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[選手権予選]窮地で見せた一体感と力強さ、流通経済大柏が劇的V弾で逆転勝ち!:千葉

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[11.2 全国高校選手権千葉県予選準々決勝 柏日体高 1-2 流通経済大柏高 東総運動場]

 第93回全国高校サッカー選手権千葉県予選は2日、準々決勝を行った。プレミアリーグ勢の流通経済大柏高と関東大会予選準優勝の柏日体高との一戦は、後半アディショナルタイムにFW福井崇志(3年)が決めた決勝点によって流経大柏が2-1で逆転勝ち。習志野高と戦う準決勝へ駒を進めた。
 
 後半半ばを過ぎても1点ビハインド。昨年、高校年代最高峰のリーグ戦である高円宮杯プレミアリーグチャンピオンシップで高体連勢として初めて優勝し、今年もJ加入が決定的となっているDF小川諒也(3年、現在はFW起用)らタレントを擁する流経大柏だが、この日は初戦敗退の危機にさらされた。立ち上がりから相手ボールを3人がかりで「強奪」するような迫力ある守備を見せた流経大柏は、その勢いで一気にゴール前へなだれ込む。2列目のMF久保和己(3年)とMF新垣貴之(3年)がキープ力の高さを活かしてバイタルエリアへ侵入。10分には右サイドへ抜け出した小川のラストパスをニアサイドのMF松本雅也(2年)が合わせ、直後には久保が右サイドからドリブルでPAへ切れ込んだ。

 だが、片野慶輝監督から「球際だけは負けるな」と送り出されていた柏日体は流経大柏のパワーに気迫と一つひとつのプレーの強さで対抗。剥がされるのを承知で球際へ強く突っ込み、マイボールへと傾けていた。そして13分にはPA外側のこぼれ球をFW岡井舜(3年)が左足シュート。14分にはクリアボールを収めたFW藤岡優也(2年)が左足シュートへと持ち込む。そして24分、柏日体はペナルティアーク後方でMF牧野和哉(3年)がFKを獲得すると、10番MF浜田将司(3年)が低い弾道の右足シュートを決めて先制した。片野監督も「良く決めてくれた」と振り返った一撃。リードを奪われ、慌ててロングボールを放り込んできた流経大柏に対し、柏日体は連続してスライディングタックルを決めるなど好守光ったCB長谷川大輔(3年)やCB常田航平(2年)、右SB中澤航平(3年)を中心に跳ね返す。流経大柏は前半終了間際に久保が右足ミドルを放ったが、「怖がって、怖がって、負けたくない一心で蹴る、蹴る、蹴る」(本田裕一郎監督)となった前半はシュートわずか2本、CKはゼロに封じられて終えた。

 後半立ち上がり、流経大柏は技巧派ストライカーのFW高沢優也と注目司令塔のMF相澤祥太(ともに3年)、そして福井を相次いで投入。スピードのある小川を左サイドへ移し、また4バックを3バックへ変更して攻撃に人数をかけた。ただ、ボールに対する勢いの衰えない柏日体の守りは強固。柏日体は自分たちのペースに強敵を引きずり込んだまま時間を削っていた。そして18分には浜田の左FKをファーサイドで受けたMF田中海帆(3年)が決定的な左足シュート。だが流経大柏はGK鳥井翔太(3年)がビッグセーブで阻むと、20分にも自陣でボールを失ってピンチを迎えたながらもDFの好守で決定機を防いだ。

 後がなくなった流経大柏が見せたのは、今季なかなか見られることのなかった一体感。勝利への気迫がビッグプレーを生んでいた。そして24分、流経大柏はCB廣瀧直矢主将(3年)が入れたFKのクリアボールに走りこんだ高沢が、左足ハーフボレーでゴールへ突き刺すスーパーゴール。起死回生の同点弾で蘇った流経大柏はこの後、攻守両面で“横綱”のような強さを発揮する。28分、セカンドボールをかっさらった久保が一気にGKと1対1に。右足シュートは右外へ外れたが、一気に相手を飲み込んだ流経大柏は33分にも右サイドを個人技で打開したMF澤田篤樹(3年)のラストパスに高沢が飛び込む。さらに35分には、高沢のスルーパスで右サイドへ飛び出した相澤がGKを引き付けてラストパス。そしてフリーで走りこんだ福井が右足で合わせる。

 このシュートもゴール左外へ外れて会場はため息に包まれた。だが流経大柏は落ち込むことなく、柏日体ゴールへ押し寄せる。そして後半アディショナルタイム、右CKのこぼれ球に中央で反応した福井が「あれ(直前の決定機)外しちゃったんで次、決めるしかないという感じですね。気持ち良かった」と渾身の右足シュートをゴールへ叩き込んだ。ピッチサイドまで飛び出して大興奮の控え部員たちの赤い波の前で福井は歓喜の雄叫び。そして再開直後に試合終了の笛が鳴り響くと、抱擁を繰り返した流経大柏イレブンの隣で柏日体の青いユニフォームがピッチに崩れ落ちた。

 流経大柏の本田監督は「ここから先はコレクティブとか協力だとか、結束だとか強いチームが勝つでしょう」と語り、「1年間そんなことで悩んだ。やんちゃさんばかりだから」と苦笑いした。全国屈指の戦力を誇る流経大柏だが、今年はどこかまとまりに欠け、波のある1年だった、全国総体予選は12年ぶりに予選敗退。プレミアリーグでは首位の柏レイソルU-18相手に2勝するなど強さを示した一方、一度も連勝することができず、残り3試合で残留圏内ギリギリの8位と苦しい戦いが続いている。ただ主将の廣瀧は「今までそういう(一体感のある)戦いができていなかったんで、きょうも試合前に円陣とか、自分たちで自発的に全員でやろうという話をして。昨日雨の中で(仲間たちが)応援練習してくれたという話も聞いていたのでピッチはやるしかないとなっていた」。その思いが先制され、追い詰められて、またひとつになった。この秋は上手い選手も「頑張れる選手」がピッチへ送り出されていたが。加えてこの日は元々高い技術を評価されていた選手も闘争心溢れるプレーでチームに貢献。廣瀧は「(技術の高い選手たちの存在によって)ゲームが落ち着いて、プラスアルファ全員で『頑張ろう』という部分が共有できたので良かったです」と笑顔を見せた。

 高沢は「去年、一昨年と選手権に出れていない。自分たち12年連続のインターハイ(を懸けた予選も)も落としていますし、流経の歴史を汚してしまうような感じがあるので、ここで見せないと何もしていないという学年になってしまう。全国へ行って、『この学年はできるんだ』というところを見せたい」。後半、特に追いついてから見せたサッカーはやはり、力強い。この「強い流経大柏」を見せ続けて全国切符を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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