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[選手権予選]マジメさ、徹底する姿勢“丸出し”で戦う富岡、2試合連続1-0勝利で連覇へ前進:福島

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[10.11 全国高校選手権福島県予選準々決勝 郡山商高 0-1 富岡高 鳥見山多]

 第93回全国高校サッカー選手権福島県予選は11日、準々決勝を行い、2連覇を狙う富岡高はMF鈴木眞澄(3年)の決勝ゴールによって古豪・郡山商高に1-0で勝利。25日の準決勝進出を決めた。

 昨年はチームのトータルバランスに優れ、全国大会初勝利を挙げて全国上位も十分に狙えたほどのチームだった。対して今年は昨年ほどのタレントも、攻守における強さもない。佐藤弘八監督も「これ(昨年の強い印象)を払しょくするのが大変」と苦笑いする今年の富岡。夏の全国総体予選は準決勝で学法石川高の前に屈し、プリンスリーグ東北では2勝1分15敗で10チーム中8位だった。それでも今大会は2試合連続1-0で勝利。まだまだ慌ててボールを離してしまってミスから逆襲を食らうシーンがあり、佐藤監督は「自分たちがやりたいことやるためにもうちょっと相手との駆け引きとか、もっといいポジションとかあればと思うんですけど、余裕がないんですよね」と厳しかったが、「接戦を勝ち上がることは自信になると思うし、苦労して勝ち上がることはいい」と頷く白星で4強切符を死守した。

 前半はリズムのいい攻撃が見られた。17分、アタッキングサードで前を向いたFW鈴木拓磨(3年)が右サイドを駆け上がったMF国分裕史(2年)の前方にパスを送ると、国分のラストパスをFW遠藤洸城(3年)が合わせる。さらに18分にはMF江川大悟(2年)の左クロスを鈴木拓がヘディングシュート。DF間に丁寧にショートパスを通しながらボールを運び、シュートシーンをつくり出した。ただ、郡山商もヘディング強く、馬力もあるFW村上涼(3年)や抜群のスピードを持つFW星野皓成(3年)の強力2トップを軸に対抗。サイドのスペースを狙う相手の攻撃を警戒した富岡はなかなかSBが攻撃参加することができず、人数をかけた攻撃をすることができなかった。

 加えて郡山商は分厚い守りで富岡の攻撃をスピードアップさせない。試合は膠着した展開のまま時間が過ぎて行った。それでも富岡は後半7分、インターセプトしたMF池田俊貴(2年)がドリブルシュート。そして後半17分に「切り札」MF高橋洋人(3年)を投入すると、19分には中央でボールをおさめた高橋を起点とした攻撃から、国分が入れた右クロスを鈴木眞が決定的なヘディングシュートで合わせた。
 
 星野の突進にゴールを脅かされるシーンもあった富岡だが、昨年の経験者でもあるDF坂本敏樹主将とDF佐藤幸希(ともに3年)の両CB中心とした守りで簡単にシュートシーンをつくらせない。そして30分に待望の先制点を奪った。佐藤幸がタイミングのいいインターセプトから前進して右サイドへ展開。これを受けた高橋がコントロールでファーストDFをかわして一気にゴール方向へ切れ込む。小刻みなフェイクを入れてから斜めに出したラストパス。これが「前の試合でも彼(高橋)のアシストから得点できたので来ると思っていました。GKのポジションも見ていたし、結構落ち着いていました」というファーサイドの鈴木眞に通り、背番号6は2試合連続となる決勝点を左足でゴールへ叩き込んだ。

 郡山商は36分に10番の右SB柳沼優(3年)の右クロスがゴール前に入り、アディショナルタイム突入後の42分にはMF吉田進太郎(3年)の右クロスにMF長谷川英主将(3年)が飛び込む。だが同点ゴールは生まれず、富岡が4強入りを決めた。

 昨年ほどのタレントがいないことは富岡の選手たちも理解している。それでも高橋は「自分たちより、実際尚志とかの方が力あると思っている。一つひとつ目の前の試合を勝ち進んでいければいい」と前を向く。そして主将の坂本は「一人ひとりタレントはいない。自分たちそんなに頭も良くないんで。でも『“バカ丸出し”でやれ』と言われている。みんな“丸出し”でやっています。マジメに、徹底してやることが自分たちの良さ。そこを出せれば」。昨年ほどの飛び抜けた巧さはなくても、みんながマジメにやり切る「武器」がある。震災の影響で自分たちの校舎、グラウンドが使えない中、周囲の支えを受けながら福島、全国でインパクトを残した昨年。その姿を見て1年生も多数入部してきた。富岡は今、自分たちのできる最大限のことをやり尽くしてチームの未来に繋げる。

[写真]後半30分、富岡はMF鈴木眞が決勝ゴールを喜ぶ

(取材・文 吉田太郎)

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