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[プレミアリーグEAST]「負ける気しない」チームへと変わった流経大柏、札幌U-18に3発勝利

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[11.23 高円宮杯プレミアリーグEAST第16節 流通経済大柏高 3-1 札幌U-18 流通経済大柏高G]

 高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2014 プレミアリーグEASTは23日、第16節2日目を行い、8位・流通経済大柏高(千葉)が6位のコンサドーレ札幌U-18(北海道)に3-1で勝利。流経大柏は5位へ浮上するとともに、2試合を残してプレミアリーグ残留を決めた。

 苦しい戦いを乗り越えたチームが、見違えるほどの逞しさを手にしている。昨年、高体連のチームとして初めてプレミアリーグチャンピオンシップを制した流経大柏の本田裕一郎監督も「私にもちょっと負けねぇなという自信があるし、選手たちは『オマエら、一生懸命やれば負けるところはないよ』と言っても半信半疑だったけれど、先週くらいからは選手側からも自信を感じるようになった」というほど。今年は全国高校総体予選への連続出場が11で途切れ、プレミアリーグでも苦しい戦いを強いられた。だが現在、チームには自信が漲っている。普段は厳しい言葉をかける名将が選手たちに「オマエたち、みるみる上手くなっているよ」「急上昇しているよ」と声をかけるほど、流経大柏の状態は良好だ。16日の高校選手権千葉県予選決勝では市立船橋高に0-2から大逆転勝ち。予選3試合はいずれも大接戦だったが、それを勝ち切ったこと、また指揮官からの褒め言葉の連続にMF久保和己(3年)は「最初の方はどうかなという感じだったんですけど、今は自分たちも負ける気がしないですね」と語り、FC東京内定のDF小川諒也(3年)も「練習でも『オマエら、負けるチームないぞ』と信頼してもらっているので、自分たちも勝てると思っています」と強い自信を見せている。
 
 この日の前半はその自信ある流経大柏ペースで試合が進んだ。札幌はトップチーム昇格内定のU-19日本代表候補CB進藤亮佑(3年)を中心にCB泉谷航輝(3年)やMF倉持卓史主将(3年)らが厳しいチェック。小川を右SB濱口魁(3年)ら2人がかりでケアするなど全く隙を見せなかったが、それでも守備する時間がやや長い展開となった。流経大柏は前線で猛烈なプレスをかけていた久保を筆頭に相手へ厳しい寄せを見せると、攻撃面でも9分に小川が得意の左足FK。これは札幌GK種村優志(3年)が反応良くはじき出したが、流経大柏は15分にも小川の左アーリークロスがGKの指先を超え、ファーサイドのMF松本雅也(2年)が頭で合わせる。ゴール方向へ飛んだボールは札幌・進藤が頭でクリアされたものの、その後もMF澤田篤樹(3年)が右足ミドルを放ち、37分にはFW高沢優也(3年)がスペースを縫ったドリブルから強烈な左足シュート。ただ、種村が再びファインセーブを見せてチームを盛り上げた札幌も前線でボールをおさめる大型FW平川元樹(3年)や左利きのMF工藤竜平(3年)を起点に攻め返す。そしてMF菅大輝(1年)と左SB按田頼(2年)のコンビでDFを剥がすなどサイドからチャンスをつくり出した。ただ、スコアを動かすことはできない。

 0-0で迎えた後半5分、流経大柏は10番MF相澤祥太(3年)を投入すると、直後に先制点を奪った。6分、相手のミスからボールを奪った高沢が抜け出し、左足シュートをゴール右隅へ沈める。アグレッシブな姿勢で同点ゴールを目指した札幌も8分に菅のスルーパスから平川が決定的な左足シュートを放ったが、これはGK鳥井翔太(3年)が阻止。札幌は15分にも左サイドからボールをつないで平川が右足シュートへ持ち込んだが、これもGK正面を突いてしまう。逆に流経大柏は22分、澤田とのパス交換からPAに侵入した相澤が決定的な右足シュート。そして25分に奮闘していた札幌CB泉谷が2枚目の警告を受けて退場すると、勝負のポイントを見逃さなかった流経大柏が追加点を奪う。30分、自陣からのFKがややミスとなり、PA内左寄りの方向へ飛んだボールをGKがキャッチしようとする。だが、このボールを左サイドから俊足を活かして走りこんだ交代出場の157cmMF鈴木豪(2年)がかっさらい、そのままゴールへと流し込んだ。

 札幌にとっては痛恨の1点。一方、久保やMF伴恭輔(3年)、交代出場の相澤ら足が止まらない流経大柏はよりギアを上げて札幌にプレスをかけていく。最終ラインもCB山田健人(3年)とCB浜野駿吾(2年)を中心に相手のサイド攻撃を跳ね返して試合を締めくくろうとしていた。ただ、人数の少ない相手に対して不用意につなぎに行ってしまった流経大柏は、ミスでボールを失うと、アディショナルタイム突入後の47分に交代出場のFW山田優介(1年)の左アーリークロスをGK手前に飛び込んだ平川に合わされて1点差とされてしまう。自滅に近い失点。一方、札幌は同点へのわずかな望みをかけてさらに攻撃を繰り出してくる。ただ49分、流経大柏は右サイドから久保、MF新垣貴之(3年)とつなぐと、最後は相澤のスルーパスから鈴木が再びゴールを破って勝利を決定づけた。

 高まった一体感、選手権県予選の劇的勝利の連続。流経大柏の好調な理由はいくつかあるが、チームは練習方法の変化の影響が大きいと感じている。今夏、「こんなことなら誰でもできるだろうなと思っていた」と日々のトレーニングに行き詰まりを感じていたという本田監督がドイツ、アルゼンチンへ視察。その夏以降、流経大柏のトレーニングは5分、10分刻みで目まぐるしく変わるようになった。本田監督が毎日1時間かけてメニューを作成。アーリークロスを徹底するためダイヤモンド型にしたピッチでハーフコートゲームを行うなど、固定の練習メニューではなく、新しいメニューも次々に導入されている。本田監督が「今なら誰にもできない」と手ごたえを見せる日々の短期集中型のトレーニング。一つひとつのメニューが短いからこそ、初めから集中していなければ質の高いトレーニングをすることはできない。久保は「質が上がりましたね。ダメでも次の練習がすぐに始まる。練習と練習と合間はダッシュで水飲みもダッシュで行ってすぐに始まる。練習と練習の合間のスピードが違っているので、それは攻守の切り替えにも繋がっていると思う。みんなで声かけて意識しています」。

 また小川は「凄いメンタル的にも強化されている部分がありますし、慌てずに戦えるのは強みになっている」と語り、本田監督も「あれ(強さ)はまさしくメンタルだと思う。それも鍛えに鍛え抜いた感じのメンタルじゃなくて、練習の内容から全て選手権モードにして、速く、速く、速く、本当にスピーディーに練習を繰り返している。その中から出てきているでしょうね」と選手の変化を感じている。プレミアリーグ残留を決め、選手権全国大会まであと1か月強。小川は「まだ全然伸びると思います。去年のチームは結構完成されていた。でも、このチームまだ未熟でメンバーも最近出てきた選手が多いですし、伸びしろがあると思う。成長したらもっと怖いチームになると思う」とより強さに磨きをかけるつもりだ。本田監督からはっきりと「優勝」の言葉も出てきている流経大柏が1か月かけて高校日本一を「狙って獲る」ための準備を進める。

(取材・文 吉田太郎)
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