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ザッケローニ監督がベースキャンプ地のイトゥで記者会見

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 日本代表アルベルト・ザッケローニ監督が10日、ブラジルのベースキャンプ地イトゥで記者会見を行った。

アルベルト・ザッケローニ監督
―昨日からイトゥで練習が始まったが、環境面や選手の状態は? 今日休みを与えたことでコンディション面で期待することは?
「ベースキャンプを選ぶ作業の段階から自分も参加していた。いくつかの候補がある中で自ら足も運び、視察した中でこの場所を選んだ。そういう状況もあって、この場所には満足している。(リオデジャネイロの)コパカバーナの海岸沿いとは違うが、日本の文化を考えると、最適なベースキャンプ地を選べたかなと思う。この場所は個人的にも気に入っているし、選手もとても気に入ってくれているように思う。

 今日の休みに関しては、実はかなり前から決まっていた。プログラムどおりにトレーニングを消化することができれば、この日は休みにしようと思っていた。これまでのトレーニングでやってきた負荷を考えると、ここで休みを与えることで、初戦に向かって、さらにコンディションの面でも向上するのではないかと思う。昨日の練習でもチームは最高のトレーニングができた。ここで休みを与え、リラックスさせるのも大切だと思う。ただ、(メディアの)みなさんもみなさんの仕事をしないといけないし、記事を書かないといけないということで、今日は自分が犠牲の精神を持って(記者会見に)臨んでいます(笑)」

―(イタリアメディアからの質問)W杯以降もこの代表チームを率いるのか? 3-4-3のシステムをこのチームに植え付けていく考えは?
「W杯以降の話は大会が終わったあとに話せばいいことで、そういうことはまったく考えていない。今は目の前の大会に集中している。一つ確実に決まっているのは、夏は故郷に戻って過ごすということ。W杯に参加する資格があるのだから、目の前の大会に100%集中して、しっかりチャレンジするところに気持ちが行くべきだと思う。4年間、このためにチームをつくってきた。当然、いい戦いをしたいという気持ちは強い。

 3-4-3については、完成させるために4年間やってきたが、もう一つの戦術的オプションを持つには時間が足りなかったのかなと思う。大きく変えることはないと思うが、4年間やってきていることだし、練習も少しずつ積み重ねてきているので、もしかしたら試合の流れの中で他の戦術的オプションを試すことはあるかもしれない。当然、ここにいる選手たちは複数のシステムをこなせる選手たちだが、4-2-3-1のほうが適しているのではないかと思う。監督としては自分のサッカー観、哲学は持ってしかるべきだが、それを選手に強要することはいけないとも思っている。選手たちに合ったシステムをつくっていくことが大事だし、慣れたシステムをつくっていくことも大事だと思う。イタリアでも常に3バックを使っていたような印象をイタリアのメディアはよく言うが、実際に使ったのはウディネーゼ、ミラン、トリノの時代だけだ。インテルでも7試合使ったが、ウイングバックの選手がケガをして、そこからはシステムを変えざるを得なくなった」

―W杯初戦まで4日と迫ったが、選手たちに何を求め、何を植え付けたいか?
「これまで求めてきたものを求めるし、それ以外のことを要求するつもりはない。一つ注意したいのは試合へのアプローチ。いい形で試合に入れる準備をお願いしようと思っている。リラックスし過ぎても良くないし、テンションが高まりすぎても良くない。このチームは若すぎず、ベテランが多いわけでもない。平均年齢27歳ということで、気持ちの面でもしっかりバランスが取れていると思うので、大きな心配はしていない。トレーニングのところからしっかり観察しているが、ここまではすべて順調に進んでいると思う」

―(イタリアメディアからの質問)本田はセリエAでそれほど良いパフォーマンスを見せられなかったが、そのことが逆にモチベーションとなって代表に合流しているのか? グループリーグを突破した場合、イタリアと対戦する可能性もあるが?
「2つ目の質問についてだが、まずグループリーグに集中しないといけない。イタリアのことはそのあとに考えればいいと思う。このグループはバランスの取れたグループで、どこも上に行ける可能性がある。それぞれの国のメディアの情報を見ると、それぞれの国がこのグループリーグを突破できると考えているようだ。

 本田に関しては、最高のコンディションに持ってきてくれることを監督としても祈っている。ミランはビッグクラブであり、そのビッグクラブが苦しんでいた。内部事情が落ち着かず、監督も代わり、難しいシーズンだったと思う。本田はピッチ上のパフォーマンスだけでなく、ピッチ外でも頭の良い選手で、状況を即座に理解できる。彼にはこの4年間、このチームに貢献してきてくれたものを、そのままW杯でも求めたいし、期待したいと思っている。徐々に大会が進むにつれてパフォーマンスを上げていく可能性が高いのかなと思っている。

 イタリアの健闘とグループリーグ突破を祈っている」

―攻撃的なサッカーを掲げているが、失点が続くと、守備に意識が行きがちだが?
「チームとしてのバランスは取れていると考えている。足りないところは集中力。例えばオランダ相手に2点を取りに行こうと考えたら、失点はある程度、想定しないといけない。ベルギーを相手に3点取りに行こうと思ったら、ある程度の失点は想定しないといけない。コスタリカから3点取りに行こうとすれば、1失点は仕方ない。ザンビアに4点取りに行こうとしたら、失点は1点ぐらいは想定しないといけない。この4年間、相手のゴールに迫る、ボックス内に飛び込むという指示を出してきたが、同時にバランスも求めてきた。そのバランスを最高のレベルに引き上げることを求めている。確かにこの前の試合(ザンビア戦)は失点が多かったと思っている。マークに付く動きや集中力が欠けていたのかなと思う。数的同数でやられている。数的不利でやられているわけではなく、バランスが崩れていたわけでもない。失点が多いと、一つのパート、つまりDFラインが批判されるが、必ずしもそういうわけではなく、11人でサッカーをやっている。広いピッチをカバーするには11人いないといけない。中盤の選手、前線の選手がしっかり守備に参加しないといけない。全員が守備をしないといけない。そういう意味で、こないだの試合は中盤のライン、FWのラインがいつもほど守備をしなかったのかなと思う。ミスや責任は一つのところに集中するのではなく、チーム全員で取っていくべきだと思う」

―日本が主導権を握ることを最優先にしているが、W杯のように強い相手との試合では主導権を握れない時間帯も増える。そういうところで耐え切れずに失点を重ねているが、そういう時間をどう耐えていくのか?
「全員で守り切ることが大切で、その時間帯だけでなく、常にそうあるべきものだと考えている。メディアでは攻撃的な選手がクローズアップされがちだが、彼らが活躍できるのもMF、DFがいるから。彼らがボールを出すから活躍できる。だからFWも中盤やDFを助けるために守備をしないといけない。前線のメンバーが守備に参加しなければ、同時に前線の選手のチャンスも減る。つまりボールの奪いどころが低くなり、ゴールを奪うのは大変になる」

―コートジボワールの分析は? 日本について海外メディアでリッピは「グループリーグを突破できる」、モウリーニョは「突破できない」と話しているが?
「2人の偉大な監督の名前が挙がったが、その意見が分かれているということで、サッカーに確定的なものはないということが言える。信じる道を進むべきなのかなと思う。唯一言えるのは、そこへの思い入れ、しっかり分析、研究しているのは自分だけということだ。

 明日、チーム全体で対戦相手の分析を進める。対戦相手のストロングポイント、ウイークポイントを伝える。ただ、ミーティングに入る前から選手はしっかり予習している。リラックスルームなどにDVDを持ってきて、対戦相手の情報はすでに持っていると思う。初戦を迎えるまでの練習でもバランスを考える。1日は攻撃により重点を置き、1日は守備に重点を置いたトレーニングをしようと思っている。あとは朝食、昼食、夕食とチームで食事を取っているので、選手を観察したうえで、だれの気持ちが入りすぎているか、あるいは入っていないか、そういうのを見ながらチームのバランスを取っていきたい。相手よりピッチ上でいいプレーをしようという監督の思いは彼らに伝わっていると思う」

(取材・文 西山紘平)

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