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[プレミアリーグEAST]「止められたはず」のシュートが成長させたJ注目守護神

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[9.7 高円宮杯プレミアリーグEAST第12節 市立船橋高 1-2 青森山田高 船橋市法典公園(グラスポ)球技場]

 高校世代を代表するGKが、昨年の悔しさも込めて残り数か月となった高校生活に全力を尽くす。市立船橋高の日本高校選抜GK志村滉(3年)は昨年の全国高校総体優勝GK。夏の日本一となり、プレミアリーグ昇格を果たすなど名門の歴史の中でもトップクラスの強さを誇ったチームのゴールを守り、そのビッグセーブで数々の勝利をもたらしてきた。そして今年、複数のJクラブが注目してきた高校ナンバー1守護神は、すでにプロ入りが決定的な状況になってきている。

 この日はその実力の高さを見せていたものの、2失点で敗れた。「アップの時点から、ウチより青森山田の方が気張ってやっているなという感じがありました」という試合開始直後に相手の勢いを受けてしまい、右CKから先制点を奪われると、40分にも失点。至近距離からのヘディングシュートを抜群の反応でセーブした志村だったが、こぼれ球をゴールへ叩き込まれてしまう。「一発でコーナーへ弾けなかったのも、ポジショニングがズレていたり、反応も一瞬遅れたりしたからだと思います。セカンドも詰めるのがちょっと遅れてニアを抜かれた。強いて言えば、セカンドで味方に来て欲しかったですけど、あそこは自分で何とか打開できたかなと思います」と悔しがっていた。後半、相手のサインプレーからピンチを迎えたものの、至近距離からのシュートに対してコースを消して対応するなど追加点は許さず。ただ、2点目は「止めることができた」と思うだけに悔しさ募る敗戦だった。

 この日も1本あったが、「止められたはず」のシュートが自分を成長させるきっかけとなっている。志村が「一番大きい」と振り返るのが1月の高校選手権準々決勝。優勝候補筆頭として頂点への進撃をしていた市立船橋だったが、京都橘高のFW小屋松知哉(現名古屋)に2ゴールを許して0-2で敗れてしまう。志村にとって特に悔いが残っているのは左サイドからファーサイドに決められた1点目だ。「1失点目に関しては止められたと。詰めて、シュート打たれるときも構え切れていなくて、ちょっと遅れてという感じだった。(周囲には指摘されなかったが)細かいところが重要。あの試合は『自分で負けた』と思っています。選手権でああいうプレーして、出れていない選手たちに申し訳なかった」という。心のどこかにあった優勝できるという自信は見事に打ち砕かれた。「あの2失点をしてから、もう一回サッカーに対しての向き合い方というか、練習に対する意識も変えてもっともっとやらないと、と思った。選手権の全国優勝は簡単にはできないと思い知らされたので、今年は全員抜かれても最後は自分が止めるという意識でやりたいですね。今年のチームは自分が止めないと、得点力もそんなにある訳ではないので勝てない。だから、もっと責任感を持った方がいい」と力を込めた。

 京都入りしたDF磐瀬剛や現明治大のDF柴戸海が「勝手に守ってくれた」昨年に比べて今年は個々の守備力が落ちる。だからこそより頭を使って、集中して、危険を未然に消すことを心がけている。「去年とは戦術も、上手さとかも全く違いますけれど強さ、粘り強さはあるのかなと思う。チーム全体で締めて守ろうとすれば、ほとんどのところは守れている。気が緩むと防ぎきれずに失点してしまうことがあるので改善したい。去年あれだけ結果が出ていた分、今年自分たちの代で何も結果が出ないのは癪なので(微笑)。選手権で優勝して(磐瀬)剛さんたちに、『剛さんたちの上に行けましたよ』と言いたいですね。個人としては(どの試合も無失点で)『アイツがいたら入らないな』と言わせるようにしたいです」。悔しさを力に、大事な一本を止められることを目指してきた。まだまだ課題もあるが、克服して、1年間の成果を選手権日本一で示す。

(取材・文 吉田太郎)

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