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[総理大臣杯]PK戦で関西学院大撃破!流通経済大が2連覇王手!!

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[8.15 総理大臣杯全日本大学トーナメント準決勝 流通経済大 0-0(PK4-3)関西学院大 キンチョウ]

 夏の大学日本一を争う第38回総理大臣杯の準決勝がキンチョウスタジアムで行われ、流通経済大関西学院大が対戦した。

 スタンドで観戦しているだけでも汗が吹き出てくる暑さの中で行なわれた前半、ボール支配率で上回ったのは関学。最終ラインから中盤でボールを動かす中でチャンスを作ろうとするが、なかなか決定機を作り出せない。前線にいいパスを供給できず、ロングフィードも相手DFに対応されて、自慢の攻撃陣が持ち味を発揮できずにいた。対する流経大はハーフライン付近から守備ブロックを形成。そこに入ってくるボールに対して厳しいチェックで相手に自由を与えず、ボールを奪えば前線のFWジャーメイン良らを生かす早い攻撃でゴールに迫る。ボールを持つ時間は少なかったが、5分に右からのクロスをMF江坂任がヘッドで合わせれば、25分には左サイド深くまでえぐった江坂からの折り返しをMF森保圭梧がシュート。35分には森保のCKをジャーメインがヘッドで合わせるなど、シュートは枠を捕らえなかったが、チャンスの数では上回ってハーフタイムを迎えている。

 後半も同様の展開で幕を開けるが、次第に関学がゴールに迫り始める。15分には左サイドからMF小幡元輝のクロスをFW呉屋大翔がヘッド。21分にも右サイドから呉屋に送ったクロスのクリアを拾ったMF小林成豪がミドルシュートを放つ。対する流経大もカウンターからチャンスを迎えるなど、前半よりも動きのある45分間となったが、守備陣の奮闘もあってゴールが遠い。両ベンチも選手交代やポジション変更など采配をみせるも、スコアは動かずに10分ハーフの延長戦に突入する。

 太陽に照らされた前後半から一転、延長戦は激しい雨の中での戦いとなった。関学は交代出場のMF森俊介が右サイドで突破力を発揮するが、相手のカバーリングも早く決定的な場面までは至らない。流経大は延長後半4分に右SB湯澤聖人のクロスをファーサイドで途中出場のMF渡邉新太がヘッドでゴールネットを揺らすも、これは直前のファールを取られてノーゴールの判定。両者とも最後まで足を動かし、集中力も切らさずに戦いぬいたが、勝敗の行方はPK戦にゆだねられた。

 先攻の関学の1番手は呉屋。迎え打つのは延長戦終了間際に投入されたGK中島宏海。呉屋が放ったシュートは「その場の雰囲気と、相手の動きをみた」という中島に防がれてしまう。沸きたつ流経大イレブンとベンチ、そして応援団。その後は両チームの選手が成功していき、関学の5人目はキャプテンのDF福森直也。決めればGK村下将梧に命運を託せる状況で放ったシュートは無常にもバーを越えていき、この瞬間、流経大の決勝進出が決まった。

 敗れた関学はエース呉屋が押さえ込まれ、タレントそろいの中盤も輝く場面は少なかった。後半途中から小林をボランチに下げて攻撃の組み立てに絡ませるなど成山一郎監督も手は打ったが、思うように決定機をつくれずにPK戦に持ち込まれている。福森は「呉屋に2、3人のマークが付く中で、そこで呉屋をオトリに使って周りがどう動くのかとか、そういったところができなかった」とシュート5本と攻め切れなかった攻撃の反省点を口にしている。110分間の中で負けはしなかったが「あと一歩、何かが足りなかった。この悔しさを糧にしてリーグ戦を戦って、より強いチームになりたい」(福森)と再開後のリーグ戦、そして冬のインカレでの雪辱を誓った。

 一方の流経大・中野雄二監督は「中島は関東予選の1、2回戦のPK戦でも止めてくれた」とPKストッパーとして控えGKを投入した狙いを明かした。プレッシャーの掛かる中での投入となった中島も「自分を信じて起用してくれた。止めるイメージだけを持ってピッチに入った」と自身の心理状況を振り返っている。PK戦での立役者となった中島だが、延長戦を含む110分間を無失点で乗り切った守備陣の健闘が決勝進出への要因だったのは間違いない。この日は相手のエース呉屋を徹底マーク。DF陣が呉屋に集中する分、その前のスペースへのケアとしてボランチに掛かる負担も大きかったが、中盤の底を務めた富田は「相手の中盤に上手い選手が揃っているのはわかっていたけど、古波津と2人でバランスを取りながらやれた。『中盤の“ヘソ”のところに、どちらか一人が必ずいるようにしよう』と話していた」とバイタルエリアを空けなかったことを試合のポイントの一つにあげている。耐える時間帯が長かったが、自分たちの戦い方をぶれることなく貫いての勝ち上がりは見事だ。

この試合で警告を受けたジャーメインと古波津が累積警告による出場停止によって決勝戦に出場できないというダメージも負ったが、「30人の枠に登録している選手で、ここまで応援団に回っている選手もいる。明日の練習には彼らを参加させて、状態次第ではメンバーに入れるかも知れない」(中野監督)と総力戦の様相を呈してきた。さらに、この日は社会人リーグに参加している流通経済大学FCとクラブドラゴンズの選手や運営補助を務める部員が公式戦の為に関東へ帰っているが、決勝には80人の部員が観光バスを借り切って再び大阪へやってくる。ピッチ上で仲間を鼓舞し続けたキャプテンの左SB鈴木翔登は「家族や仲間、会場に来れない人の分まで戦いたい。この環境でサッカーをやらせてもらっている事への感謝の気持ちを表すのは優勝しかない」と言い切った。様々な思いを胸に秘め、仲間たちの大声援を受けて、流経大は大会2連覇をつかむべく決勝戦に挑む。

[写真]流通経済大GK中島がPKを止めて会心の笑み

(取材・文 雨堤俊祐)
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