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[選手権予選]伝統校の膳所がプリンスリーグ勢の比叡山撃破!!:滋賀

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[10.30 全国高校選手権滋賀県予選2回戦 比叡山高 1-1(PK1-3)膳所高 野洲高G]

 第93回全国高校サッカー選手権滋賀県予選2回戦が30日、野洲高グラウンドで行われ、プリンスリーグ関西勢の比叡山高と伝統校の膳所高が激突。1-1で突入したPK戦の末、膳所が3-1で勝ち、3回戦へ駒を進めた。

 総体予選は初戦で涙を飲んだ膳所が、プリンスリーグ関西に所属する“格上”の比叡山から奪った白星。試合後、山本裕幸監督がこぼした「どう考えてもマグレでしょ(笑)」という言葉は謙遜ではなく、本音だったのは間違いない。

 試合開始から主導権を握ったのは比叡山。中央のMF赤松弘啓らが素早く前線にボールを入れ、MF薩摩亮太ら攻撃陣の良さを引き出し、「うちは器用に繋いだり出来ないので、基本的に後ろを5バックにして守備の厚みを出しながら前から追いかける、まず『守備ありき』というのがウチのスタイル」(山本監督)という膳所を押し込んだ。

 前半15分には相手陣内中央でMF平岩瑞基ボールを奪うと一旦、後方へ展開。このパスを受けた赤松がトラップで前に出て、35m付近から左足を振り抜くと、ボールは左ポストに当たりながらゴールネットに吸い込まれた。先制点を奪ってからも比叡山のペースで試合は進み、膳所は36分に前線でボールを受けたFW大谷太基のポストプレーからDF由利衛が大きく左にフィードを送り、抜け出したFW村上新がPA左からシュートを狙うシーンもあったが、チャンスはわずかだった。

 だが、防戦一方の前半から一転、村上が「徐々に自分たちのサッカーが出来るようになった」と振り返ったように、後半から膳所が反撃を開始。持ち味の堅守から素早く前線へと繋ぐ、“膳所高スタイル”が機能し、後半24分にはクリアボールが前線の村上に渡ると、中央をドリブルで前進。相手DFを引き付けてPA左にスルーパスを入れる。フリーで反応したMF渡邉理玖がシュートを狙ったが、ボールはGK正面。「押し込んでも下手でしょ?(笑)。入る気がしなかった」と山本監督が苦笑いしたように膳所は再三押し込みながらも池田直弥、大窪翔のCBコンビを中心に集中力を切らさず守る比叡山ゴールを破る事が出来ない。

 もどかしい展開が続く中、試合が動いたのはアディショナルタイムだった。膳所は相手のハンドによってPA右外でFKを獲得すると、DF三科安晃がゴール前にクロスを入れる。相手と競り合った末、PA中央に落ちたボールをDF山崎優が強引に押し込み、試合を振り出しに戻すとともにPK戦へと持ち込んだ。PK戦では先行、比叡山の1人目のキックがGKに阻まれると、続く2人目もクロスバーを直撃。対する膳所は3人連続で成功し、直後の比叡山4人目のキックが左ポストに当たり勝負あり。かつて2度全国大会に出場している伝統校、膳所が3回戦へと駒を進めた。

 「FW矢島卓郎(現横浜FM)のいた年など、いつも3、4年に一度、良い選手が入り、手応えのある年がある」と山本監督が話す膳所の最近のピークは昨年。新人戦、総体予選でベスト4に入る期待通りの結果を残したが、国公立大学に多数の現役合格者を出す県内屈指の進学校であるため夏で3年生の多くが引退し、選手権予選は3回戦で姿を消した。サイクル通り、谷間の世代である今年は総体予選の2回戦で敗退。だが、この事が「あんなに早く負けるとは思っていなかった。凄く後悔している人が多くて、悔いを残すくらいなら、最後までサッカーをしようと3年生で話合った」(村上)と例年とは違い、9人もの3年生が選手権予選まで残る要因となった。

「サッカーを辞めてもずっと勉強が出来るわけではないし、気持ちが大事かなと思った。サッカーも受験も頑張ってどっちも成功させてやるぞ!と皆で話している」。そう口にする村上は朝7時には学校に着き、授業前に受験勉強を実施。放課後は練習を終えると、塾でまた2時間強の勉強を行い、家に帰ってからも再び机に向かっている。ハードな日々が続くが、彼らにとってはサッカーが格好の息抜きだという。

 手厳しい言葉を並べてきた山本監督だが、去り際に「この1勝は凄く大きい。アドレナリンが出ているのを期待している。高校生はひとつ勝つと波に乗る事もあるので、これで燃え尽きずに次も良い方向に出てこれば」と次戦以降に期待を寄せた。この1勝が、受験にサッカーにと忙しい冬の幕開けとなるか注目だ。

(取材・文 森田将義)
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