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[The New Football]Vol.6:宮本恒靖氏が語る現代フットボールと中高生へのメッセージ

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「すべてはアスリートのために」という理念の下、常に革新的なギアを開発してきたアディダスが打ち出した新たなコンセプトが「The New Football」だ。常に一歩先のフットボールを追求する同社の最先端イノベーションは、スパイクやユニフォームだけにとどまらない。その時代のフットボールの潮流を踏まえ、最新のテクノロジーをあらゆる分野に投入。日本を代表するトッププレイヤーから中高生まで、すべてのフットボーラーが最高のパフォーマンスを発揮するために、アディダスは今後もさらなる革新を追い求めていく。今回は元日本代表DFでアディダス契約アドバイザーでもある宮本恒靖氏に話を聞いた。

―2014 FIFAワールドカップ ブラジルはドイツ代表の優勝で幕を閉じましたが、現代フットボールのトレンドについて、宮本さんはどのような印象をお持ちですか?
「縦に速いサッカーになってきたなと感じています。ドイツ代表のサッカーを見ると、まずベースとしてテクニックがあり、しっかりとパスをつなぎながら、そこからゴールに向かう速さもある。4年前の南アフリカ大会を制したスペイン代表と比べると、横パスが少なく、ゴールへ直線的に向かうサッカーが目立った大会だったかなと思います」

―スペインはワールドカップ後、EURO予選でもスロバキアに敗れ、欧州予選では8年ぶりの黒星を喫しました。今後もこうした流れが続くのでしょうか?
「もちろん、スペインのサッカーが終わったとはまったく思わないですが、シャビイニエスタといった選手たちがつくり上げてきたサッカーから変えていかないといけない部分もあるでしょう。とはいえ、ドイツもラームが代表から引退し、シュバインシュタイガーがケガでいない時期もあって、選手が入れ替わる中で苦しんでいるところもあります。そういう意味では、『個』があってのチームと言えるのではないでしょうか。ベースのサッカーはあっても、試合が拮抗した中で最後に勝敗を決めるのは個人の質や経験、判断、決断力だと思います。それらは厳しい勝負を何度も経験してこそ、身に付くものです」

―「個」で見たときに、現代フットボールにおいて求められる能力とはどういうものでしょうか?
「狭いスペースの中でもスピードを生かしたプレーというものが求められています。中央の狭いスペースからパス交換で抜け出すような速いプレーを特長としている選手。サイドでも生きるし、中央に入ってきても変化を付けられる選手。ドイツ代表のゲッツェがそうですね。ユーティリティーな選手が増えてきたことも、一つの傾向だと思います。試合の流れやシチュエーションによって、監督が戦術を変えないといけないときに、それに対応できる選手。ラームはまさにその象徴的な存在です。サイドバックでも、守備的MFでも、一つの前のインサイドハーフでもプレーできます。現代サッカーでは1試合における選手の消耗度が激しくなっているので、試合の中でポジションを変えられる選手の存在というのは監督にとって大きいでしょうね」

―ユース年代の現状はどう見ていますか?
「ユース年代においても、速いプレーを目指すという部分はあると思いますし、昔と比べると、さまざまな情報が増え、個々の戦術理解度も深まっていると思います。ただ、何が一番大事なのかということにもっと目を向ける必要があります。速さだけを追求してもダメで、しっかりとした技術があってこそ、スピードも生きます。そこは大事にしてもらいたいですね。パスサッカーやポゼッションばかりが注目されがちですが、サッカーで最も大事なのはゴールを奪うことです。相手DFの裏に抜けるような味方FWのいい動きがあったとき、40m、50m先へ正確にボールを出せる能力があるDFがいるなら、それを生かすべきだと思います。そこを見ずに、ポゼッションを大切にするあまり、近くの選手にパスを出していたら、ゴールの可能性は低くなります。まず大事なのはゴールを目指すパスと動き出しで、それができないときにポゼッションになる。そこは育成年代の選手に忘れないでほしいですね」

―今年はユース年代の日本代表がAFC U-19選手権、AFC U-16選手権で敗退し、世界大会への出場を逃しました。
「ユーティリティー、ポリバレント、マルチロール……さまざまな言葉がありますが、スペシャルなものを持ったマルチロールな選手を育成していくべきだと思います。平均的にうまい選手が集まるのではなく、FWであればゴールを奪う、中盤であれば相手からボールを奪う、DFであればゴール前の1対1でやられないといったスペシャルな能力を磨く必要がありますし、そういったものを持った選手でなければ、世界で戦ったときに結果につながらないのかなと思います」

―選手を支えるギアとしてスパイクは年々進化していますが、選手にとってスパイクとはどんな存在でしょうか?
「自分のパフォーマンスを最大限に引き出してくれるものだと思いますし、例えば色であったりデザイン面で言えば、自分自身をどう見せるか、自分の思いを表現するツールでもあると思います。機能面で言えば、現役時代はずっと『プレデター』を履いていましたが、アッパーに付いているラバーによってキックの飛距離が変わったり、回転をかけやすくなったり、そういった効果を感じることもありましたね」

―スパイクで一番こだわっていた部分はどんなところでしょうか?
「安定感、ホールド感ですね。DFである限り、足下の安定感が欲しいと思ってずっとやっていました」

―アディダスが開発した『マイコーチ スマートボール』はボールスピードや飛行軌道、スピン量なども測定できる最新テクノロジーです。
「これはすごいと思います。現役中にこのボールがあったら、練習で使っていたと思いますよ。すごくうらやましいなと思いますね。現役時代、全体練習のあとにロングボールを蹴る自主トレもやっていましたが、自分の思っている軌道ではないときに、こういうものでチェックできると助かりますよね。『インパクトがここだから、こういう軌道になったのか』とか、『こういう回転がかかっているから、こういう体の使い方をしないとな』とか、もちろん自分なりにチェックポイントはありましたが、これを使うことでより見えてくる部分があると思います」

―データフットボールという意味では、ワールドカップで優勝したドイツ代表はさまざまなデータを駆使していたという話も聞きます。
「ドイツ代表のデータの使い方はすごかったと聞きますね。全体ミーティングで使うだけでなく、選手個々にマッチアップする対戦相手のデータなどを与えていたそうです。そこから自分の気になるところをピックアップして、自分の好きな時間、自由な時間にパッと分析、研究できるというのは個人的には好きですね。今までとは違うアプローチをしているチームが結果を出したというのはおもしろいと思います」

―宮本さんが現役のころも当然、相手を分析して対策を練っていたと思いますが、それとも違うのでしょうか。
「違うと思いますね。もちろん映像を見て、相手の特徴などは頭に入れていましたが、その選手がどちらのサイドに出ていくことが多いのかなど、データとして傾向が分かれば対応も変わってきます。相手チームのボールの動かし方を知ることができれば、ライン設定を変更することもあると思います。もちろん、データがすべてではありません。走行距離だけでなく、その『走り』の中身も大事ですし、データを見て、それを分析し、評価できないといけません。指導者やメディアの方々も含め、そういう目を養っていく必要があると思います」

―今の中高生にはどんなことを伝えたいですか?
「データやいろいろなギアを使って自分のパフォーマンスを上げることは大事ですが、試合の中には勝負のポイントであったり、練習の中にもここががんばりどころというポイントがあります。そこを自分なりに見極めて、乗り越えていくタフさがないと、上のレベルにはたどり着けないと思います。サッカーの中にあるポイント、分岐点を見極められる選手になってほしいですね」

―宮本さんがプロになる前に意識していたのはどんなことでしたか?
「自分は4バックの真ん中の選手だったので、どうすれば相手の攻撃を止められるかということを考えていましたし、どうすれば効果的なボールを前線に供給できるか、キックの部分へのこだわりもありました。こういう現象が起きたときに、なぜうまくいったのか。なぜ、このパスをミスしたのか。ここのポジションにいたからここへ蹴ることができたんだなとか。そういうことは普段から考えるタイプだったと思います」

―教えられるだけでなく、自分で考えることが大事ということですね。
「ユースの選手、ジュニアユースの選手には、自分で考えるという作業をおろそかにしているところがあると感じています。自分なりに考えて、工夫して、ということに是非トライしてほしいですね。何でも与えられるのを待つのではなく、何でも聞きに行くのではなく、自分で見て、学んで、盗んで、自分のものにしていくということを大切にしてほしいです」

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