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[選手権予選]指揮官認める一体感と「チーム力の高さ」、2年ぶりの全国狙う実践学園が8強進出:東京B

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[10.5 全国高校選手権東京都Bブロック予選2回戦 片倉高 1-3 実践学園高 駒沢第2]

 第93回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック予選2回戦が5日に行われ、2年ぶりの優勝を狙う実践学園高は都立勢の片倉高に3-1で勝利。野津田高と戦う準々決勝(12日)進出を決めた。

「ちょっとウチの悪いところが出て、入りが悪かったですね。一週間前のTリーグのトリプレッタ戦で開始5分で2点取ったりとか、開始最初の10分の前に出るパワーは相当あるんですけど、きょうはがっぷり四つに組んでしまった」。実践学園の深町公一監督は大雨の中で行われたコンディション面などに理解を示しながらも「我々から見たらきょうは50点ですね。この一年間の戦いを見て、Tリーグ含めて下から数えた方がいいんじゃないかな」と内容については及第点を与えなかった。本来は守備からシンプルかつダイナミックに前線やサイドへボールを入れて、セカンドボールや混戦を制してゴールを連発することができるチーム。実力派揃う東京都1部リーグ(T1)では第16節で初黒星をつけられるまで開幕から無敗で首位を快走し、残り1試合で依然首位をキープをしている。その実践学園だが、この日は都大会出場が3度目という新興の片倉相手に余計なパスで攻撃のスピードが遅れ、素早くゴール前を固める片倉守備陣をなかなかこじ開けられなかった。

 実践学園は前半1分にCK後の混戦からFW須田皓太(3年)がいきなりポスト直撃のシュート。15分には左SB橋本康平(3年)の折り返しからFW天下谷真太郎(3年)がフィニッシュへ持ち込む。その後も右SB新井直人(3年)や須田のヘディングシュートでゴールを襲うものの、CB谷合航太やCB小林駿太(ともに3年)が身体を張る片倉は簡単には崩れない。それでもMF末永純平(3年)の左足キックを軸に攻め返そうとする片倉の攻撃を、実践学園は「CBの2枚だけは、渡辺と高橋だけは代えられないですね」と指揮官の信頼度も高い渡辺東史也と高橋龍世(ともに3年)の両CBや大型MF横溝聖太郎(3年)を中心に確実に跳ね返していく。そして左SHの百瀬隆平(3年)と橋本が何度もポジションを入れ替え、右SBの新井がポジションを中盤、そしてFWへと移るなど持ち味でもある多彩なポジションチェンジで相手の対応を惑わせていた。

 待望の先制点が生まれたのは37分だった。左サイドを縦に突いた橋本のラストパスをMF杉山大周(3年)が右足ダイレクトで合わせてゴール。ついにゴールをこじ開けた実践学園はその後も橋本の左足シュートがポストを叩くなど片倉を攻め立てる。後半も開始直後に新井が放った一撃など再三決定機をつくった実践学園だったが、その前に立ちはだかったのが片倉のGK加藤弘太だ。実践学園はゴールラッシュをしてもおかしくないような攻撃を見せていたが、片倉の背番号12は枠へ入ってくるシュートを抜群の反応で次々とセーブ。17分には立て続けにビッグセーブを見せるなどその好守でチームを勇気づけた。

 それでも実践学園は後半18分に左CKから、わずか1か月前までCチームにいたという2年生DF大山友幸が頭で2点目のゴール。実践学園は20分にも決定機を迎えるが、片倉はDFがゴールライン上でシュートをかき出すなど心折れることなく戦い続ける。実践学園は34分に前線からプレッシャーをかけた杉山がインターセプトから左足で3点目のゴール。だが、片倉は直後に交代出場のFW小川寧大(2年)が左サイドからロングシュートを決めて再び2点差に迫った。強豪からのゴールに片倉はベンチ、スタンドも興奮。実践学園は38、41、43分と立て続けに決定的なシュートを放ったが、GK加藤に阻まれるなど追加点を奪うことはできず。快勝で準々決勝へ駒を進めたものの、試合後に主将のFW山下浩二(3年)はスタンドへ向けて「内容はまだまだでした」と大声で反省を口にし、「全国へ向けて頑張っていく」と気持ちを入れ直していた。

 今年、リーグ戦で圧倒的な強さを見せてきた実践学園だが、決して飛び抜けた選手がいる訳ではない。ただ、深町監督は「みんなが考えて、学校も含めて行動できるような子が集まっている。チーム力で勝っているチームかなと思います」とそのチーム力の高さを認める。個々のハードワークや多彩なポジションチェンジで勝利への確率を少しでも上げようとしているほか、指揮官が「彼がいるから一年間頑張ってきた。あれがいるからチームがまとまってきた」とその人間性を絶賛する山下主将中心に全員の意識の高さもチームの武器となっている。休日にメンタル講習会に参加したり、栄養学を学んだり、主将に引っ張られてAチームの選手だけでなく、Bチーム、Cチームの選手たちも一体となっている雰囲気がある。その中で各選手には常にトップチームに入ることのできるチャンス。Cチームから這い上がってこの日ゴールを決めた大山や、9月にBチームから上がってきたMF土屋英敏(3年)といった選手たちがまたチームを活性化している。昨年は湘南入りしたDF福岡将太をはじめ、個のレベルの高い期待の世代だったが、今年はよりチーム力と一体感を発揮。2年ぶりの全国へ、160人近い部員たちが一丸となって全国切符を勝ち取る。

[写真]後半34分、杉山(左)のゴールを讃える実践学園イレブン

(取材・文 吉田太郎)

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