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[選手権予選]悪条件でも変わらぬドリブルスタイルと3発坂本の決定力、聖和学園が全国へ前進:宮城

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[10.26 全国高校選手権宮城県予選準々決勝 東北学院高 1-3 聖和学園高 宮城県サッカー場]

 26日、第93回全国高校サッカー選手権宮城県予選準々決勝が行われ、聖和学園高が東北学院高に3-1で勝利。3年ぶりの全国大会出場へ一歩前進した。

 この日、宮城県サッカー場のピッチは決していい状態ではなかった。他のチームならば、リスクを回避してロングボールを多用していたかもしれない。ただ聖和学園はやはり、聖和学園だった。自陣でも敵陣のPAでもとにかくドリブルで勝負。ボールが弾んでも、多少タッチがブレてもドリブルで相手に突っかかっていた。加見成司監督がピッチに送り出している選手の基準を「ボールを取られない選手ですね」と説明する聖和学園は、多少ピッチ状態が悪くても、スタンスを全く変えない。指揮官が「どんな時でも声掛けしてくれる」と信頼を置くCB佐々木澪主将(3年)が「3年間やってきているので自信な部分もある。信じて貫いてやろうと決めているので変えることはないですね」と言い切るドリブルサッカーで準決勝への切符を掴んだ。

 聖和学園はエース番号「14」を背負うMF二ツ矢豪(3年)が中央でDFを何度もかわしていたほか、168cmの小柄なMF大池啓生、MF深田知聖、MF中込恭佑(すべて3年)らがピッチの至る所からドリブルを繰り出し、トリッキーなパスやポジションチェンジを交えながらゆっくりゆっくりとゴールへ近づいていく。もちろん、相手の人数をかけた守りの前に失うシーンも何度もあった。それでもブレずにアタックをしていく。対する東北学院は聖和学園の進攻を食い止めて、MF久保田歩主将や右SB遠藤久織理(ともに3年)を軸としたカウンターから反撃。ボールを奪ってから出足良く攻め返していた。

 それでも聖和学園は前半31分、左中間で二ツ矢がFKを獲得。これをプリンスリーグ東北得点王のFW坂本和雅(3年)が左足で鮮やかに逆サイドのゴールネットへ沈めて先制点を奪った。ただ東北学院は直後の32分、こちらも突破力を示していたMF菅原光我(2年)が左サイドでFKを獲得。キッカーの久保田が中央へ入れたボールは、混戦を抜けてそのまま逆サイドのゴールネットへ吸い込まれて同点に追いついた。

 湧き上がる東北学院スタンド。これで勇気を得た東北学院は後半も我慢強い守りからの速攻で対抗する。そして久保田やMF荒川宏樹(3年)がミドルレンジからシュートへ持ち込むなど勝ち越しを狙った。ただ東北学院はいい形でカウンター攻撃に持ち込みかけながらも、攻守の切り替え速い聖和学園に決定打を見舞うことができない。聖和学園は中盤で二ツ矢らがボールを引っ掛け、最終ラインでは佐々木が出足のいいインターセプトでピンチの芽を摘み取り、佐々木、成沢桐梧(3年)のCBコンビは高さも示して相手をゴールに近づけなかった。

 そして聖和学園は18分、じわりじわりとゴールへ近づくと二ツ矢からのパスを受けた坂本が、DFの股間を射抜く技ありの左足シュートを決めて勝ち越した。この後、交代出場のFW谷田光(2年)らもドリブルで魅せる聖和学園は、33分に圧巻の得点力を示す坂本が再びDFの股間を射抜く左足シュートを決めてハットトリック達成。反撃する東北学院もPAまではボールを運んだが、冷静なGK中島尚人(3年)の守る聖和学園ゴールを破ることができなかった。

「記憶に残るサッカー」を掲げる聖和学園。3年前の全国選手権初出場時も話題になったが、そのサッカーは明らかに異質だ。日々のトレーニングからシザース、ルーレット、エラシコ、逆エラシコ・・・豊富なドリブルメニューでタッチライン間を往復し、1対1などの対人に取り組み、リフティングにもとにかく時間をかけて行う。加見監督も「コイツらやるな、と感じさせますよ」と評する個々の足技に加えて坂本の決定力、佐々木を中心にチームとしてのまとまりもある今年は全国でインパクトを残す可能性も十分にある。

 総体予選では勝負にこだわり過ぎたところもあって決勝で敗退。二ツ矢は「今回はあまり応援とか気にせずに楽しんでやろうと言っていた」という。トーナメント戦の重圧を感じすぎることなく、楽しんでプレーしていることで、それが内容、結果にも結び付いていると考えている。そして二ツ矢は「全国出れば、自分らはもっとやれると思う。1試合1試合がっつりやっていくだけ。チームでも挑戦と言って1試合1試合、どんな相手でも1本1本しっかりとやろうと言っている」。相手関係なく、自分たちのサッカーにこだわって結果も残すつもりだ。今後はより相手のレベルが上がり、警戒して守りを固めてくる中、その守備網を突破して勝ち上がることができるか。特長的なサッカーを表現しているからこその難しさがあるが、佐々木は「全国の舞台でこのサッカーを見せたいと言うのがみんなの意見ですし、まずその権利を取らないとそこへいけない。最後は絶対に(決勝会場の)ユアスタで自分たちが魅せて勝つ」と誓った。

(取材・文 吉田太郎)
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