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[MOM1183]丸岡FW長侶凌(3年)_兄貴の分まで全国で輝く夢を追う

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.1 全国高校選手権福井県予選決勝 丸岡高 2-2(PK3-2)北陸高 テクノポート福井スタジアム]

 長身の快足FWが、勢いよくゴールへ迫る。丸岡高のエース長侶凌は、フィジカルと気持ちの強さを武器にするアタッカーだ。序盤から最前線でゴールを狙ったが、前半は相手の北陸高にペースを奪われ、チャンスは乏しかった。それでも1点を追う展開で後半を迎えると、長侶はクロスバー直撃の強烈なミドルシュートを放ってチームに勢いを与えた。そして同点に追いついて勢いを増した後半19分、MF飯田大智と荻尾将人が左サイドで作りだした好機を見逃さずにゴール前へ顔を出し、ラストパスをきっちりとゴールへたたき込んだ。長侶は試合後に「準々決勝からは、その試合で燃え尽きるつもりで相手に向かって行った。どん欲にゴールを取りに行って点が取れたので、ホッとしている」と言って笑顔を見せた。

 しかし、勝利は簡単には手に入らなかった。後半25分に追いつかれると、一進一退の試合は延長戦に突入。長侶は何度も足をつりながら、それでもプレーを止めずにピッチに立ち続け、ボールが来ればゴールへと迫った。「2点目を取ったときは勝ったと思ったけど、同点に追いつかれて焦った。でも今までたくさん走って来たし、練習の中で自分を追い込んで来た。誰よりも練習量は多いはずだと自信に変えて最後まで走った」(長侶)ことによる結果は、PK戦の末の勝利という形でもたらされた。どうしても譲れなかった全国大会の切符をつかむことができた。

 長侶が見せた根性の裏には、夏の悔しさがある。高校総体予選は準々決勝で北陸に0-1で敗戦。全国大会の連続出場が12で止まった。悔しさから這い上がろうとする長侶には、両親や祖父母、そして兄姉から熱い叱咤激励があったという。長侶は「ここに来て、あのときの家族のことを思い出した。期待してくれていたのに13連覇を果たせなかった。家族から『絶対にお前が点を決めて、味方の背中を押せ』と言われて、半泣きになった。いつも食事などを作ってくれていて感謝していたから、もう見返すチャンスが選手権しかなかった」と身近な熱烈サポーターである家族に感謝を示した。

 元々、長侶が丸岡への入学を熱望したのも、家族の影響だった。7歳年上の長男・匡さん(現・FC北陸)は、丸岡サッカー部の主力として全国高校総体に出場。現地で応援しながら見た兄の輝きが、末っ子である凌が同じ進路を希望することになる理由となった。しかし、匡さんの代はチーム内に問題を抱え、選手権本大会を前にして大幅なメンバー変更が行われ、長侶は兄が全国大会でプレーする姿を見られなかった。長侶は「(県予選の決勝を)勝てば、全国大会は見に来ると行ってくれていた。兄の分まで選手権に出て、長侶の名を大会に刻みたい」と、追いかけて来た兄の存在が一つの大きなモチベーションであることを明かした。

 全国大会は、長侶にとって2度目の挑戦だ。昨年は1回戦にフル出場を果たしたが、勝利することはできなかった。次なるステージは、最高学年を迎えて「昨年はわき役として出られたけど、先輩に譲ってしまうような消極的なプレーが多かった。丸岡で全国大会に出てプレーするのが、本当に夢だった。今年は主役として、応援してくれる人たちに恩返しをできるように頑張りたい。できれば、過去最高のベスト4を超えたい」と意気込む決戦の舞台。“長侶家の最終兵器”が丸岡の看板を背負って暴れ回る。

(取材・文 平野貴也)
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