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[MOM1220]三鷹DF湯浅辰哉(3年)_強攻跳ね返す武器は「失敗」

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.15 全国高校選手権東京都Aブロック予選決勝 三鷹高 3-1 堀越高 味の素フィールド西が丘]

 突出した個がいるとはいえない三鷹高にあって、最終ラインで存在感を放つ選手がいる。CBの湯浅辰哉(3年)だ。

 つねにルックアップし、ことあるごとに指示を飛ばす。彼が事前に危機を察知し、相手に決定機を未然に防いでいるように見える。決して完璧なわけではない。だが大崩れは許さない。パニックを許さない。結果、準々決勝で総体に出場していた駒大高、準決勝で過去2年連続で選手権に出場していた修徳、そして決勝でも競り勝った。

「心がけていることは中途半端はせず、はっきりやるということです」。ピッチ上では「魂」を感じさせるプレーを見せるが、面と向かうととても優し気な好青年、というイメージだ。「最終ラインだけでなく、前線から守備をしています。だから前線がボールを追ってくれている間は守備が機能するんです。ですが後半に入って前線の運動量が落ちてくると……」と苦笑いする。出てくる言葉も失敗談ばかり。「DFラインも一本で裏をとられて失点したり……。それでラインの上げ下げを調整してきたのですが、まだちゃんとはできていないです」

 T1リーグ(東京都1部リーグ)では最下位。「ずっとうまくできていなくて、ずっと負けていて。ちゃんと練習ができていなかったのかなと」。きっかけになったのは夏の鹿島遠征だった。「そこでも練習試合で勝てなくて。そのとき、プレー面、プレス面、気持ち面……チームでもう一度練習から引き締めよう、となったと思います」

 後半10分に1点を返されてからは「連続失点はしないように。落ち着いてやり直そう」と仲間と再確認した。それが実際にできたのは、これまでの失敗を糧にできている証拠だ。ミス、手痛い敗戦のことをよく覚えている。「小学生の頃から、ボールウォッチャーになって失点したりとか、……本当に失敗してばかりで」。謙虚というわけでなく、弱さを自覚している。その自覚が強さになる。小学生の頃からの失敗を流さず忘れず積み重ね、それでも諦めず、試行錯誤を続けてきた。優勝という結果にまぐれはない。間接的ではあるにしろ、無自覚であるにしろ、そこには間違いなく強みがある。

 とはいいつつ、優勝の歓喜爆発というより、どこか戸惑っているような受け答えが印象的だ。「正直、小学生の頃から憧れだった舞台に立てるということに実感がわいていません。とにかく下手なので、気持ちだけは負けないようにしたいです」。弱さを自覚しているからといって、気弱になっているわけではないのも強みだ。全国のピッチでは、これまでの失敗を帳消しにするような守備が見せられるか。三鷹の最終ラインには、短期間で化ける伸びしろがまだまだ秘められている。

(取材・文/伊藤亮)
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