beacon

山本昌邦のW杯分析「日本が予選突破する可能性は、50%」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 いよいよ明日の朝5時に迫った日本代表コロンビア代表。1分1敗と大苦戦を強いられているザックジャパンだが、決勝トーナメント進出の可能性を残して最終戦に臨もうとしている。この大一番を前に、02年日韓W杯日本代表コーチや04年アテネ五輪U-23日本代表監督などを歴任した、世界を知る山本昌邦氏が、日本代表の展望から今大会の傾向までを解説する。

疑問符がつく残された交代枠

 ギリシャ戦の日本は選手も動けていたし、やろうとしているサッカーはできていた。出来は決して悪くなかった。2戦目で勝ち点3をとることができず批判される向きもあるだろうが、この一戦だけで評価をするべきではない。

 先発したFW大久保嘉人は2列目の右におさまり、FW岡崎慎司が左にまわった。FW香川真司に代わって岡崎を左サイドに起用したのは、守備力を向上させたいという狙いもあったと思うが、左サイドの香川、FW本田圭佑、DF長友佑都による崩しという日本の武器が失われてしまった。右サイドも同様だ。岡崎が中に入ることで右SBの内田篤人が上がるスペースをつくっていたが、それもできなくなった。

 ギリシャに1人退場者が出たが、日本にとってはかえって難しい状況になった。自陣に引かれてしまい、サイドのスペースも埋められてしまったからだ。だからこそ細かいパスをつないでコンビネーションで崩していくべきだったのだが、それもできなかった。

 ギリシャ戦で解せないのは、交代枠をひとつ残してしまったことだ。何が正解だったかは答えが出ない問題だが、何かしらのチャレンジは見せてほしかった。キレで勝負するタイプの岡崎の動きが重くなったら、FW柿谷曜一朗を入れてもよかったのではないか。今大会はドリブラーが活躍できる傾向にあるので、FW齋藤学を入れてもよかった。手元にある交代のカードを切れないなら、メンバー選考に問題があったということだ。

日本苦戦のワケは準備不足にあり

 日本がパスサッカーを突き詰めるメンバーを揃えたのは見て取れるが、残念ながら初戦のコートジボワール戦ではまったく実戦できなかった。スタッツを見ると、ボール支配率は42%で、パス成功率は71%。これは守備的な戦術を採った2010年南アフリカ大会とほぼ同じ数字だ。南アのときはボールを保持していないときには走って、奪ったらカウンターということに徹していたから勝ち点を拾えたが、180度目指すサッカーが異なる今大会のチームがこの数字では意味がまるで違ってくる。

 W杯で苦戦を強いられているのは、準備不足ということにつきる。

 ギリシャ戦でフィニッシュのところで堅さが出てしまったのは、コートジボワール戦を落としてしまったから。余裕をもって試合に臨む準備ができなかった。事前合宿を行ったアメリカ・タンパは、高温ではあったが、試合会場のような多湿ではなかったという。湿度が高い場所でプレーをする準備ができなかったのだ。DF吉田麻也をパワープレーで前線に上げるなら、メンバーにFW豊田陽平を入れておくべきだった。メンバー選考の時点から準備が足りていなかったということだ。

 とはいえ、決勝トーナメント進出の可能性が残されている以上、できることをやるしかない。決勝トーナメントに進むためには、コロンビアに勝利が絶対条件。できれば2-0で勝っておき、さらにコートジボワールが引き分け以下で終わらなければならない。それでも十分に可能性はあると思っている。ギリシャも決勝トーナメント進出の可能性を残したことで、引き分け以上もありえるからだ。

 2-0以上で勝つためには相手の良さを消すよりも、自分たちの良さを出していくべき。コンディションの良い選手を起用し、良い連携がとれる組み合わせで望みたい。ギリシャ戦はボール支配率が68%、パス成功率は86%まで向上している。ただ、それでも勝てない世界がW杯。フィニッシュの精度やトップスピードでのプレー精度といった部分を高める必要があるが、あともう少しのところまできている。

FWが力を発揮しやすいブラジルW杯

 今大会はFWが圧倒的に有利な大会だと言える。DFが手を使って引っ張るとファウルをとられてしまうので、とりわけドリブラーの活躍が目立つ。オランダ代表のFWアリエン・ロッベンがそのいい例だ。

 これはルールが改正されたわけではなく、ルールを厳しく適用しているだけ。FIFAが目指す、ゴールが生まれやすい試合展開になっている。

 ドイツ、オランダ、フランス、コロンビア、チリといった、ボールを奪ったらすぐにゴールを目指すことを徹底しているチームと、単独でドリブル突破できるような個の力があるチームが結果を出しやすい傾向にある。実際、グループリーグ第2節終了時の平均得点は2.94で、前回南アフリカ大会の2.09を大きく上回っている。まさにFIFAの勝利と言えるだろう。

★大会日程やTV放送、最新情報をチェック!!
2014W杯ブラジル大会特設ページ
★全64試合の公式ダイジェスト動画を配信!!
2014W杯ブラジル大会動画ページ

TOP