beacon

元日本代表DF都並敏史の徹底分析「日本の2列目よ、自由に動け!!」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 ショッキングな敗戦で幕を開けた日本代表の2014年W杯ブラジル大会。コートジボワールに逆転負けを喫した日本は、第2戦を前に早くも土俵際に追い込まれた。対戦相手はEURO2004の王者でもあるギリシャ代表。10年前に欧州制覇を成し遂げた百戦錬磨の選手たちが多数残る経験豊富なチームを、どう攻略するか。日テレ系列で5:50分から生放送される日本vsギリシャ戦の解説を務めるため、現地入りしている元日本代表DF都並敏史氏に、前日練習の様子と試合のポイントを聞いた。

<前日練習を見た印象 大迫がキレている>

 初戦でオランダ代表に大敗したスペイン代表が、第2戦でもチリに敗れてしまい、グループステージでの敗退が決まりました。スペイン代表を見ていても、初戦からの切り替えというのが、とても難しかったことが伝わってきましたが、日本にはしっかりと気持ちを切り替えてもらってギリシャ戦を迎えてもらいたいと思います。

 両チームの前日練習を見たのですが、ギリシャ代表は昨日の練習で内紛が勃発したようです。MFヤニス・マニアティスというオリンピアコスの選手と、DFギョルゴス・ツァベラス(PAOKテッサロニキ)が、つかみ合いのケンカをしたらしく、会見では、その質問で持ち切りでした。前日練習では、気持ちを切り替えていて、結構、声も出ていたし、笑顔もあったのですが、この内紛は日本の追い風になるかもしれません。

 そして肝心の日本ですが、ちょっと体が重そうでした。冒頭でフィジカルトレーニングをやっていたのですが、雰囲気もあまりに暗かったので『元気出していくぞー!!』って、僕が横から声を出しました(笑)。そうしたら、長友とかが笑って、少し声が出てきましたね。柿谷に『曜一朗、おまえが言えよ!』って言ったら、『ザックさんが来ますよ!』って言われちゃいました。ちょっとザッケローニ監督に、ビビっているところがあるのかもしれませんね。スタメンがまだ決まっていないから、今余計なことをしない方が良いと思っているのかもしれませんが、僕とか中山(雅史)だったら、絶対に声を出して仲間を盛り上げるところだったので、横から声出しをやっちゃいました。でも、ちょっと心配ですね。

 冒頭の15分が公開された練習では、FW大迫勇也のキレが抜群に良かったですね。フィジカルのトレーニングで、ちょっと重そうな選手が多かった中で、大迫はキレキレでした。体の軽さっていうのは、走っているところを見ると一番わかるんです。ターンのときに、キュッと走れていたのは、軽さの証明です。出番があれば、やってくれそうだなと感じましたね。

<ギリシャの要注意選手 サマラス>

 ギリシャ戦では、日本の本来のサッカーを見せてほしいですね。コートジボワール戦後、選手たちは「自分たちのサッカーができなかった」と話していましたが、見ていて悲しくなるような、『こんなもんじゃないだろ、おまえら!』と言いたくなるような試合でした。個人的には、相手をリスペクトしすぎてしまった印象を受けています。直前のザンビアとの親善試合でアフリカ人選手の身体能力を痛感させられたこともあったのでしょう。自分たちの長所を出すことよりも、相手の長所を消すことを意識する戦い方になり、『何をやってくるんだろう』と見てしまい、自分たちから仕掛けることができなくなっていました。特に前半のMF香川真司は、全くダメでしたね。先発から外されてもおかしくない出来でしたが、僕としては、今大会、香川の活躍がなければ日本の躍進はないと思っているので、ギリシャ戦ではもう一度チャンスを与えてほしいですね。

 そう思う理由は、香川の俊敏性、ドリブルによって、守備に穴をあけることができるから。現代サッカーの強さは、守備の強さです。ただ、『守備の強さ』というのは、パスに対して強い守備をつくっているのであって、ドリブルには弱いんです。開幕戦でブラジル代表と対戦したクロアチア代表も、後半に入ってブラジル代表がドリブルを多用してきた時に、対応できていませんでした。日本でああいう縦に速いドリブルができるのが、香川です。ギリシャとコロンビアの試合を見ても、やはりドリブルへの対応に苦労している印象があったので、どんどん仕掛けてほしいですね。

 ギリシャ戦では、香川を含めた2列目の選手の飛び出しがポイントになると見ています。ギリシャは、FWや2列目の選手が飛び出してくる動きに対してのマンツーマンが、一番の強みです。逆に言えば、そのマークさえ外してしまえば、チャンスはできます。アンカーの選手を山口蛍あたりが引き連れて、最終ラインに押し込み、空いたスペースを2列目の本田圭佑や香川が使う。そういう連動したプレーに期待したいですね。日本はそういう分析をして、それに対応した動きを狙ってやくことに長けたチームなので、ここは楽しみな部分です。

 逆に守備で警戒が必要なのは、左サイドのサマラスです。僕のイメージでは、神戸のFWマルキーニョスですね。タイプは違いますが、カウンターの起点のなり方が似ています。長身ですが足元のテクニックに長けていて、厄介な選手です。対面するのは内田篤人になりますが、ボランチの山口蛍、CBの吉田麻也も一緒にケアをして、攻撃の芽を摘んでいく必要がありますね。そこを抑えて、暑い中でボールを回すことができたら、絶対に崩せるはずです。相手にはユーロ優勝メンバーも多く、決して若くはありませんから、日本は走り勝てるはずです。

<観戦ポイント ギリシャのセットプレー>

 この試合に関しては、とにかく1-0でいいから、勝つことです。そして2-0にしようという気持ちが大切です。1-0でリードして、相手が前に出てきたら、大久保嘉人や柿谷を入れて、リズムを取り直す。チャンスができて追加点が取れれば最高。取れなくても、攻撃で時間を稼ぎ、攻め切ることですね。付け焼刃の3-4-3で逃げ切るのもありだと思います。日本が一番苦手としているのは、今は攻めるのか、攻めちゃいけないのかという判断の部分です。そういう駆け引きの力が弱い。ただ、最後の最後になれば『守ればいいんだ』となります。そこで5バック気味の3バックにして、守り抜くことはできるはずです。

 この試合を見るうえで、注目してもらいたいのは、相手のセットプレーの回数や与えている場所です。ギリシャは堅守速攻のチームです。日本がシュートを打たれたり、ゴール前までボールを運ばれてセットプレーを与えたりしていれば、試合は相手のペースです。日本が攻撃に失敗した後、すぐにボールを取り返すことができればいいのですが、そうはいかないケースもあります。そのときに、ある程度、ゴールから遠いところで止められていれば大丈夫。でも、フィニッシュに持ち込まれたり、ゴール前でセットプレーを取られたりすると、相手は高さもあるので非常に危険です。

 もう一つのポイントは、2列目の選手がどれだけ自分のポジションを離れられるか。これは勇気を持つこと、と言い換えることもできます。自分のポジションにいるのは、守備を考えたときのことです。攻めるときは、自分のポジションをどれだけ離れられるか。そこを離れる動きがあるからこそ、DFを崩すことにもつながります。コートジボワール戦では、流れの中で2列目の選手たちのポジションが入れ替わる回数が、非常に少なかった。ギリシャ戦では、大胆に、勇気を持って、自分たちから仕掛けて勝ち点3を必ず取ってもらいたいです。このままでは、終われませんよ!!

[写真]ギリシャの要注意選手FWサマラス
(取材・構成 河合拓)
★大会日程やTV放送、最新情報をチェック!!
2014W杯ブラジル大会特設ページ

TOP