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[選手権予選]粘って3度勝ち越し、名門・遠野が花巻東退けて決勝進出:岩手

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[10.25 全国高校選手権岩手県予選準決勝 花巻東高 2-3 遠野高 盛岡南公園球技場]

 第93回全国高校サッカー選手権岩手県予選は25日に準決勝を行い、2連覇を狙う遠野高は10番MF小笠原光研(3年)の決勝点によって花巻東高に3-2で勝利。遠野は11月2日の決勝で24回目の全国大会出場を懸けて盛岡商高と戦う。

 2度追いつかれても3度突き放した。終盤は相手の猛攻を根気強く跳ね返して繋いだ連覇への道。遠野の長谷川仁監督は「(今年の良さは)粘り強く戦うところですかね。逆転されればあの流れならば持って行かれるところでしたけれど、そこで(白星を)引き寄せたのが、今年のチームの良さじゃないかなと思います」と持ち味の「粘り強さ」を発揮して勝利した選手たちに目を細めていた。

 その指揮官が「勝負の分かれ目は、ウチの運動量と切り替えのところだと思っていた」という花巻東との準決勝。花巻東はモンテディオ山形MF谷村憲一を兄に持つ注目MF谷村海那(2年)を擁し、今年遠野とリーグ戦で2度引き分けている難敵だった。ただ、先手を打ったのは遠野。8分、右サイドから切れ込んだMF佐藤充(2年)の折り返しから、最後はファーサイドヘこぼれたところをMF中野寛也(2年)が豪快な左足シュートをゴールへ叩き込んだ。

「向こうが落ち着く前に畳みかければというのがあった」(長谷川監督)という遠野の勢いとオープン攻撃に飲み込まれ、序盤はチャンスらしいチャンスをつくれなかった花巻東も12分に1チャンスをものにする。右サイドを深くえぐった谷村の柔らかいクロスをファーサイドへ走りこんだMF戸来雅也(2年)が頭で合わせて1-1。ただ、前半は遠野のペースで進んでいく。選手が慌ててボールを離してしまい、持ち味のポゼッションを展開できない花巻東からボールを奪った遠野は、狙い通りにサイドのスペースを突いて、3バックを組んだ相手の守備網を攻略した。

 16分にはFW須藤和輝(2年)が判断良く放ったロングシュートがゴールを襲い、20分にもサイドで存在感を示していた佐藤の突破から小笠原が決定的なシュート。そして24分には敵陣でインターセプトした小笠原が右サイドを切れ込んで、そのラストパスが須藤へ通る。花巻東はGK刈屋雅貴(2年)が何とかゴールを守っていたが、それでも遠野は27分、須藤の左クロスをファーサイドの小笠原が落ち着いて頭で折り返し、最後はMF岩渕弘人(2年)が左足シュートを叩き込んで勝ち越した。

 花巻東は谷村が会場を唸らせるようなパスを何本か通し、ドリブルでも存在感を示したが、チームが乗り切れない。それでも就任1年目の白瀧慶監督が「前半の部分をなかなか修正できなかったのが一番(の敗因)。ただ、後半は素晴らしいゲームだったと思う」と振り返ったように後半、花巻東はMF小田島大河主将(3年)や谷村を軸に徹底してショートパスをつないで持ち直す。そしてエース谷村の距離の長いループシュートやスルーパス、FW鈴木翼(2年)のスピードを活かした攻撃で遠野ゴールを脅かした。

 そして17分、右クロスをファーサイドで戸来が身体を張って競ると、こぼれ球を鈴木が押し込んで同点に追いついた。再び勝ち越しを狙う遠野はスペースを活かした攻撃から須藤がフィニッシュへ持ち込むが、士気上がる花巻東も21分に戸来の右クロスにMF木村威哉(3年)が飛び込むなど一気に逆転を目指す。また花巻東はCB下村康貴(3年)中心に何とか相手の攻撃を凌いでいたが、それでも長谷川監督が勝利への鍵としていた運動量と切り替えで上回った遠野は24分、須藤のラストパスで抜け出した小笠原がGKとの1対1から右足シュートを決めて勝ち越した。

 終盤メンバーを入れ替えながら必死の反撃を見せる花巻東に対し、遠野はMF杉山航平主将やGK菊池至(ともに3年)を中心にしっかりと跳ね返していく。それでも花巻東はアディショナルタイム突入後の43分、ゴール正面の位置でFKを獲得。キッカーの谷村が放った高速FKがゴール左を捉えたが、ここは遠野GK菊池が「隅っこに速い弾道で来るというのは分かっていた。蹴る瞬間、少し軌道が見えていた。後は思い切って飛ぶだけでした」とビッグセーブ。直後のCKも遠野ゴールを破ることはできず、名門が新鋭の挑戦を退けた。

 遠野は2年連続の全国まであと1勝。ただ、その前にこの1年間で2敗しているライバル、盛岡商が立ちはだかる。だが、小笠原は「個々はあまり強くないので全員でハードワークして勝っていきたい」と誓い、菊池も「今年は去年ほど個人個人が上手い訳ではないので、コンビネーションとか粘り強さを出したい。新人戦、高校総体と負けているのでその雪辱を晴らして、去年の先輩たちは全国行っているので2連覇目指して、全国に再挑戦できるように勝ちたいです」と宣言。最大のライバルを今度こそ打ち倒して、今年も選手権切符を掴む。

(取材・文 吉田太郎)
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