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[プレミアリーグEAST]選手権予選敗退から立ちあがった市立船橋DF藤井主将「あの悔しさを忘れてほしくない」

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[11.22 高円宮杯プレミアリーグEAST第16節 柏U-18 3-1 市立船橋高 日立台総合G人工芝]

 16日の全国高校サッカー選手権千葉県予選決勝で流通経済大柏高に2-3で敗戦。高校日本一という大目標を失った市立船橋高の選手たちが再び前を向くことは簡単なことではなかった。CB藤井拓主将(3年)は「(敗戦から切り返ることは)負けた日も含めて月曜日(17日)、火曜日(18日)もできていなかった」と振り返る。ただ、19日の練習前に行われたミーティングで朝岡隆蔵監督は「3年はまだやることがあるだろう」とメッセージ。藤井は「いろいろな人に声をかけてもらって、自分も残り3節何かを残さなければいけないと強く思ったので、練習も水曜日から素直に取り組めた」という。プレミアリーグ残留、そして後輩たちにひとつでも多くのものを残すために彼らは再び立ち上がり、前を向いて走り出した。

 この日、藤井は誰よりも大きな声をピッチに響かせてチームの穴を塞ぎ、鼓舞していた。藤井を筆頭に、練習への姿勢含めて後輩たちへ市船の伝統を“引き継ぐこと”を託されたGK志村滉と右SB打越大樹、MF鵜澤恵太、そしてFW磯野隆明の5人の3年生たちがけん引役して声、プレーで柏U-18に対抗。この試合では敗れたものの、他会場の結果によって目標であるプレミアリーグ残留が決まった。朝岡監督は「(選手権予選敗退のショックによって)底力的なパワーが出るかというとなかなか難しいし、ウチなんかそこがないと今年は勝てない」と語る一方で「(選手権への未練を)誰も口にしないです。トレーニング見ても、良くやっていると思います」と目を細めていた。

 医師の両親を持ち、自身も大学医学部への進学を目指している藤井は選手権予選敗退を機に受験勉強に切り替えても良かったはず。ただ指揮官が「彼はピッチ外でも、ピッチ内でもいいもの残すから、選手に。最後までピッチ内にいてほしいと思うし、彼のブレない姿勢、(高校生で)あれだけのキャプテンシーというか、パーソナリティーもっているのは、久々に見ましたよ。実際ヤツでやられるシーンはあるけれど。チームに勇気与えるし、チームを前向きにしてくれる」と絶賛する主将は、後輩たちに伝えたいことがあった。「気持ちの面だったり、練習への取り組みだったり、練習の雰囲気は自分がこの1年とても大事にしてきたことなので、それに対して自分がいなくなった後も、2年生たちがひとつ立てた目標に対して一日一日やってくれることを望んでいる」。選手権への夢を断たれても「市船」の主将として残さねばならないこと、伝えなければならないことがある。それをトレーニングで、ゲームで、他の3年生たちとともにできる限り伝えるつもりでいる。

 圧倒的なキャプテンシーを放つ藤井は自分自身が全てを言ってしまうことで周りに圧迫感を与えてしまったことを反省しているという。夏の全国総体初戦敗退後は志村や打越といった他の3年生の協力もあってチーム作りは上手く行ったと確信しているが、自分が周囲を委縮させてしまったという後悔の念。だからこそ、下級生のリーダー格である椎橋慧也をはじめ、白井達也、古屋誠志郎たちにはキャプテン中心に何本も柱のあるチームになってもらいたいと期待している。

 そして下級生たちに最も伝えたいことは流経大柏に敗れた悔しさを忘れないということ。「一番言いたいのはあの悔しさを忘れてほしくない。ボクも去年(全国大会準々決勝で京都)橘に負けた時の悔しさは今でも忘れていないですし、そのことを絶対に忘れてほしくない」。2-0から3点を奪われて敗れた流経大柏戦の悔しさを絶対に忘れないで、壁を乗り越えるための力にしてほしい。そして自分自身は残り2試合、ホームで戦うプレミアリーグにおいてチームメートたちの前で勝利することを誓った。「Bチームの応援してくれるホームでは絶対に負けたくない」。市立船橋の代表として戦う残り2試合、流経大柏戦の悔しさをぶつけ、見ている者の心動かすようなプレーと声によってチームメートたちの前で白星を掴むこと。そして藤井主将ら3年生たちは市立船橋サッカー部の一員として活動する残りわずかな日々を全うする。

[写真]声、プレーで市立船橋を引っ張った藤井主将

(取材・文 吉田太郎)
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