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[AFC U-16選手権]冨安「この経験があったからこそ成長したんだと、後々言えるようにしたい」

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[9.14 AFC U-16選手権準々決勝 U-16日本代表 0-2 U-16韓国代表 ラジャマンガラ・スタジアム]

 韓国の絶対的エース、イ・サンウ。彼を止めることと、吉武サッカーの生命線でもあるラインコントロールが、DF冨安健洋(福岡U-18)とDF下口稚葉(JFAアカデミー福島U18)のCBコンビの使命だった。

 その中で富安は非常にいい動きを見せていた。積極的なラインアップと、日本のプレスを嫌がって縦に蹴り出したロングボールにも、しっかりと反応してヘッドで弾き返す。時にはアンカーを追い越してバイタルエリア手前までボールを運び、パスワークに加わるなど、彼の存在は非常に際立っていた。35分まではイ・サンウに全く仕事をさせず、ラインコントロールもパス出しも完璧だった。

 だが、42分に悪夢が待っていた。直前の39分、イ・サンウが中央でドリブルで仕掛けてきたとき、アンカーの渡辺皓太が交わされたが、富安がうまくディレイさせ、カバーに入ったDF堂安律が見事にボールを奪い取った。このイメージがあったのか、イ・サンウがボールを持った瞬間、富安は仕掛けてくると構えた。

 だが、次の瞬間、ボールはイ・サンウを離れ、左サイドでフリーのキム・ジュンミンに渡っていた。下口が交わされ、そのまま突破を許すと、「前を走られた選手(キム・ジュンミン)について行きすぎて、10番のマークをフリーにしてしまった。そこはラインを見て、切るところは切ってやればよかった。判断ミスだった」と悔やんだように、一瞬、マークすべきイ・サンウの姿を見失った。キム・ジュンミンのセンタリングの先には、フリーのイ・サンウがいた。あれだけ集中していたDFラインが見せた一瞬の隙。富安を始め、選手たちは完全にボールウォッチャーになってしまっていた。

 そして、後半2分には屈辱的な点の取られ方をする。ハーフウェイライン手前から、イ・サンウに約50mのドリブルシュートを食らう。このとき、富安をはじめ、3人で囲い込んだのにもかかわらず、突破を許し、GKをも交わされてしまった。「2失点目は猛スピードで来られて、でも自分もカバーに入っていて、人数は足りていた。あそこは最悪ファールで止めるくらいしないといけなかった」。

 イ・サンウに触れることも出来ぬまま許した重すぎる2失点目。その後、引いてきた相手に攻められることはほぼなくなったが、ゴールが遠く、0-2で敗れた。「一瞬でも隙を見せたら、このレベルだと取られてしまう。そこの隙を見せてしまったことが問題だった」。試合後、彼は唇をかみしめた。完璧だった展開から、一瞬で落とされた地獄。そこから這い上がれなかった悔しさ。だが、185㎝の高さを誇り、足元もあって、ビルドアップも出来る彼の存在は、今後のサッカー界において、必ずや重要になって来るだろう。CBは経験がモノを言うポジション。U-17W杯は出場できないが、この経験が血となり、肉となって、彼をもう一回り成長させてくれることを願ってやまない。それほど、彼のプレーには将来性を感じた。

「この経験を無駄にせず、この経験があったからこそ成長したんだと、後々言えるようにしたい」。

 この借りは絶対に将来的に返してほしい。U-20W杯、東京五輪、W杯―。夢は無限に広がっているのだから。

(取材・文 安藤隆人)
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