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[総体]“ユース教授”安藤隆人氏による大会総括「番狂わせが起きにくい大会だった」

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平成26年度全国高校総体「煌(きら)めく青春 南関東総体2014」サッカー競技

 東福岡高(福岡)が実力通りと言える勝ち上がりで、17年ぶりの全国高校総体制覇を達成した。今大会を総括すると、例年よりも『順当すぎる大会』だったと言えよう。

 ここ数年、選手権にも言えることだが、ベスト8、もしくはベスト4、時には決勝に至るまで、『意外なチーム』が勝ち上がってくることが増えてきた。それはJクラブユースの台頭や地域格差の是正などにより、戦力分散が一気に加速し、どのチームにもチャンスがある流れになってきた。要するにかつての国見高(長崎)や市立船橋高(千葉)のような、絶対的な存在が無くなり、名門校が新興勢力に敗れるなどの番狂わせや、全国大会常連だが、なかなか上位に食い込めなかったチームが、一気に頂点に立ったりするなど、年々予想をするのが難しくなっていた。

 だが、今大会はベスト8に長崎海星高(長崎)が初めて食い込んだ以外は、大津高(熊本)、星稜高(石川)、前橋育英高(群馬)、鹿児島実高(鹿児島)、東福岡高、青森山田高(青森)、広島皆実高(広島)と、優勝候補に挙げられるような強豪校が残った。しかも、ベスト8のうち、大津と長崎海星以外は全国制覇経験チームで、長崎海星以外はW杯選手を輩出している。準決勝に至っては、大津対前橋育英、東福岡対青森山田。そこには毎年恒例の“サプライズ”はなかった。

 その要因を探ると、サッカーとしての個と組織がしっかりとしたチームが勝ち上がったように見える。リーグ戦よりトーナメント戦の方が、番狂わせが起きやすい。それはトーナメントは勢いがモノを言うし、高校サッカーにおいては、総体が35分ハーフ、選手権が40分ハーフと短いため、『守りきれやすい』という現象が起きる。

 だが、プリンスリーグ、プレミアリーグが浸透し、両方を戦うことに慣れてきた強豪校が、うまくリーグ戦用とトーナメント用の戦い方を分けて戦えるようになってきた。特に大津、星稜、前橋育英、青森山田、広島皆実はここが非常にうまかった。ブロックを引かれても、冷静にパスでつなぎ、それぞれFW一美和成(大津)、FW森山泰希(星稜)、MF渡邊凌磨(前橋育英)、FW丹代藍人(青森山田)、MF横路翔太(広島皆実)と言った、能力の高い個が決定的な仕事をする。そして優勝した東福岡はすべてを凌駕する、圧倒的な力を持っていた。なかなか実力的に劣るチームが、『付け入る隙』を持ちにくかった。

 そう考えると、非常に番狂わせが起きにくい大会だった。注目すべきはこの流れが、冬の高校選手権にも続くかということ。選手権も多くの波乱が起こるが、これには『選手権の魔物』という独特の雰囲気がもたらす魔力もある。それをも抑え込んで、強豪校がチームとしての強さを作り上げて来るのか。今回、山梨県で開催された全国総体を総括すると、選手権の注目点まで浮かび上がってきた。今年の選手権は『山梨現象化』するのか。今から楽しみだ。

[写真]安藤氏は「東福岡はすべてを凌駕する、圧倒的な力を持っていた」と語る


執筆者紹介:安藤隆人
 日本列島、世界各国を放浪するサッカージャーナリスト。育成年代を精力的に取材する“ユース教授”。主な著書は『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、『高校サッカー聖地物語』(講談社)など

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