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“アギーレ色”を出したサプライズ選考…初陣に初選出5人

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 初陣から“アギーレ色”を出した選考となった。日本代表のハビエル・アギーレ監督は28日、都内で記者会見を行い、9月5日のウルグアイ戦(札幌ド)、同9日のベネズエラ戦(日産ス)に向けた日本代表メンバー23人を発表。FW皆川佑介(広島)、FW武藤嘉紀(F東京)、MF森岡亮太(神戸)、DF坂井達弥(鳥栖)、DF松原健(新潟)の5人が初選出され、候補合宿を除けばGK林彰洋(鳥栖)も初の日本代表招集となった。

 ブラジルW杯メンバーで引き続き招集されたのは12人。半数近くを入れ替え、「過去のリストを見て選んだわけではない」と、来日から2週間余りで自ら選考を主導した。「23人がゼロからのスタート」と強調する指揮官にとっては、23人全員が“初選出”となる。

「一人の話をしたら23人の話をしないといけない」。個別の選手に言及することは避けたが、皆川、武藤のFW2人については「2人とも、他の選手のケガによって招集される形になった」と、ケガの影響で招集を見送ったFW香川真司(マンチェスター・U)、FW原口元気(ヘルタ・ベルリン)に代わる選出であることを認め、「若くて、攻撃的で、ハングリーな選手なので、代表に合っていると思う」と期待を寄せた。

 F東京U-18出身の武藤は慶應義塾大に進学し、大学3年時の昨年7月に特別指定選手としてF東京でJリーグデビュー。今季は在学中のままプロ契約を締結し、開幕戦から先発出場した。“現役大学生Jリーガー”は今季すでにJ1で20試合に出場し、7得点。23日の浦和戦ではアギーレ監督が視察する前で2ゴールを挙げるなど、圧巻のパフォーマンスを見せた。

 抜群のスピードと切れ味鋭いドリブルでの打開力が魅力の武藤に対し、皆川は186cmの恵まれた体格が売りのストライカータイプだ。前橋育英高から中央大に進学し、今季、広島に新加入。これまでにJ1で7試合に出場し、2ゴールを記録しているが、先発は23日のC大阪戦が初めてだった。長身を生かしたポストプレーだけでなく、左右両足ともに足下のテクニックは確かで、前線からのハードワークも持ち味の一つだ。

 森岡は、所属する神戸がJ1に復帰した今季、トップ下の位置で才能を開花させつつある「10番」タイプだ。確かなテクニックと左右両足のキックには定評があり、鋭いスルーパスでFWマルキーニョスやFWペドロ・ジュニオールの得点機を演出。4-3-3を基本布陣に掲げるアギーレジャパンに純粋なトップ下のポジションはないだけに、アギーレ監督の目には、さらに引き出せるポテンシャルがあると映ったのかもしれない。

 右サイドバックを主戦場とし、積極的な攻撃参加と正確なクロスが持ち味の松原は各年代別日本代表の常連で、09年のU-17W杯にも出場。本来ならU-21世代で、U-21日本代表は9月に韓国で開催されるアジア競技大会に出場するが、Jリーグの各チームから選考できるのは一人ずつという制限があったため、FW鈴木武蔵(新潟)との兼ね合いで選出されなかった。その結果がA代表初選出。「驚きの一言です」という飛び級招集になった。

「ビックリしたというのが最初の気持ち」という坂井は、全国的にはほぼ無名の存在と言えるだろう。鹿屋体育大在学中の12年に特別指定選手として鳥栖でJリーグデビューを果たし、翌13年に鳥栖に入団。183cmの長身を生かした空中戦の強さとロングフィードが持ち味のレフティーで、ルーキーイヤーの昨季は14試合に出場したが、今季はこれまで4試合にしか出場していない。負傷もあり、23日の大宮戦で約4か月ぶりの復帰を果たしたばかり。まさにサプライズ選出だった。

 代表チームに誇りを持つこと、チームへの献身性を示すことを選手に求めるアギーレ監督。「1試合90分の中で、インプレーの時間は45~48分程度しかない。ピッチには22人立っており、平均すると、一人がボールを持っている時間は2分しかない」。そう語り出した指揮官は「つまり一人の選手は88分間、ボールを持っていない。その88分の中で選手が何をしているのか。チームに対するコミットメント、責任、チームのことを考えるという意味で、私はそこを見ている」。守備への貢献度、運動量、オフザボールでの動き……。「走らない選手は呼ばれない」。指揮官の基準は明確だ。

(取材・文 西山紘平)

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