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[総体]U-17W杯戦士・渡邊V弾!前橋育英が“群馬クラシコ”制す!

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[6.15 全国高校総体群馬県予選準々決勝 前橋育英高 1-0 前橋商高 太田総合]

 平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技(山梨)群馬県予選は15日の準々決勝で13回目の全国大会出場を狙う前橋育英高と17回目の全国大会出場を懸けた前橋商高との“群馬クラシコ”が実現。前橋育英がU-18日本代表MF渡邊凌磨(3年)の決勝ゴールによって1-0で勝ち、準決勝(対共愛学園高、21日)へ進出した。

 圧倒的にボールを保持する前橋育英に対し、前橋商は5バックと4人の中盤でゴールに鍵をかける。前橋育英の山田耕介監督が「前商の思惑通りの試合だったと思います」と口にしたように、後半半ばまでは守る前橋商が耐え続けてスコアレスで進行した。ただ、U-18日本代表MF鈴木徳真主将(3年)が「(相手の戦い方の)予測はついていた。(得点が入らず)以前の自分だったらいっぱいいっぱいになっていたと思う。でも時間の使い方が分かってきた。80分ではなく、延長戦も含めた100分間で勝てると考えていたし、『面白かった』です。負ける気はしなかった」というように、前橋育英は焦れなかった。試合の流れを読み、勝負どころを逃さない。鈴木が「自分たちは練習試合からやり続けているから、この勝利はまぐれじゃない」と言い切るタイガー軍団が、一発でライバルを仕留めて伝統の一戦を制した。

 開始1分に、渡邊凌がループシュートを放ち、4分には右アーリークロスをFW青柳燎太(3年)が頭で合わせる。また8分には左SB渡辺星夢(3年)の左クロスに渡邊凌が飛び込み、9分には渡辺凌の右CKをファーサイドのFW菊地匡亮(3年)が頭で合わせるなど、1タッチのパスを交えながらボールを動かす前橋育英が前橋商ゴールへ押し寄せる。前橋商が築いた砦を取り囲んだ前橋育英。時にボランチの鈴木がポストに入ってパス交換するなど、出し入れを繰り返しながら、相手DFを広げて穴を開けようとした。

 ただベンチから「最後は中央だぞ」という声が飛ぶ前橋商は、CB贄田浩史主将(3年)を中心に中央を割らせない。鈴木からのスルーパスが何度か入り、渡邊凌が個人技でPAへ切れ込むシーンもあったが、前橋商は4人がかりでボールホルダーを潰すような気迫の守備。そしてボールを奪うとすぐさま1人前線に残るFW堀友樹(3年)にボールを入れて反撃する。24分には堀がおさめて13年U-17日本代表候補MF品川侑輝(3年)に落とすと、右サイド前方に出されたボールを自陣から走り切ったDF山崎稔輝(3年)がダイレクトでクロスを放り込む。34分には相手のスルーパスをスライディングでカットしたDF豊川柊弥(2年)を起点に左サイドからカウンター。品川を経由して右サイドへボールを動かし、山崎がフィニッシュまで持ち込んだ。

 前橋育英は19分に右CKを菊地が頭で合わせ、ゴール目前で右SB岩浩平(3年)が頭コースを変える。26分には右サイドを連係で崩し、33分には菊地のインターセプトから渡辺凌が右足シュートを放った。41分にはカウンターから最後は鈴木が狙いすました左足ミドル。強烈な一撃はDFに当たってコースが変わったものの、GK青木一真(3年)が反応して得点を許さない。前橋育英がゴール前の崩しの精度を欠いた部分もあったが、前橋商の見せる伝統校の意地、高い集中力がライバルとの差を埋めていた。

 ただ、上原大雅(3年)、大平陸(2年)の両CBの前にシュートシーンをつくることができない前橋商に対し、前橋育英は後半、FW関戸裕希や交代出場のFW坂本達裕(ともに3年)がミドルレンジからシュート。9分、17分には渡邊凌が個人技も交えてシュートを撃ちこむなど攻勢を強めていく。それでも前橋商の黒白の壁は揺るがず、サイドに落ちたボールも素早く蹴り出すなど守り続けた。

 だが、後半の飲水タイム直後、前橋育英がペースアップ。ついにスコアを動かした。24分、PA外側でボールを動かした前橋育英は関戸からのパスを受けた渡邊凌が「前商も集中した守備をしていたので、引っ掛からないかなと思ったんですけど、ファーストタッチ後のキックフェイントに引っ掛かってくれた」とDFを外すと中央から左へ流れながら左足一閃。必死にスライディングタックルを試みる前橋商DFの足先を抜けた一撃がゴールへ突き刺さり、待望の先制点となった。

 昨年のU-17W杯で3得点をマークしている渡邊凌が値千金のゴールを決めた。鈴木は「ああいうところで点が取れるチームだと思うし、取れる選手がいる」と語る前橋育英が崩した均衡。このあとはカウンターを狙いつつ、サイドにボールを散らして試合を締めにかかった。前橋商も34分、バイタルエリアを突破したMF堀口護(2年)が倒されて得たFKから、キッカーの品川が右ポストを叩く右足シュート。前回王者をヒヤリとさせるシーンもつくったものの、前橋育英が1-0で逃げ切った。「今年はそんなに(タレントが)いない。頑張るしかないです」という前橋育英の山田監督は「前半からチャンスがあったし、そこでものにしなければいけないですね。(技術だけでなく)こじ開けられるような、入れろという(ダイナミックな)力も必要。(ただ)ああいうふうに、個でも決められたのは良かった」。ダブルエースの一角・渡邊凌が決めた一撃に目を細めていた。

 個々の力については、激戦区のプリンスリーグ関東1部で優勝した昨年を下回ると選手たちも理解している。ただ自分たちには自分たちの強みがある。鈴木は「自分たちが何が強いかと言えば、まとまり。チームワークが強い。試合前の円陣でも気持ちをぶつけあっているし、自分たちはチームワークで勝つチームだと思う」と説明し、渡辺凌も「チームワークだったり、元気だったりは昨年を上回っていると思う。そういう部分を発揮していきたい」と語る。そして、こだわっている部分は試合で100パーセントの力を出すこと。鈴木は「100パーセントでやっているからこそ、(目標が)近づいてくる。ただ昨日、経附(高崎経済大附)のボールを追う姿を見たら自分たちはまだまだ足りないと思った。その力を出せる、100パーセントを出し切れるチームになっていかなければいけない」。もちろん攻守ともにハイレベルなチームではあるが、現状、全国レベルの相手を圧倒する力まではないかもしれない。ただ、自分たちの実力を見極め、自分たちの力を最大限発揮し続けることで前橋育英は一歩ずつ階段を上っていく。

[写真]後半24分、前橋育英は渡邊凌が左足で先制ゴール

(取材・文 吉田太郎)

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