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目標は3冠!! G大阪 FW宇佐美「タイトルはファン・サポーターへ唯一できる恩返し」

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[11.8 ナビスコ杯決勝 広島2-3G大阪 埼玉]

 敗戦も覚悟したと、ガンバ大阪のFW宇佐美貴史は振り返る。前半35分、G大阪は、広島のFW佐藤寿人にこの試合2点目となるゴールを許し、2点を追うこととなった瞬間だ。「あきらめかけました。正直。2点目を入れられたときは」。そう認める宇佐美は、同時に残り10分が勝負だと切り替えたという。

「一瞬、終わったと思いました。引いて後ろを固めてくるだろうと思ったから、前半のあと何分かで点を取れるか、取れないかが勝負になるなと思った」。

 試合再開直後、宇佐美は積極的にドリブルで仕掛けた。何としても、前半のうちに1点を返さなければいけない。強い決意がプレーに満ちていた。そして前半38分、MF遠藤保仁からのパスがFWパトリックのヘッドにつながり、G大阪は1点を返す。

「前半の間に1点を入れられたことで、一気に変わった。あの一点に尽きるかなと。あの1点が入った時に、これは絶対にいける。同点には絶対できるし、勢い的に延長に入っても、絶対にいけるというのがあった。点が入ったときにいけると思った」

 後半に入り、G大阪はMF明神智和を下げて、MF大森晃太郎を中盤に入れた。遠藤がボランチに入ったことで、前線へボールが供給される回数が増え、G大阪は試合の主導権を握った。「(後半は)攻めるだけだなっていうのはあったし、硬さもあの2失点で逆に取れて、勢いが付いた。結果論ですけど、先に2点を取られて、目を覚まさせてもらったという印象です」。

 後半9分には左サイドでスローインを受けた宇佐美がゴール前へクロスを入れる。MF阿部浩之がDFを引き連れた裏で、パトリックが同点ゴールを決めた。「パトへのパスコースはしっかり見えていたので、阿部ちゃんを越えてパトっていうのは狙い通りでした」と、宇佐美は振り返る。同22分にもG大阪ユース時代もともにプレーした大森とのコンビプレーから、パトリックの決定機を演出したが、シュートは枠外へ外れた。それでも、焦りはなかったという。

「後半の中で、絶対にもう1点取れると思っていたので、焦りはありませんでした。2-2になった時点で、向こうに攻め手はなかったですし、うちはいろんな形でチャンスをつくっていた。これを続けていれば、あと一発は入るとなんとなく思えていた。それは僕だけじゃなくて、全員が感じられていたと思います」

 宇佐美の予感通り、後半26分には大森がゴールを決めて、G大阪がリードした。宇佐美は後半39分にベンチに下がり、目に涙を浮かべながら歓喜の瞬間を待った。

「ドイツに行って、いろんな苦労というか、気持ちがある中で、G大阪に帰ってきて、G大阪でタイトルを獲りたかった。途中から、その気持ちを抑えることができなくなった。試合中に泣いたことも、勝って泣いたこともない。僕自身、G大阪で育ってきて、どれだけ早くG大阪にタイトルをもたらせるかは、夢でもあり、自分に掲げていたテーマだった。やっぱり、嬉しかったですね」

 この喜びを、一度だけでは終わらせない。「応援してくれている人たちへの恩返しは、タイトルを獲ることでしかできない。ピッチ上で良いプレーを見せることもそうですが、普段からお金を払って見に来てくれて、僕らを鼓舞してくれるファン・サポーターへの唯一の恩返しの形だと思う。それができる可能性を、まだあと2つ残している。とりあえず一つ恩返しできたけど、タイトルを獲ったからこそ、まだまだっていう気持ちはあります」。J2から昇格直後の3冠達成。漫画にもならなさそうな夢物語を、宇佐美は本気で狙っている。

(取材・文 河合拓)
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