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[AFC U-16選手権]U-17W杯切符懸けた戦いまであと2週間、U-16日本代表候補が長野合宿終了

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 U-17W杯チリ2015の出場権4枠を懸けたAFC U-16選手権タイ2014(9月6日~20日、タイ)に臨むU-16日本代表候補が23日、6日間の長野合宿最終日のトレーニングを行った。午前9時過ぎから始まったトレーニングには別メニュー組4名を除く19名とサポートメンバー2名の計21名が参加。2チームに分かれて準備を開始した選手たちは、その後ゲーム形式の10対10を25分間3本行い、最後は罰ゲームをかけたランニングメニューでFW斧澤隼輝とMF菅大輝が抜群の走力を披露するなど約3時間みっちりと汗を流した。

 5大会連続のU-17W杯出場へ向けたラストスパート。標高1,300m、夏合宿のメッカとして知られる菅平高原での合宿でU-16代表はチームビルディング、心肺機能を上げる取り組みを中心に行ってきた。チームが「2つ以上のポジションができる」「どんな状況になっても平常心を崩さずコンスタントに力を発揮できる」「自分の特徴を知り、弱点を克服できる」と判断したW杯メンバー最終候補のメンバーたち。この日の10対10では、所属チームで主にトップ下を担うMF渡辺皓太がCBに入り、斧澤や阿部雅志堂安律ら攻撃的な選手がSBを務めるなど、それぞれが“本職”以外のポジションでも奮闘し、FW小柏剛がインターセプトから、FW半谷陽介がカウンターからそれぞれゴールを破ったほか、3本目でCBに入り好守と好フィードを見せたMF田中碧、ポジショニング良くボールに絡んだ菅らそれぞれが特長を発揮しようとしていた。

 守備面では全体が非常にコンパクトな守り。これについては吉武博文監督も再三「素晴らしい」と口にしていたが、「ちゃんと守られた時にやれるか。攻撃の方が相手を見れないし、パターンになっちゃう」という攻撃面に関してはチームが目指す相手を見た攻撃をすることができず、好機を見落とし、パターン化したパスの連続で逆に相手のプレッシャーに追い込まれてしまう。先輩たちは11、13年のU-17W杯においてそのポゼッションで世界を驚かせてきたが、この日はまだ選手間の役割分担がはっきりとできていない状況。スタッフ陣からは「形じゃないんだよ、相手を見ろ!」「ボールを見るな!相手を見ろ!」など相手の守りを見て攻めるという指示が飛んでいたが、相手を押し下げたいシーンで選手間の意図が合わなかったり、両翼を広く使って攻めて相手を間延びさせているのに、自分たちの距離感も広がってしまい、攻撃でミスが生まれるなど狙いとする崩しをすることができなかった。2本目以降は吉武監督が流れを止めて、意図やポジショニングの確認をするようなシーンが何度も見られた。

 相手を見ることを繰り返し口にしてきた吉武監督は「相手を見るというところは課題なので1日、2日ではできるようにはならないなと。でも諦める訳にはいかないので、そこに刺激を与えながら、あの最終予選のピリピリしている雰囲気の中で彼らができるか。練習でできていても試合でできなかったら意味がないので、1回でも、2回でも自分で相手を見て、意図を読んで、自分たちのやりたいことが意図的にたくさんできればいい」。またU-16代表はこれまでの試合の中で「雲行きが怪しい」や「我慢の時間帯」など試合の大局観を見ることができずに痛い失点を喫してきた。指揮官が「(日本は)大人でもできない。この子たちの課題でもあるし、日本全体の課題だと思っている」と注意する試合の流れを読む力。4月のイタリア遠征でチリに逆転負けし、アゼルバイジャンに追いつかれてドロー。6月のアゼルバイジャン遠征ではグルジアとウズベキスタンに2-0から追いつかれ、その点は7月のタイ遠征でも課題となっている。その点にも最大限の注意を払いながら、自分たちのやってきたことを表現して世界切符を掴み、最大6試合を経験して自分たちのサッカーが世界相手にできるのかを知る。

 吉武監督は今回の合宿を総括し、「身も心も準備するという点では・・・・・・高地で心肺機能を鍛えるという面では成果は上がっていると思う。でも心を整えてという面や、ピッチでのパフォーマンスを上げるという点では自分としては6割、7割かなと。もうちょっと行ってほしいというのがある。でも、(準備する時間が)もう1週間ありますので直前で修正できたらいい」と語り、アジアの戦いへ向けて「1試合1試合自分たちのベストを尽くしていって、1試合目よりも2試合目、2試合目よりも3試合目の方がパフォーマンスが上がっていくというようにしたい。その都度90分が終わったらピッチで倒れ込むくらいピッチの中で120パーセント出してほしい。やり方についてはいろいろありますが、相手陣内の時間を少しでも長くしたい。パーセントはあまり気にしていないですが、相手が強くても半分以上、45分以上は持ちたい」。香港、中国、オーストラリアと戦う1次ラウンドを突破し、世界切符を懸けた準々決勝では開催国のタイやライバル・韓国といったチームとの対戦が予想される組み合わせ。「世界で舞う」ことを目指す98年生まれ以降の世代、通称98JAPANが緊迫した戦いの中でどのようなサッカーを見せるのか注目だ。

(取材・文 吉田太郎)

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