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フル代表選出のブレイク候補生・新潟DF松原健「チャレンジし続ける」

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 今季、大分から期限付き移籍でアルビレックス新潟に加入したDF松原健。同ポジションには同年代のライバルがいたが、移籍に迷いはなかった。開幕スタメンを飾ると、その後レギュラーに定着。本来なら9月から10月にかけて開催されたアジア大会に参加するU-21代表の一員だが、Jリーグ各チームから選考できるのは1人ずつという制限があったため、FW鈴木武蔵との兼ね合いで同代表に選出されなかった。しかし、その結果、フル代表に初選出されて貴重な経験を積むこととなり、11月14日のホンジュラス戦、18日のオーストラリア戦に臨むフル代表に再び選出された。「負けたくない」と語るクロスに磨きをかけるだけでなく、フル代表での経験を糧に、21歳の若武者は今後の大ブレイクを狙っている。

――今季の開幕前、大分から期限付き移籍で新潟に加入しました。移籍の経緯を教えてください。
「ユースから育った大分には、6年間お世話になりました。ただ、地元ということもあり、自分の中でも多少甘えている部分があると感じていましたし、今まで大分でやってきたことが、外に出てどれだけ通用するかというのも試したかった。だから新潟から話を頂いたときに、移籍を決意しました」

――年代別代表でも右SBのポジションを争うDF川口尚紀選手がいる新潟への移籍に、戸惑いはありませんでしたか?
「むしろ逆です。自分が苦労するようなところに追い込みたかったし、チームで川口に勝てたら年代別代表でも勝てるんじゃないかという考えもありました。同年代の選手に絶対に負けたくない思いが強かったんです。移籍前に川口と話ですか? いや、してないんですよ。今年1月にオマーンで行われたAFC U-22選手権のときに、川口も初めて僕の移籍を知ったようで、直接は言われていませんが、『何で来るんだよ』と思っていたかもしれませんね(笑)」

――2人はライバルでもありますが、心強い存在でもあったと思います。
「僕自身初めての移籍となりましたが、同年代の川口や(鈴木)武蔵がいてくれたことで、チームにうまく溶け込めたと感じています。それに新潟はサイド攻撃を持ち味にしているチームで、SBもガンガン上がれて、僕の得意なプレーをうまく引き出してくれるスタイルなので、ピッチ上でも迷いなく馴染めました」

――右SBに本格的に取り組み始めたのはいつからですか。
「高校1年の夏を過ぎた頃でした。SBが少し手薄だったので、当時のユースの監督が、運動量があった僕に一度やらせてみようという考えだったと思います。それまではFWやボランチでプレーしていたこともあり、最初は戸惑いもありましたが、タイミング良くオーバーラップして、そこからクロスを上げて得点になった試合があって、それで味を占めた感じですね」

――クロスには相当のこだわりを持っていそうですね。
「クロスの精度や運動量は他の選手に負けたくない部分です。特にタイミング良くオーバーラップしてからのアーリークロスは自分としては得意な形で、第26節名古屋戦(○1-0)のアシスト(後半14分にFW指宿洋史の決勝点をアシスト)は、闘莉王選手に触られはしましたが、自分のイメージ通りの軌道を描いた理想的なクロスだったと思います」

――クロスを上げるときに意識していることは?
「深くえぐって上げるよりも、相手の守備陣形が整う前にGKと最終ラインの間にアーリークロスを入れようとしていますし、チームメイトの一人ひとりの特長を意識した上でクロスを上げています。ディフェンスの位置を見て、そこからチームメイトがどこに走り込んでいるかを確認できたときに一番良いクロスを上げられますね」

――状況によって蹴り方や蹴るポイント、回転のかけ方を変えたりするのでしょうか。
「そこまで繊細なキックはまだできていませんが、最近は蹴る足よりも踏み込む軸足でボールをコントロールするようにしています。踏み込み方によってボールのスピードや質がだいぶ変わって、強く踏み込むと速くて落ちるボールになり、踏み込みを柔らかくするとふんわりと弧を描くボールになります」

――軸足を意識するようになったのは、いつからですか。
「本格的に取り組み始めたのは今季からですね。開幕直後はクロスが全部ニアに引っかかっていたので、コーチやスタッフの方にいろいろと修正をしてもらいました。まずは無理をして回転をかけず、ファーにふんわりとしたボールで良いからニアに引っかかることがなくなるように意識しました。いろいろ苦労しましたが、その練習を続けたこともあり、力まずにうまくクロスを上げられるようになったと思います。そこから自分の形を出していけば良いと指導して頂いたこともあって、名古屋戦くらいからは自分のイメージ通りの場所にクロスを蹴れるようになりました。それまでは全然パッとしなかったけど(笑)、ここ数試合は良いボールを上げられていると思います」

――開幕スタメンを飾り、レギュラーを守っていますが、新潟でここまでできる自信はありましたか。
「全然、自信はなかったです。もちろん他の選手に負けたくない気持ちはありましたが、初めてのJ1でのプレーになりましたし、試練はいくつもあるだろうと思っていました。ただ、一番の試練と考えていた『試合に出る』という試練は越えられましたが、もっともっと自分のプレーの質を上げていかないといけません。残り全試合でスタメンフル出場を目標にしたいし、アシストやゴールもしっかり狙っていき、プレーに安定感が出てきたらもっと良くなると思います」

――8月には初めてフル代表に選出されました。当時の率直な気持ちを教えてください。
「一報を聞かされたときは本当にビックリしましたし、喜びと緊張と、いろいろなものが交わった感じでした」

――フル代表の選手と時間をともにして、どのような刺激を受けましたか。
「試合には出場できませんでしたが、世界で活躍する選手と一緒に練習できたのは良い刺激になりました。一つひとつの練習に緊張感があり、『誰にも負けない』というハングリー精神を誰もが持っていて、球際の勝負一つにしても『当たり負けしない』『絶対に勝つ』という姿勢を感じるだけでなく、そういう激しさの中でも一つひとつのプレーの質がとても高かった。そのレベルを体感することで、もっともっと自分のレベルを上げていかないとそこには到達できないと痛感しました」

――同じSBであるDF長友佑都選手、DF酒井宏樹選手、DF酒井高徳選手とは、どういう話をしたのでしょう?
「皆さん、ずっとチャレンジし続けているということを言っていました。ミスを恐れては次のプレーには絶対にいけないし、次のステップへもいけない。攻撃でも守備でも、失敗してもいいから思い切ったプレー、常にチャレンジし続けることが大事だという話をして頂きました」

――プレー面で参考になった部分は?
「海外でプレーしている選手は攻撃だけでなく、しっかり守備もできるので、そこが自分には足りていないと感じました。対人での対応であったり、カバーリングの部分を強化していかないと上では通用しないと思うので、そういう部分を今のうちに克服したいですね」

――松原選手がフル代表に参加している間に、U-21代表も合宿を行い、その後アジア大会に出場しました。
「アジア大会はテレビで見ましたが、同年代の仲間から『国を背負って戦っている』という強い思いを感じました。一つひとつのプレーを見ていても、自信に満ち溢れていたし、戦う姿勢を前面に出してプレーしていた。8月の福岡合宿には僕も参加していましたが、大会に挑むとなると、あそこまで目の色が変わるのかと思って見ていました」

――U-21代表の右SBには川口選手はもちろんのこと、アジア大会でプレーしたDF室屋成選手(明治大)、DF伊東幸敏選手(鹿島)ら多くのライバルがいます。
「良いSBがたくさんいるので、そういった部分では『誰にも負けたくない』という気持ちもあるし、新潟で試合に出続けることが一番のアピールになると思うので、試合に出続けたい。僕らの年代はリオ五輪出場を目標にしてやっていますし、僕も一番近い目標と捉えています。だから、五輪出場権を獲得するメンバーに入れるようにチャレンジし続けていきます」

――最後にスパイクについてお伺いします。新しく履くことになるマーキュリアルの履き心地はいかがですか。
「このスパイクは、自分の足に合ってくれるような感覚ですね。初めて見たときは履きにくいのかなと思っていましたが、いざ履いてみるとものすごくフィットして履きやすいです。スパイクを履いている感じがしないくらい、本当に素足のような感覚なので、キックのときも自分が思ったところに当てられるし、スパイク自体も軽いので一歩の踏み出しが速く出るというイメージもあります。目立つデザインだから、良いプレーをすれば自分も目立てると思うので、自分に足りないところを改善しながらアピールを続けていきます」

(取材・文 折戸岳彦)

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