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[選手権予選]「三鷹高」で最後の選手権、東京実振り切り8強進出:東京A

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[10.4 全国高校選手権東京都Aブロック予選2回戦 東京実高 1-2 三鷹高 駒沢第2]

 4日、第93回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック予選2回戦が行われ、07年度全国8強の三鷹高が昨年度4強の東京実高に2-1で勝利。駒澤大高と戦う準々決勝(12日)進出を決めた。
 
 東京実のMF野口優人(3年)が20本近く投じたロングスロー。そしてPAへ次々とロングボールが放り込まれてきた。だが、三鷹は「三鷹高校も最後。次から中等教育学校になる。高校としては最後なので、しっかりとやっていきたい」と語ったCB湯浅辰哉(3年)やMF河内健哉、MF巽健主将(すべて3年)らが懸命にエアバトルで食らいつく。試合終盤の失点によって1点差とされたものの、佐々木雅規監督も「粘り強く頑張ったと思います」と讃えるプレーで勝ち切り、8強進出を決めた。
 
 三鷹は10年4月に開校した三鷹中等教育学校の後期課程を担う形で、中高一貫教育校へと移行。そのため、12年4月入学を最後に生徒募集を停止し、15年3月に閉校となって完全に中等教育学校へ移行する。サッカー部も3年生は一般受験で高校から入学してきた選手たちだが、2年生(中等5年生)以下は中学受験で入学してきたメンバーだ。07年度大会で高知中央、矢板中央、宮城県工を破って全国8強進出した歴史も持つ三鷹高(登録は三鷹高・三鷹中等教育学校)だが今大会は現校名で臨む最後の選手権。この日、三鷹は4強入りして東京都高校サッカーの聖地・西が丘、そして全国舞台で「三鷹高」の名を披露したいという強い思いを持つ3年生たち中心に8強切符を勝ち取った。

 序盤は拮抗した展開。三鷹は8分、右CKから河内が頭で合わせたヘディングシュートがゴールマウスをかすめる。一方の東京実は12分、野口優人の右ロングスローをニアサイドのFW前田航大(3年)が頭で流して中央でフリーのFW栗田マーク(2年)が頭でゴールへ押し込んだ。これは前田のファウルによってノーゴールとなったが、決定機をつくった東京実は14分にも右MF小玉塁(3年)がアーリークロスをDFの背後へ落とすと、栗田がGKをかわしながら左足シュート。だが、これは身体を流されかけながらも必死にボールを追ったGK武田啓介(3年)がシュート叩き、得点は動かない。

 空中戦の続く流れによって、三鷹は得意のショートカウンターを繰り出せない展開。それでも河内がキープ力を発揮し、巽がスルーパスを狙うなど、先制点を狙っていく。東京実は33分にCB境亘平(2年)のフィードを栗田が頭で流し、後方へ飛び出した前田が左足シュートを放ったが、これは枠を捉えず、逆に直後の34分、三鷹が先制点を奪った。三鷹は中盤で拾ったボールを後方へ下げると、背番号10のSB傳川祐真(3年)が右サイド後方からダイレクトで対角線上にクロスボール。この一本のパスがビッグチャンスへと変わった。「逆サイドが空いていることを気づいていた。下げた時にバックの傳川がこっち見てくれていて上手く抜け出すことができたと思います」と振り返るFW長島潤也(3年)が左サイドを抜け出し、「ゴールはあまり良く覚えていないですけど、感覚で打つことができました」と左足でゴールへ沈めてリードを奪った。

 少ないチャンスを確実にものにした三鷹。東京実はハーフウェーライン付近からでも投じてくる野口優人のロングスローや前田のキープ力を活かして同点ゴールを目指してくる。だが前日にOB相手にロングスロー対策を行ってきたという三鷹は何本PAまでボールを放り込まれても崩れない。PAでボールを弾ませることなくクリアしていた湯浅は「(ひとつ前の)巽と河内のところをターゲットに来ていた。(彼らが)そこで先に触ってくれた」とチームメートに感謝。またCB吉野秀紀(2年)や傳川もカバーリング良く対応して東京実の反撃を跳ね返していった。

 そして後半8分、貴重な追加点が生まれる。三鷹はカウンターからハーフウェーライン付近で長島がボールを収めると「キャプテンの巽の声が聞こえたので、走ってくると思って出しました」とスルーパス。左中間を抜け出した巽は切り返しから右足シュートをゴール右隅へ決めて2-0と突き放した。佐々木監督が「本当に冷や冷やもので(微笑)。2点目が大きかったです。1点目で自分たちのムードになった。ただ(リードが)1点だったらまた押されてということになったと思う」と振り返った大きな、大きな2点目。東京実は「まずは1点」と反撃するが、15分に混戦から右サイドを縦に突いた前田の右足シュートは枠を捉えず。28分には野口優人のロングスローのクリアボールを小玉が右足で叩いたが、シュートはGKが反応して追撃することができない。

 三鷹もFW平光太一(3年)や巽中心に3点目を狙ったものの、勝負を決定づけるゴールを奪うことができなかった。対する東京実は38分、左サイドを一気に抜け出したFW赤松尚斗(2年)がシュートにまで持ち込んだが、ここは武田が好守で立ちはだかる。それでも諦めない東京実は39分、前線で前田が競り勝つと、これにいち早く反応したFW野口優斗(3年)が右足シュート。GKの手を弾いた一撃がゴールへ吸い込まれて1点差となった。だが、東京実は1分間のアディショナルタイムで思いを成就することはできず。逃げ切った三鷹が東京4強、「西が丘」進出へ王手を懸けた。

[写真]後半8分、三鷹はカウンターから巽が2点目のゴール
 
(取材・文 吉田太郎)

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