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[関東1部]“めったにないチャンス”前期2位ターンの順天堂大が中央大に4発快勝!

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[9.6 関東大学リーグ1部第12節 順天堂大 4-0 中央大 味フィ西]

 JR東日本カップ2014第88回関東大学サッカーリーグ戦1部は6日、後期の戦いが開幕。第12節1日目が行われ、2位の順天堂大がMF新里涼(1年=横浜FMユース)のハットトリックの活躍などによって11位・中央大に4-0で快勝した。

 13年シーズンが8位で12年が10位、そして11年が7位、10年は6位。そして09年シーズンは2部にいた。リーグ最少の部員52人で戦う順大の前期2位ターンは前ジュビロ磐田のGK大畑拓也主将(4年=磐田ユース)が「この順位にいるのは15年ぶりくらい。(監督の吉村)先生からも『オマエら、こんなチャンスめったにないんやぞ』と言われている。ボクが入学してからこんな順位にいたことはなかったですし、せっかく自分たちの力で何とかしていけるというこのチャンスをみすみす逃すのはもったいない」と気合を入れ直すほど、“めったになかった”躍進だ。推薦入学枠は6と特別な強化ができる訳ではなく、教員免許取得などを目指すため学業で手を抜く選手もひとりもいない。選手層の厚さ、個々の実力を比べると1部のライバルたちに劣る。それでも、昨年のユニバーシアードで日本代表の指揮を執った吉村雅文監督が「前期つくってきた土台、守から攻だといったところが後期ベースにありながら、もうひとつ上を目指していけるのかというのが目標。下手っぴというのは分かっているので、運動量を増やしながらこうやって戦えることが証明できたら嬉しい」という順大が、後期開幕戦で中大に4-0で完勝した。

「2位で相手は自分たちのことを格上と思ってくれるかと思うんですけど、ボクらは相手を格上と思ってやる」。大畑がそう誓うように、2位に位置しているとはいえ、順大が相手をリスペクトし、運動量や切り替えの速さで負けないという姿勢で戦うことに変わりはない。5分にインターセプトから全日本大学選抜MF長谷川竜也(3年=静岡学園高)が左足シュートを放つと、6分にも出足速くルーズボールをおさめた右SB吉永哲也(3年=千葉U-18)がPAへパスを供給する。さらに9分にも右スローインからMF青木翼(4年=清水商高)が素早くシュートへ持ち込んだ。味方を信じて迷わず走ること、ボールに対して高い集中力を持ち続けること、相手よりも先に一歩を踏み出すことなど、前半は順大がわずかな差の積み重ねで中大を上回っているように映った。

 中大は試合前のトレーニングで負傷していたFW小形聡司(3年=桐蔭学園高)が前半18分に交代するアクシデント。ただ代わって投入されたFW古橋匡梧(2年=興國高)がファーストプレーで左サイドを破って決定機を演出すると、ファーサイドのエースFW砂川優太郎(4年=広島ユース)が合わせる。ただ順大はこれをDFがしぶとくクリア。逆に長谷川竜が個人でシュートまで持ち込み、ヒールキックでラストパスを出すなど会場を沸かせる順大は23分、中央からの崩しで一度ボールを失いながらも素早いディフェンスでクリアさせず、逆にFKを獲得する。そしてゴール正面右寄りの位置から1年生MF新里が右足を振り抜くと、シュートはゴール右上隅を捉えて先制点となった。

 その後も順大は高い位置でのインターセプトからチャンスを連発。前線で馬力十分の突破、軸の動かないボールキープなど身体を張ったプレーを見せる全日本大学FW佐野翼(2年=清水商高)や高い技術と頭脳的な動きでボールをおさめる長谷川、新里、MF室伏航(1年=市立船橋高)の2列目を起点に鋭いアタックを繰り返す。35分には敵陣でのインターセプトから佐野がDFを振り切って前進し、スルーパス。新里の右足シュートはGK前田将(4年=常葉学園橘高)に阻まれたが、直後の39分に2点目を奪った。再び中央でのインターセプトから前を向いた長谷川竜が一気にボールを運んでスルーパス。これはDFをかすめてやや流れたが、左中間でリターンを受けた長谷川竜が素早く中央へ折り返すと、これに走りこんだ室伏が1タッチでゴールへ沈めた。

 中大はカウンターの起点となるパスなど、通れば流れを変えられそうなボールをMF長谷川涼太(4年=八千代高)や佐野をはじめ、献身的に走る順大にカットされるなど波に乗ることができない。前半終了間際にMF渡辺大斗(4年=横浜FMユース)の巧みなターンから迎えたチャンスもシュートまで持ち込むことができなかった。逆にいい守備からチャンスの数を増やし、それが得点につながる順大は後半開始直後に長谷川竜がクロスバー直撃の右足ミドルを放つと、3分には長谷川涼とのコンビから新里が右足で追加点を奪った。

 この後中大も意地を見せて反撃する。MF三島頌平(1年=帝京大可児高)やMF飯干雄斗(2年=JFAアカデミー福島U18)がフリーでボールを受ける回数が増え、ショートパスと砂川や古橋の突破からチャンスを連発する。ただ13分には右サイドを砂川が深くえぐるが、FW矢島輝一(1年=F東京U-18)のシュートはゴール右。13分には古橋が抜群のスピードで左サイドを抜け出したが、このシーンもシュートが枠を捉えることができなかった。32分には混戦から三島が右足を振り抜いたが、強烈な一撃は枠外へ外れた。順大は完全に防戦一方。中大は完全に相手を押し込み、1点奪い返せば一気に相手を飲み込めそうな勢いがあった。ただ全日本大学選抜CB新井一耀(3年=清水商高)とJ注目のCB谷奥健四郎(4年=四日市中央工高)中心に順大のゴール前での守りは堅く、確実にボールを跳ね返して相手の攻撃を立ち切っていく。ここで得点できなかった中大に対し、逆に順大は36分、室伏とのワンツーから新里がダメ押しの4点目。これで勝負あった。

 前期の好調が後期も持続されるのか注目していただろう他大学に、インパクトを与える順大の4-0勝利。試合後の順大のロッカールームでは「これで他チームが『順大やばい』とか言うんだろうな。(実際)やばくないのにな!」という声も出ていたという。彼らには自分たちの力を理解しているからこその強さがある。ただその強さも夏は揺らいでいたという。練習試合では5点、8点と取られ、高校生相手の試合でも失点が続いていた。選手たちには「でも奪ってから速くという狙いでできている」という満足感があったようだ。それを開幕直前に指揮官から厳しく指摘され、選手たちは全員で前期の良かった試合と直近の練習試合を映像で比較。そこで「この感覚じゃダメだよね、となった」(大畑)。その後2部チームとの練習試合で感覚を取り戻してきた。

 それでも吉村監督やスタッフたちから「オマエら全然やからな」と叱責され、上位常連から今年11位に沈む中大との試合前には「(中大が)降格やばいぞと言われて(必死で)来るんやから、オマエら勝てる要素ひとつもないぞ」と締められていたという。その中でおさめた快勝。ただ特に後半は意図的な守備ができていなかった。珍しく大量得点を奪ったことで目立つことはなかったが、守備面に課題を残す試合だった。大畑も「意図的に奪えたかというとできなかった。改善するところはたくさんあった」と反省する。この後の4週間は新井と青木が教育実習のために不在。主力2人を欠く緊張感の中で他の選手たちが成長し、優勝争いに食いついていくことができるか。“めったにないチャンス”をものにするため、順大は全員がやるべきことを徹底する。

(取材・文 吉田太郎)

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