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[総体]大会前半の天王山、東福岡が山梨学院との大一番制す!!

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[8.4 全国高校総体3回戦 山梨学院高 0-1 東福岡高 韮崎中央公園芝生広場]

 平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技3回戦が4日に行われ、開催地・山梨県第1代表の山梨学院高と今大会2試合で14得点をたたき出すなど優勝候補の筆頭に挙げられている東福岡高(福岡)との一戦は、U-18日本代表MF中島賢星主将(3年)の決勝ゴールによって東福岡が1-0で勝利。大一番を制した東福岡は6日の準々決勝で鹿児島実高(鹿児島)と戦う。

 今大会前半戦のハイライト、頂点への天王山とも言えるビッグマッチ。ともに優勝を目標に掲げる強豪校対決は、昨年の思いも込めて戦った東福岡が制した。東福岡は昨年、全国総体開催地・福岡県の第1代表として、有力な優勝候補として大会に臨みながら、滝川二高(兵庫)に0-1で敗れて初戦敗退。彼らは地元の大きな応援が力になる一方、その重圧がどれほど大きいものであるかも知っていた。中島が「去年、地元開催でシードだったんですけど、初戦で負けて凄く悔しい思いをしたので今年は絶対に同じ思いをしたくないし、きょうの山梨学院との試合は、去年地元開催で負けた悔しさを相手にも味あわせてやろうみたいな、みんなそういう話をしていた」と振り返ったように、この日、東福岡は昨年の悔しさを晴らす一戦として完全アウェーでの勝利に挑戦。その東福岡が技術の高さと力強さを見せた一方、終盤の苦しい時間帯も2年生GK脇野敦至のビッグセーブなどで耐えて、乗り越える強さも発揮して頂点へ一歩前進した。

 山梨学院は守備の柱である注目CB渡辺剛(3年)が前日の2回戦で退場処分を受けて出場停止。代わってCB窪田壮吾(3年)が最終ラインに入ったが、チーム全体の守備意識が高く、柱不在を感じさせない守りで東福岡の進攻を妨げる。非常にいい試合の入りを見せた山梨学院は16分にFW原拓人(3年)のスルーパスからMF田中翔真(3年)が決定的なシュート。これは飛び出した東福岡GK脇野のファインセーブに止められたものの、28分には原の左足ボレーがゴールを捉え、30分にも原の展開から右サイドを打開した田中を起点にチャンスを迎える。

 ただ東福岡は前評判通りの実力の高さで山梨学院ゴールへ迫っていく。特に余計なタッチをしないものの、確実に相手を刺すようなパス出しをする中島の存在と、右の“重戦車”増山朝陽(3年)の突破が脅威になった。6分に中島の好パスから左サイドを突いたMF赤木翼(3年)がラストパスを入れれば、10分には増山が右サイドで迫力十分の突破。そして12分にはSB堀吏規伸(3年)とのコンビで右サイドを崩した増山が、DFを振り切ってタッチライン際までえぐり、ラストパス。ゴール正面へ飛び込んだ赤木が決定的な右足シュートを放つ。

 これはGK古屋俊樹(3年)の好守に阻まれたものの、MF近藤大貴(3年)と中島中心に試合をコントロールした東福岡は23分にも中盤から仕掛けた中島がDFを揺さぶり、右足ミドル。そして35分には左SB末永巧(3年)のアーリークロスが相手左SBの頭上を越え、これをファーサイドで受けた増山が決定的な右足シュートを放った。

 1000人の観衆が見守る中、期待通りの熱戦が繰り広げられた大一番。スコアを動かしたのはスーパーゴールだった。後半3分、相手のクリアミスもあって波状攻撃を仕掛けた東福岡は、末永が左サイドから中央へ入れたボールをFW木藤舜介(3年)が落とすと、中島が小さな振りからシザースボレー気味に右足で打ち抜く。これがGKの指先を抜けて先制ゴール。「ただゴールを決めるというイメージだけで泥臭くは放ったので、あれはがむしゃらに打ちました」と難易度の高いシュートを泥臭く決めたエースの一撃によって、赤いユニフォームの雄叫びが会場に響き渡った。

 試合の軸を大きく傾けた東福岡が一気に山梨学院を飲み込もうとする。中島がバイタルエリアから前向きなパス、シュートを選択する回数が増え、近藤やMF中村健人(2年)がPA近くで決定機に絡んでくる。そして14分には右CKからCB小笠原佳祐(3年)がクロスバー直撃のヘディングシュート。山梨学院は大きなクリアで何とか相手の圧力をかわすが、それをCB加奈川凌矢(3年)と小笠原に跳ね返され、拾われて再び攻められるシーンの連続。ただ、崩壊しかねない状況でも1点差のまま凌いで望みをつないでいた山梨学院が終盤、牙を剥く。

 後半開始から投入されていたMF伊藤大祐(3年)と同13分に送りこまれたFW宇佐美佑樹(3年)が逃げ切りを図る東福岡を苦しめた。接触プレーを怖れずにがむしゃらに局面へ飛び込み、また果敢に仕掛ける宇佐美と、ルーズボールをチャンスに変える“スピードスター”伊藤。17分には左サイドから一気にPAへ切れ込んだ宇佐美が決定的な左足シュートを放ったほか、DF1人をドリブルで外してくる2人の攻撃力が終盤に効果を発揮していた。流れが地元チームへと傾く中で迎えた32分、山梨学院はGK古屋のパントキックが前線へ流れると、抜群のスピードで反応した伊藤が左サイドからクロス。PA中央で競った原がファウルを受け、PKを獲得する。キッカーは2回戦でもPKを決めているMF大場祐樹(3年)。右足シュートが左隅を捉えたが、これをGK脇野がビッグセーブでゴール外へはじき出す。興奮した表情で駆け寄る先輩たちと次々と抱擁する2年生GK。山梨学院は35分にもこぼれ球を拾った伊藤が左サイドからカットインして決定的な右足シュートを放ったが、これも東福岡の厚い壁に阻まれると、その数分後に地元チームを応援する会場に沈黙の瞬間が訪れた。

 中島が「立ち上がりとか決めるべきところがあったんですけど、あそこで決めればあとが楽になる。そこはみんなと話し合っていかなければいけない」と課題を口にし、森重潤也監督も「対戦するチームが叩き潰そうとここ(東福岡戦)にかけてくるゲームが多いと思う。そういうゲームを上を見ずにひとつずつこなしていかないと先は見えてこない。選手たちも我々スタッフも気を引き締めてやっていきたいなと思っています。(周囲は高く評価してくれるが)もっと質とかスピードとかタイミングとかまだまだ合わせられると思うし、もうひとつこういうゲームでも決定機をつくり出せないと上には到達できない」と語った。準々決勝は中島が累積警告で出場停止。その中で決定機の数を増やして、チャンスを確実に決め、相手を上回ることができるか。大一番を乗り越えたが、ここからの3試合が頂点への本当の戦い。東福岡はまず鹿児島実との九州勢対決突破に全力を尽くす。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
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