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[MOM1163]北海道大谷室蘭GK引間雄大(3年)_「全国切符をかけたPK戦」を2度制した守護神

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] 
[10.26 全国高校選手権北海道予選決勝 北海道大谷室蘭高 0-0(PK4-3)旭川実高 札幌厚別公園競技場]

 相手GKは惜しいコースへ飛んでいたが、北海道大谷室蘭高のGK引間雄大(3年)はなかなかボールに触れられずにいた。全国大会の出場権をかけた旭川実高との北海道予選決勝はPK戦にもつれ込んでいた。先攻の北海道大谷室蘭は1本目で主将の深井祐希が失敗。左に蹴ったが、相手GKに止められてしまった。続くキッカーはシュートを成功させたが、4本目の守備を迎えた時点まで1点差が続いた。「決めなければ、止めなければ」と少しずつ緊張感が高まっていく展開だったが、引間は意外にも落ち着いていた。

「PK戦は、あまり得意な方じゃないですね。でも、相手のキッカーに比べたら僕の方が精神的に優位だと思うんですよ。相手は全部右に蹴って来ているなと思っていました」と話した守護神は4本目も触ることはできなかったが、相手のシュートはクロスバーが弾いてくれた。4-4の同点となり、一気に逆転の芽が出て来た北海道大谷室蘭は5人目のキッカー中島洸が成功。そして相手の5人目のシュートは、迷わず右に跳んだ引間の左足に当たって跳ね返った。普段の優しい顔つきが、興奮で別人のようになり、渾身のガッツポーズを繰り出した。ハーフウェーラインから一人、また一人と走り寄って来る仲間が引間に抱き付いた。絶体絶命のチームを救った守護神はヒーローになった。

「せめて1本は止めたかった。止めた瞬間、感情があふれ出した。本当に良かった」と喜んだ引間だが、実はPKが得意ではない。それほど止める印象はないというのがチームメートの一致した見解だ。主将の深井もその一人だが、このときは引間のセーブを強く信じていた。深井は「大体、コースを決めて飛んでいるようなところがあるから、練習ではみんな、シュートを決めている。でも、アイツは小学生のときにも全国大会をかけた試合でPKを止めているし、1本は必ず止めてくれると思っていた」と6年前に引間が見せたビッグセーブを思い出していた。

 深井の脳裏に蘇ったのは、08年に行われた第32回全日本少年サッカー大会の北海道予選決勝戦だ。3年連続の全国出場を目指したコンサドーレ札幌ユースU-12(現・コンサドーレ札幌U-12)の行く手を阻んだのが、引間だった。PK戦で相手の3人目を止め、所属していた伊達SSSを全国初出場へと導いた。このとき、対戦相手に名を連ねていたのが深井だった。深井は札幌U-15を経て北海道大谷室蘭に進学し、1年次から起用されてきたが、チームは3年にわたって高校選手権の全国大会から遠ざかっていた。大勝負で見せる引間の一発が、今度は深井ら新しい仲間を全国大会の出場に導いた。

 再びヒーローとなった引間は「ただ、せめてチームのために1本は、という気持ちだけだった。最近は普段の練習でもPK練習をやって来たから、その成果もあったとは思う。僕は読みというか駆け引きで戦うタイプ。読みが当たったので良かったです」と笑顔を見せた。6年越しで再びビッグセーブを見せた守護神は、全国大会でどんなプレーを見せるのだろうか。

(取材・文 平野貴也)
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