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[特別インタビュー]進化する万能戦士、柏MF秋野「ボランチで勝負したい」

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 U-12から柏レイソル一筋で育ってきた生え抜きだ。12年にトップチームに昇格したMF秋野央樹は昨季、Jデビューを果たし、今季は出場数をさらに増やした。クラブからの期待も大きいレフティーは本職のボランチだけでなくCBをこなし、U-21代表では左SBでもプレーした。さまざまなポジションを経験することでプレーの幅を広げるユーティリティープレーヤーが柏でのレギュラー奪取、そして来年3月に始まるリオデジャネイロ五輪予選に向けて意気込みを語った。

――今季は自己最多となるリーグ戦7試合に出場しました。自身にとっては、どのようなシーズンを過ごせたと思いますか。
「自分のプレーの幅が広がったシーズンだったと思います。いろいろなポジションでプレーできたのはものすごく良い経験になりましたし、U-21代表やJ3を含めると、去年と比べても明らかに公式戦での出場数が増えました。そういう部分を考えると良い1年でしたし、今後、もっともっと結果を残せる選手になれれば、『14年が良い年だったから』と言える年になったと思います」

――ボランチが本職ながらも柏では3バックの左、アジア大会を戦ったU-21代表では左SBでプレーしました。ボランチのときとは意識することも違うと思います。
「ボランチで出場したときは、守備時に相手のボランチをケアすることが多くなります。相手選手は前を向きたがるので、その瞬間にボールを奪うことを意識していましたが、3バックの左で出場すれば、相手FWがボールを受けるときは後ろ向きでもらうことが多いので、前を向かせないことを第一に考えていました。今季は3バックの左での出場が多かったので、後ろからのプレスは勉強になりましたね」

――攻撃面での違いはいかがでしょう。
「攻撃のときはボランチだと360度からプレッシャーを受けますが、3バックの左だと後ろからプレッシャーを掛けられることは少なく、左SBの位置ではタッチラインがあるので180度からしかプレッシャーを受けません。プレッシャーを受けにくいのでビルドアップしやすいし、CBだとパスコースが何カ所もあるので、自分の持ち味が出しやすかったですね」

――持ち味というと左足のキックですね。
「大げさに言うと、相手の背後に素早くパスを出せばすぐにGKとの1対1の状況を作れるし、自分のパス一つで試合の流れを変えられます。一番良い状況にいるチームメイトを自分で選択できるので、プレーしていてものすごく楽しいですね。3バックは4バックと違ってウイングバックが前にいるのでパスコースが多いし、相手SBは僕にプレッシャーを掛けるべきか、ウイングバックにプレッシャーをかけるべきか迷うことが多いので、意外と自由にビルドアップできるんです。ただ正直に言うと、もっとプレッシャーを掛けてほしかったというのがありました(笑)。プレッシャーをガンガン掛けられる難しい状況でプレーした方が、新たな発見があると思うし、自分の成長につながると信じています」

――向上心の強さを感じますが、もっと伸ばさなければいけないと感じた部分はありますか。
「『もっとプレッシャーを掛けてほしかった』と言いましたが、もちろん相手に寄せられて自由を奪われる場面もありました。僕のプレースタイル的に相手との接触はなるべく避けたいので、もっと良いポジションを取ってボールを受けないといけません。そういう部分まで突き詰めないと、より良いパスを送れないと思います。それと、今までより試合に出られたことで、試合に出ないと磨けない部分があると痛感しました」

――具体的にどういう部分でしょうか。
「ユースの頃は誰がどこに動いて、ここでボールを受けたらあの選手はここにいるだろうというのは感覚的に分かっていましたが、現状で僕はあまり試合に出られていないので、チームメイトがどこにいるかが感覚だけでは、まだ分からない部分があります。もちろん練習で一緒にプレーしていますが、公式戦はまったく別物なので。試合に出るためにも、ポジショニングやファーストタッチを向上させないといけませんし、試合中にタニくん(MF大谷秀和)とよく話をするのですが、タニくんはすごく考えてプレーしているので、そういう部分をもっと吸収していかないといけないと思っています」

――守備面で手応えを感じた部分はありますか。
「レイソルは3バックですが、守備時には5バックになるので、自分がかわされてもセンターにカバーしてくれる選手がいます。レイソルではボールが出たら『前につぶしに行け』と常に言われるくらいなので、思い切り良くプレーできました。以前の僕は相手からボールを奪う回数は、そんなに多い方ではありませんでしたが、おかげでインターセプトする回数はものすごく増えました。体をぶつけてボールを奪うというのが、少しずつ体に染みついてきたと思っています。また守備面ではありませんが、JリーグU-22選抜の一員としてJ3リーグで実戦を経験して、サッカーのための体力や試合勘を保つことができたのは良い経験になりました」

――ボランチ、CB、左SBと複数のポジションでプレーできるユーティリティーな能力は、出場機会を増やすことにつながりそうですね。
「もし、自分が監督だったら、こういう選手を1人はチームに置いておきたいと思いますよ(笑)。だから、複数ポジションでプレーできることは、自分ならではの武器だと思っています」

――9月にはアジア大会を戦うU-21代表に選出されました。なかなか出場機会を得られませんでしたが、当時の心境はいかがでしたか。
「短期決戦なので、そこで1人でも輪を乱すような選手がいたら、そのチームは絶対に優勝できないと思っていました。だから、試合に出られないときに自分に何ができるかを考え、そう考えた結果、練習から100パーセントでやって、いつでも試合に出られる準備をしていました。だから、グループリーグ第3戦のネパール戦でアクシデント(前半43分にDF山中亮輔が負傷)で出場機会が巡ってきたときも、試合にすんなり入れました」

――グループリーグ第2戦では、今年1月のAFC U-22選手権準々決勝で敗れたイラクに黒星を喫しました(●1-3)。苦手意識もでてきそうですが。
「手倉森(誠)監督になって、一番最初に負けたのもイラクですし、自分は参加していませんでしたが、12年のAFC U-19選手権準々決勝でもイラクに負けていました。だからチームとして、絶対に勝ちたかったですけど、ああいう結果になってしまって…。ただ、ものすごく悔しかったですし、残念な気持ちが強かったですが、苦手意識は皆も持っていないと思います。僕は1月のU-22選手権も今回のアジア大会もイラク戦に出場できなかったので、次イラクと対戦して自分が試合に出たときは、『絶対に勝つ』という気持ちでいます」

――準々決勝の韓国戦(●0-1。ベスト8で敗退)では完全アウェーでの試合となりました。あまり経験することのない舞台を経験することで、成長を感じた部分はありますか。
「あんなに大勢の観客の中でプレーすることはあまりなかったのですが、そこでいつも通り、平常心でプレーできたのはすごく大きな経験になりました。相手は僕たちのようにU-21代表ではなく、U-23代表でオーバーエイジも使ってきましたし、パク・チュホ選手はマインツでバリバリ試合に出ているような選手です。結果的に敗れてしまいましたが、そういう選手と同じピッチでプレーできたのは自分にとっても財産になります」

――韓国戦ではまずは守備から入るという、チームとして割り切った中で、PKによる1点で敗れました。個人として、何が足りなかったと思いますか。
「まずは、相手の勢いにのまれた印象がありますね。そこで1本、日本がゴールを決めていれば、また違った試合展開になったと思いますし、逆にもっと早く失点していたら相手があそこまで前への圧力を掛けてこなかったかも知れません。0-0のまま試合が進む中で、僕たちはロングボールをはね返し、相手にヘディングで負けてセカンドボールを拾われてシュートまで持ち込まれる展開が続きました。チームメイトと話し合い、流れを変える修正力が足りなかったとは思います。ただ、フィジカルに勝る韓国が相手でも空中戦である程度は勝てたし、背後を取られることもほとんどなかったので守備の部分では手応えを感じた部分もありました」

――来年の3月には五輪予選も始まります。
「前回のロンドン五輪でベスト4に入ったことで、僕たちはメダル獲得を期待されています。そのためにも予選から油断せずに一戦一戦を戦い、必ず五輪に出場しないといけません。チームとしてメダルを目指すことは当然ですが、個人としても自分の価値を上げる、世界中にこういう選手がいるんだと知ってもらえるチャンスだと思っているので、絶対に出場したいですね」

――代表に呼ばれるためには、クラブでの活躍は不可欠だと思います。来季のクラブでの目標を教えて下さい。
「来年はシーズンを通してフルで試合に出るというのが個人的な目標で、チームとしては優勝争いに絡まなければいけないと思っています。ポジションですか? やっぱり自分の特長が一番生きるのはボランチだと思っているので、そこで勝負していきたいという思いはあります。ただ、もし違うポジションでも試合に出る準備はできているので、与えられたポジションで自分の特長を出してチームに貢献していきたいです」

――スパイクはずっとティエンポ履いてるということですが、最後にティエンポの履き心地を教えてください。
「ものすごい軽いスパイクだったり、この部分で蹴ったらカーブしやすいスパイクとか、いろいろなスパイクがありますが、このティエンポに関してはそういうところがないと思うので、普通なところが一番いいところだと感じています。ただ、どんなボールでも、どこの場所に当たっても、自分が『ここに置きたい』と思っているところにピタッとボールが置けるスパイクですね。そういう部分はすごく良いなと思います。デザイン的にも僕は黒のスパイクがあまり似合わないと思っているので、白が基調で裏が黄色なので目立つし、なおかつ青も入っていてオシャレですよね。ただ、スパイクで目立つよりもプレーで目立ちたいので、自分のプレーで目立てるように頑張ります」

(取材・文 折戸岳彦)

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