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[クラブユース選手権U-18]初参戦のJFAアカデミー福島が延長制して8強へ

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[7.28 日本クラブユース選手権決勝トーナメント1回戦 JFAアカデミー福島U18 1-0 大分U-18 宮城総合]

 夏のクラブユース日本一を決めるadidas CUP 2014 第38回日本クラブユース選手権(U-18)大会は28日に群馬県の各地で決勝トーナメント1回戦を行い、宮城総合の第2試合ではJFAアカデミー福島U18が延長戦の末に1-0で大分トリニータU-18を下してベスト8入りを決めた。JFAアカデミー福島は、今大会初出場。開幕前は中田康人監督が「トーナメント戦を経験させてあげたい」と第1目標を話していたが、グループリーグを全勝で突破すると、この日も熱戦を制して次の高みへと駒を進めた。

 我慢強さでじわりじわりと試合のペースを手繰り寄せた。なにせ、試合の立ち上がりは、何点取られるのかというほどに攻め立てられた。相手の出足は実に鋭かった。大分U-18は1分に右からの横パスを受けたFW吉平翼がドリブルシュートで決定機を演出。こぼれ球をMF宮地裕二郎が押し込みに行ったが、枠を外れた。4分にも吉平がドリブルシュート。さらに左CKをCB岩田智輝がシュートしてGKに弾かれたボールをまたも吉平が狙ったがブロックされた。

 JFAアカデミー福島にとっては中田監督が「前半は大分さんの圧力がすごくて、ボールを奪ってもつなげずに我慢するしかなかった。(相手の調子が良ければ)3点は取られていたね」と振り返ったように冷や汗もののシーンの連続だった。その後も、大分U-18の攻勢は続いた。ブラジルW杯の帯同メンバーだったMF坂井大将を中心とする5人の中盤は、いずれも攻守にわたってボールに絡む動きが速くて多い。ボランチのMF姫野宥弥は2人いるのかと思うほどどこにでも現れてボールを回収していた。JFAアカデミー福島は、19分に左からのアーリークロスを右MF堀大貴がヘディングで合わせるカウンター攻撃を見せたが、惜しくもGKに阻まれた。

 選手同士が激しく言い合いながら集中力を保って耐えていたJFAアカデミー福島は、後半に入ると徐々にペースをばん回していった。4分に高森大夢のFK、16分に左から押し込んで加賀山泰毅のシュート、19分には後半から出場したFW延祐太がシュートと立て続けにゴールを狙った。試合のペースはほぼ互角になり、20分を過ぎると両チームとも次々に交代カードを切って試合を決めに行った。それでも両軍の守備陣がよく耐え、ゴールはなかなか生まれなかった。大分U-18は41分に右からのクロスを坂井がヘディングで合わせる決定機があったが、シュートは枠を外れた。

 熱戦は90分では決着がつかず、延長戦に突入。ここで試合を決めたのは、後半途中で指揮官から「最後は3年生が仕事をしてこい」と送り出されたJFAアカデミー福島の切り札、草野侑己だった。左MFの位置に入っていたが、延長戦からはトップ下でフィニッシュワークを任された。延長前半8分、右CKからバイタルエリアで生まれたこぼれ球を飛鷹啓介が左にはたくと、草野が左足を一振り。「ボランチの選手がディフェンスに行ってくれて、こっちにボールが来るという予感みたいなものがあった。あとは、コースとかじゃなくて、力いっぱい」という豪快なシュートを突き刺し、勝負を分ける1点をもぎ取った。苦しい試合の大きな1点。得点時の気持ちを聞かれた中田監督は「こうですよ」とガッツポーズを繰り出した。決勝点を挙げた草野は「DFラインが頑張ってくれていたので、点が取れて良かった」と爽快な笑顔で振り返った。延長後半に入ると大分U-18はCB岩田を前線に上げてパワープレーを仕掛けたが、JFAアカデミー福島はCB金城ジャスティン俊樹、宇野能功が体を張って死守して1-0で逃げ切った。

 JFAアカデミー福島は、プレミアリーグEASTで5戦未勝利という苦しいスタートを強いられていたが、中田監督は「今季、この大会に入るまで無失点試合がなかった。でも、初戦の福岡U-18戦でそれができて、選手が守備に自信を持ち始めてきた」と大会を通じたチーム力の向上を感じていることを明かした。大分U-18は攻守に精力的で今大会の台風の目となり始めていたほどだったが、粘り強い我慢で勝機を手繰り寄せたJFAアカデミー福島の戦いぶりは見事だった。草野は「チームの雰囲気が良いので、優勝を狙いたい」と頂点まで勢いを持続させる気概を示した。JFAアカデミー福島は、30日に前橋総合運動公園で行われる準々決勝でG大阪ユースと対戦する。

[写真]延長前半8分、JFAアカデミー福島の草野が左足で決勝点

(取材・文 平野貴也)
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