[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.31 高円宮杯プリンスリーグ関東第11節 横浜FMユース 2-2 山梨学院高 日産フィールド小机]

「GKは大きかった。もう2、3点行かれてもおかしくなかった」。試合終了間際の同点ゴールで勝ち点1を掴んだ山梨学院高の吉永一明監督は、GK古屋俊樹(3年)のプレーを讃えた。この日、山梨学院はタイミング良く背後へ抜け出してくる横浜FMユースの攻撃に苦戦。前半から何度もシュートシーンをつくられた。相手のミスに助けられた部分もあったが、大きかったのは古屋の存在だ。175cmと決して長身ではないが、「(自分は)小っちゃい分ステップが入るので、シュートやクロスの時にステップを踏んでいいポジションをとることを意識しています」というGKは細かいポジショニング、体勢の修正から最善の守り。好反応で決定的なシュートを防いだほか、PAから大きく飛び出してディフェンスライン背後への攻撃をケアするなど非常に集中した守りを続けていた。

　特に光ったのが、後半開始20秒に守備陣が攻略されて奪われた2失点目以降の守りだ。がっくりきてもおかしくないような展開だったが、古屋は崩れない。「自分が捨てたら勝てない。自分は信じるしかない」。自分が集中力を欠けば、チームの守りも乱れる。だからこそ誰より早く切り替え、その後得点を与えないことに集中した。そして押し込まれる展開の中で踏ん張り続けたことが味方の同点ゴールを呼んだ。「絶対に1点か2点取れると思っていたので、最低でも2失点でおさえようと切り替えてやっていた。そういう意味では同点で終わったことは良かったと思います」

　崩れないGK。これは古屋が意識している部分だ。全国高校総体3回戦で山梨学院は東福岡高に0-1で惜敗。後半開始直後に相手エース中島賢星のスーパーゴールによって失点してしまったが、1、2回戦で計14得点をたたき出していた東福岡にその後得点を許さなかった。そして試合終盤に味方はPK獲得。これを止められて追いつくことはできなかったが、古屋を中心とした守りが確実に勝機をもたらしていた。「あの一発を止めていればというのがあったんですけど、そこは(チームメートが得点を)取ってくれると思っていたので、2点目を取られないことを意識していました。メンタルの部分なんですけど、こういう時に何ができるかというのは大事にしようと意識している」。その姿勢がこの横浜FM戦では勝ち点獲得に繋がった。

　山梨学院のGKのポジションからは日本高校選抜選手や年代別の日本代表選手、Jリーガーも生まれている。その中で175cmのGKは努力によって指揮官が「全国レベル」と信頼するGKに成長した。「小っちゃくて、ハンデな部分が多いので、誰よりもグラウンドに残って練習しようと意識してやっています。大体全体練習は(午後)6時半くらいには終わるんですけど、8時半とか9時くらいまで筋トレしたり、自分のストロングポイントを伸ばすという事をやっています」。憧れは柏レイソルのGK菅野孝憲だ。180cm未満の身長ながらも強豪・柏の正守護神を務めて続けている菅野。「特にポジショニングがいいのでそこは良く見て参考にしています」という古屋はその存在に少しでも近づくことができるように努力を続ける。

　この日「個人としては止めれたシュートもあったんですけど、もう少し止められたんじゃないかとか、流れを呼べたんじゃないかと思うと、自分の中じゃ全然ダメだったと思います」と反省した古屋。選手権日本一、プリンスリーグでの上位進出へ向けてチームのために、自分がやるべきことを追及する。

(取材・文　吉田太郎)