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[MOM1161]奈良育英FW細野仁(3年)_開き直って「変わった」エース

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] 
[10.26 全国高校選手権奈良県予選2回戦 奈良育英高 6-1 天理教校学園高 奈良学園高グラウンド]

 天理教校の粘り強い守りに苦しんだ奈良育英高を救ったのは背番号10を背負うエースFW細野仁(3年)の一撃だった。「練習からサイドを使う意識を高めていた上、試合中も(上間)監督から『サイド』という指示が飛んでいたので、サイドを意識し過ぎた」と振り返った前半は速さのあるサイド攻撃から相手陣内を攻め込んだが、天理教校の堅い守りを崩せず。自ら強引にドリブルで切れ込む場面もあったが、なかなか一点が奪えない苦しい時間が続いていた。

 加えて、この日はいつもコンビを組む185cmの大型FW有本大誠が大学受験のため不在で、普段ならば見せられる有本のヘディングを起点とした相手DF裏への飛び出しも上手く行かず。周囲とのズレも見られた。しかし、「苦しい状態だったので僕が点を獲って、チームの流れを変えないとダメだと思っていた」という強い意気込みを見せたのが26分。左サイドからMF辻泰志が上げたクロスがゴール前に入った瞬間、身を投げ出して頭で押し込んだ。

 ストライカーらしい嗅覚を見せたのが前半ならば、後半見せたのは攻撃の要としての存在感。後半2分には右サイドに開いてボールを受けると、PA中央に低いクロスを入れて、1年生FW大野寛世のゴールをお膳立て。更に9分には後方からのクサビのパスを背負った状態で受けるとそのままターンでゴール前へ流し、最後は大野からのパスを受けたMF片山太征が決めた。
 
 試合途中からベンチに下がったMF梅津祐貴に代わり、キャプテンマークを巻くなどエースとしてだけでなくチームの中心選手としても頼もしさを見せた彼だったが、上間政彦監督が「元々はメンタル的に凄く弱い子だった」と振り返るように気持ちの弱さからポテンシャルを発揮し切れずにいた選手だった。

 変化が生まれたのは今年の夏。全国総体に出場したものの、1回戦で松山北高(愛媛)に0-3で敗北。「僕たちは全国大会をほとんど経験していない学年。全国のレベルを知り、もう一度全国の舞台に立って味わった悔しさを晴らそうと思った」と変身のきっかけとなった。更に県リーグのラスト2試合で連敗し、ターゲットが選手権のみとなった事でスイッチが入った。

「細野はメンタルも含め、凄く成長した。彼が成長してくれたのがチームにとって一番、デカい。色んな事を乗り越えた子どもたちは自信がつくと思う。今の子どもは開き直る事が出来ないけど、彼はいい意味でアホになる事が出来る。夏以降は開き直って、思い切ったプレーが出来るようになってプレーの幅が広がったと思うし、精度が上がったと思う」と上間監督が称えるようにどこか頼りなかった姿は過去のモノ。細野は「どれだけ自分たちが出来るかを見せるには選手権は良い舞台。力を示すための良いブロックだと思うので、全部倒したい」と意気込む。奈良育英の歓喜に彼の活躍は欠かせないものとなるはずだ。

(取材・文 森田将義)
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