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[選手権予選]身に着いてきた“らしさ”、香川西が1-0勝利で9連覇達成:香川

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[11.8 全国高校選手権香川県予選決勝 高松北高 0-1 香川西高 丸亀競技場]

 第93回全国高校サッカー選手権香川県予選決勝が8日、県立丸亀競技場で行われ、香川西高高松北高に1-0で勝利し、9年連続10回目の全国大会出場を決めた。

「相手がどうこうよりも、うちが50点の試合をしてしまった結果」。大浦恭敬監督は試合内容に不満を示していたが、要所で香川西らしさを発揮し、“定位置”である香川代表の座を掴んだ。

 前半、主導権を握ったのは香川西。自陣から素早く攻撃陣にロングボールを入れ、速さのあるMF田代公彦秋山和大を活かした突破から押し込んだが、「カウンターのチームを作っているので、相手に引かれて、スペースが無くなるとボールを失ってしまう」(大浦監督)と守備を固めた高松北に苦しんだ。13分には右CK付近でFKを奪い、秋山が直接狙うも枠の上。24分には左からのFKで相手GKのファンブルを誘い、こぼれ球をFW藤岡航世が狙ったがこれも枠を捕える事が出来ない。しかし、このまま前半が終わるかと思われた39分に、藤岡の左CKを秋山が頭で押し込み先制点を手にした。

「弱いチームが勝つための常套手段。セットプレーは毎年、譲れない部分」(大浦監督)、「9月中旬から朝練で鍛えてきた」(藤岡)と自信を見せるセットプレーで試合を動かした香川西は、後半開始直後の1分にも右サイドを抜けた田代からのグラウンダーのクロスがゴール前に抜け、PAでフリーとなったFW蓮井翔の足下へ。GKとの1対1から上手く右隅を狙ったが、懸命に戻った高松北の守備陣に掻き出されてしまう。ここまではチーム全体で走り勝ち、セカンドボールを上手く拾って主導権を握っていた香川西だが、時間の経過と共に運動量が低下し、1点を返すべく猛攻に出た高松北の勢いに飲まれてしまう。

 31分には中盤左でルーズボールを拾った高松北のDF児島健介が素早くPA右へとスルーパスを展開。途中出場のFW湯浅晃佑にフリーでシュートを許したが、GK樫根成生人が「持ち味はシュートストップなので止める自信があった。狙い通り」とタイミングよく封じこみピンチを回避した。39分にも中盤での競り合ったこぼれ球をDF大川原琢央が拾い、素早く前線に展開。このボールを前線で受けた湯浅が抜け出し、シュートしたが枠を捕える事ができず。意地で食らいついた高松北を振り切った香川西が勝利し、9連覇を達成した。

 1983年に監督就任し、自ら創部したチームを育てて掴んだ10回目の選手権。「指導者の間では10回、選手権に出場して本当の強豪校という話をしている。今回でやっと仲間入りできたかなと思う」と喜びを表したが、栄冠までの道のりは険しかった。今年のチームは「昨年は制球難だけど160km投げられるピッチャーのようなFW阪本翔一朗(現金沢)や、50mを走るだけならプロレベルのDF藤谷匠(現神戸学院大)など荒削りだけど個の力のある選手がいたけど、今年はいない」と、この9年の中でも“もっとも力のない世代”と評される。言葉通り、夏の総体予選では坂出商高に県代表の座を譲り、プリンスリーグ四国でも勝ち星が伸び悩んだ。

 転機となったのは夏休みの遠征。これまで選手たちはポゼッションサッカーを志向していたが、県外の強豪との練習試合で敗戦を続け、「僕たちには繋ぐサッカーは無理だと分かり、縦に速いサッカーをしようと選手同士で話し合った」(藤岡)。加えて、選手権を見据え「走り勝つ、競り勝つ、セカンドボールを拾い勝つ、攻守の切り替え」というチームが目指す四原則を作成し、伝統である“堅守速攻”の下地が整った。

 この日は決して満足の行く内容でなかったが、指揮官が「堅守速攻を目指しているので、1-0は僕からすれば最高のスコア」と話したように紆余曲折を経て、香川西らしい逞しさを身につけつつある。全国での目標はこれまで進むことができなかったベスト8進出。「一度、チームを壊す。メンバーも3人くらい替えると思う」と大浦監督が口にするように再び試行錯誤しながら、より香川西らしさを伸ばし、壁を打ち破るつもりだ。

[写真]得点した秋山(左)を祝福する藤岡

(取材・文 森田将義)
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