスーパークリア”で失点の危機を逃れる。水橋は34分にもカウンターから右クロスをファーサイドの下鳥が合わせるなどゴールへ押し寄せたが、池田や右SB北川哲也(3年)らが必死の形相で弾き返す高岡一の前にゴールを奪えなかった。高岡一の松浦朗夫監督が「正直ボクの方が驚いている。失点してもピッチの中で切り替えて次の準備をしてくれていた」という選手たちの奮闘が実り、3分のアディショナルタイムの後、試合終了のホイッスル。高岡一が41年ぶりに全国の扉をこじ開けた。

 桐蔭学園高(神奈川)、日本体育大出身の松浦監督は富山一戦の応援に来られない学園長に対して「『富一、敗れる』という見出しをつけます」という約束をし、見事に勝利。そしてこの日、10年前の赴任当時は新湊高と合同チームだったという高岡一を全国舞台へ引き上げた。高岡一のサッカースクールなど地域のサッカー普及から取り組んで強化に努めてきたチームは、富山県西部の呉西地区で「全国に行きたい」という選手たちが集まるサッカー部に育ち、そしてこの日悲願を達成した。

 過去のチームと比べて飛び抜けた力を持つ世代という訳ではない。それでも大会関係者から「優勝」の期待も寄せられた全国大会へ向けて松浦監督は「全国に行ったらボコボコにされるかもしれない。でも富山県代表になった以上は準備して恥ずかしくない試合をしたい」と誓った。そして池田は「注目されると思うけれど、恥じないプレーをして全国でも戦っていきたい。富一も優勝したし、優勝狙っています」。富山一戦後にMF西村拓真やFW堀淳樹から「オレたちの分も頑張って欲しい」とエールを送られたというチームは、富山一の日本一獲得によって県内外からの注目が集まる中、期待に少しでも応えるべく万全の準備をして全国初戦へ臨む。

(取材・文 吉田太郎)

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