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[MOM1141]尚志MF稲村知大(3年)_攻めて、守って大車輪の活躍

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] 
[10.11 全国高校選手権福島県予選準々決勝 尚志高 1-0 聖光学院高 鳥見山陸]

 最終ラインで相手の決定機を阻止したかと思えば、「球際とかでみんな調子悪かったので、自分で決めようと思っていた」と前線を追い抜いて決定的なシュートも打ち込んだ。攻めて、守って、大車輪の活躍。尚志高のMF稲村知大(3年)は仲村浩二監督も「きょうのMVPは知大じゃないですかね。ずっと(チームのキーマンは)オマエだよと言っていた」と賞賛したプレーでチームを4強へ導いた。

 球際での強さを見せつつ、ボールに多く絡んでチャンスをつくり出す。本来は積極的にシュートも放って行くボランチだが、この日は相手が切り替え早くスペースを消してきたため、ボールを左右に振り分けながら相手の急所を狙い続けた。自ら仕留めることはできなかったものの、それでもカウンターからひとりで果敢に切れ込んで仕留めようとするシーンがあり、また守備では0-0の後半23分にPAまでボールを運ばれた決定的なシーンでインターセプト。チームはその6分後に決勝点をマークした。

 闘志があまり表に出るタイプではなく、周囲からは淡々とプレーしているように映っていたようだ。中学時代にも「もっと気合入れて」という声が耳に届き、その後も「『がむしゃらにやんない』と言われたり、『もっと気合入れてやれ』と言われていた」という。ただ、稲村は常に自分のやるべきことを全力で貫徹。主力数人が不在だったこの日は誰よりも走り、間違いなくリーダーとしてチームを引っ張っていた。「県はもう絶対に勝たないといけないので。勝たなかったらほかの部員に申し訳ない。選手権はモチベーションが違いますね。最後なのでそれがあります」という強い思いをプレーで表現していた。

 大学受験をしている稲村だが、その進路を気にするJクラブのスカウトがいるほど評価は高い。その評価の高さも納得の80分間だった。目標の選手権全国大会まであと2勝。11年3月の震災でいわき市の自宅も被害を受けたという稲村だが、翌冬に全国舞台で活躍した尚志の姿が強く心に残っている。「オレも(勇気を与える存在に)なりたいと思います」と誓うMFが技術と運動量、そして表に出てきた「がむしゃらさ」でまずは尚志を県制覇させる。

(取材・文 吉田太郎)

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