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[総体]2014夏、注目チーム特集雑感:市立船橋GK志村滉、師弟で磨いた堅守の術

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平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技
注目校紹介雑感


 1度のビッグセーブは、まぐれに見える。1試合で何度も止めれば、たまたま当たりの日だったのだと思う。しかし、それをアベレージでやってのければ実力と言うほかない。市立船橋高GK志村滉は、プロ入りの可能性を持つハイレベルなGKだ。昨年の高校総体決勝でも神がかり的なスーパーセーブを連発したが、今季も勝負強さを発揮している。「ピンチは大好物」という発言も、単なるビッグマウスでは片づけられない。市立船橋の堅守が成り立つのは、崩れたはずの場面でも最後に立ちふさがる男がいるからだ。

 しかし、志村はヴィヴァイオ船橋に所属した中学生時代、2年時まではBチームの所属だったという。3年時も確固たる地位は気付けていなかったが、市立船橋の伊藤竜一GKコーチの目に留まった。伊藤コーチは、スカウトの基準を明確に持っている。「スカウトで重視するのは、サイズと運動能力。技術は変えていけるけど、サイズは変えられない。170センチなら1歩、2歩と動いて飛ばなければいけないが、180センチならじっと我慢してから倒れて止めることができる。その差は大きい。ギリギリまで待てれば、相手へのプレッシャーのかかり具合も変わる」と説明した。伊藤コーチは指導力に定評があり、3年前に高校選手権を優勝したときのGK積田景介(現駒澤大)は、チームメートから素人と思われるような技術レベルで入学したが、卒業時にはU-18日本代表候補の一人になっていた。

 伊藤コーチは、志村の成長ぶりについて「一番の特長は、ブレイクへの対応が早いこと。予測が早くて、飛び出していける。クロスへの対応は、入学時はそれほどでもなかったけど、1~2年ですごく成長した。常に正しいポジションを取れるようになったことで結果につながっている。2年になってからは、飛び出していけないと思ったときに、相手と正対して構えて止めることもできるようになった。その辺は、FC東京の権田(修一)選手みたい。両方できるのが大きいと思う」と評価する。前に出て止めるのが得意なGKは珍しくないが、今の志村は得意の飛び出しだけでなく、構えて待つこともできるのだ。志村自身も今季のはじめに「2年のときはポゼッションに関わることをテーマに臨もうと思っていたけど、シーズンの途中で、常に良いポジションを取れれば、大体のボールには反応できると感じるようになった。だから、今は立ち位置を特に注意している」と話していた。

 絶対的な守護神は、市立船橋のGKという同じ立場を知る師からの教えで成長を続けている。志村が伊藤コーチから言われて大事にしているのは「DFを動かすことも大事だけど、最後は自分の力で止められないとチームは勝てないぞ」という言葉だ。師弟で磨いてきたセービング術が、市立船橋の堅守を支えている。

(取材・文 平野貴也)
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