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[選手権予選]課題残すも破壊力十分の攻撃で6発圧倒、盛岡商が全国王手:岩手

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[10.25 全国高校選手権岩手県予選準決勝 盛岡商高 6-0 専大北上高 盛岡南公園球技場]

 第93回全国高校サッカー選手権岩手県予選は25日に準決勝を行い、06年度全国王者の盛岡商高は専大北上高に6-0で快勝。遠野高と戦う決勝(11月2日)へ進出した。

 プリンスリーグ東北の得点ランキング上位10傑にいずれも名を連ねるエースFW根子裕将とMF千葉秀平、FW大澤玲央(全て3年)をはじめ、司令塔のMF吉田廉、MF工藤大輝(ともに3年)らレギュラーの半数以上が昨年からの主力。怪我から復帰してきたDF澤口貴浩主将(3年)がまだ本調子ではないものの、それでも今年の盛岡商の陣容は強力だ。この日は太田浩史監督が「ちょっと慌てて空回りしてしまった。サイドチェンジがなくて縦のボールばかりになった。もうちょっと自分たちのリズムでやってほしかった。(相手の守りに対して)自分たちでもうちょっと対応できるようになってほしい」と首を捻り、根子も「相手が蹴ってきてそれに合わせちゃって。短いパスが少なくなって、リズムが悪かった」と反省する内容だったものの、県準決勝の舞台で6-0快勝。力の差を見せつけて3年ぶりの全国大会出場へ王手をかけた。

 盛岡商は前半4分、右CKのクリアボールを拾った吉田が再びゴールエリアへ入れると、ファーサイドからフリーで飛び込んだCB小澤勇太朗(3年)が頭でゴールへ突き刺して先制点を奪う。盛岡商はさらに7分にも左サイドから仕掛けた千葉が強烈な右足シュートを放ち、16分にはFKのこぼれからPAの大澤がチャンスを迎える。ただし、ボールこそ握っているものの、最終ラインから縦に入れるシーンが多い盛岡商は、前線、サイドアタッカーの単独での飛び出し、突破の目立つ単調な攻撃に。それでも個の力でチャンスに変えつつあったたが、人数をかけて守る専大北上の守備に穴を開けるまでには至らない。

 逆に専大北上はボールを奪うと最終ラインから左足での好フィードを見せるCB中村捷太主将(3年)のキックなどから切り替え速いカウンター攻撃。10番FW熊谷裕哉(3年)やFW齊藤大河(1年)のドリブルでの仕掛け、また右MF熊谷直樹(2年)のアーリークロスが徐々に“一発”の予感を高めていく。ただ、個々で上回る盛岡商の攻撃陣が専大北上に襲い掛かる。28分、吉田のループパスから大澤の放った左足ボレーがクロスバー直撃。28分には右SB三上貴久(2年)の右クロスのこぼれ球を小澤がダイレクトで叩くと、DFをかすめたボールがそのままゴール右隅へ突き刺さった。攻撃陣がリズムに乗れない中、「正直びっくりしました。最初の2点ということでチームを勢いづけられたのは良かったと思います」と喜んだ小澤の2発で試合の流れは全国でも輝きを放ってきた「赤白の縦縞」まとう盛岡商へと傾いた。

 専大北上も2失点目の直後に右クロスから熊谷がヘディングシュート。33分には中村が約40mの距離から放った左足FKが、やや前方に構えていた盛岡商GK阿部翔太(2年)の頭上を襲い、こぼれ球に反応したCB千田瀬成(2年)が決定的なシュートを撃ちこむ。堅守を柱に健闘していた専大北上だが、前半終盤になると、相手の強力ドリブラー、千葉の突破を止められなくなるなど、押し込まれて連続失点を喫してしまう。盛岡商は38分、根子が右中間からクロスを入れると、PAで競った千葉の背後から飛び出してきた大澤が左足ダイレクトで決めて3-0。さらに40分には三上の右クロスを根子が頭で叩き込んで4-0で前半を折り返した。

 後半、右MF工藤をボランチに移して吉田と工藤が攻撃のリズムをつくった盛岡商は13分、左中間の千葉から工藤、大澤、そして広がった最終ラインの間に割って入ってきた千葉へとつなぐ鮮やかなパスワークから千葉が5点目。専大北上は後半も中村の左足FKがゴールを襲い、齊藤がPAでDFをかわすシーンもあったが、得点を奪うことができない。逆に盛岡商は後半アディショナルタイムにも右SB鷹羽大輝(3年)のグラウンダーのクロスを千葉がスライディングシュートで決めてゴールラッシュを締めくくった。

 盛岡商は経験豊富な3年生アタッカー陣に加えて夏の全国総体でメンバー外だった2年生MF渡邊翔が中盤で存在感を高め、1年生CB谷地朝日が安定感高い守りを見せるなど下級生の突き上げもある。特に攻撃の破壊力は全国でも有数と言えるほどだが、太田監督は「どちらかというと点数を取ってリズムつくっていくチームなので、取れなくて簡単に点取られるのがある。プリンス(リーグで)最後連敗したのは、取れなくて自滅してというのが続いていた」と指摘する。上位進出が期待された全国総体も鹿児島実高との伝統校対決で2-0から逆転負け。またプリンスリーグ東北ではリーグ3位タイの55得点(18試合)をたたき出した一方で8月以降の6試合で28失点と課題を残している。

 昨年、遠野と対戦した選手権予選決勝も思い通りの戦いができないまま1-2で敗れているだけに小澤は「前半も、後半も、序盤でディフェンスラインがしっかりして点を取られないこと。そうすれば前が取ってくれる」と誓い、根子は「前は取れる時にとる。後ろもプリンスは安定していなかったんですけど県大会は安定している。全員で取って全員で守る。キャプテン(澤口)が怪我で出れていないので、戻ってくるまで頑張ろうと言っている。チーム一丸となって、優勝することだけ考えて、一つひとつのプレー大事にすること。応援してくれる3年生、2年生、1年生いるので必ず勝ちたいと思います」。過去の苦い敗戦をもう繰り返さない。決勝では自滅することなくゴールと白星を掴んで、全国でその破壊力を示す。

[写真]盛岡商はCB小澤の2得点など6-0で快勝

(取材・文 吉田太郎)
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